第4話「ストアシステムはパソコンPOSで構築せよ!!」
1996/10 雑誌ストアシステム連載
前回はポイントカードの話を中心にお話しましたが、いかにお店を活性化するよい方法であっても、それを構築するシステムが、馬鹿高くて採算が取れないようでは、システムを導入する意味がありません。
パソコンPOSは、システムをできるだけ安く構築するための材料であり、お店を活性化するためのヒントであります。
パソコンPOSの採算を具体化するためにいくつかのお店の例をお話したいと思います。
システムでお客の流れが変わる
システムでお店が監視する
システムで商品が飽和化する
システムが個別商品を引き立たせる
システムで商品のサイクルを発見する
リアル処理の可能なパソコンPOS
POSと連動した在庫管理
パソコンPOSでの粗利管理
パソコンPOSは欲張りなPOS。しかし実現は可能
システムでお客の流れが変わる(仮説・ある競合薬局のお話)
これはよく私がお会いした人にポイントカードを薦めるための、あくまでも架空のお話です。
ある町で、道一本はさんで坪数、売り上げ規模のほとんど変わらない競合する薬局のA店とB店とがあったとします。A店はとB店はお互いライバル関係にあり常に競合していたとします。
A店では某メーカーのドリンク剤、リポビタン**10本パックを1000円で、B店では10本パックに1本サービスして1100円と、ほとんど値段もサービスも現在は変わりません。
しかしある日、A店がポイントカードが取り扱えるパソコンPOSシステムを導入しました。月々3万円前後のリース費用(5年)がかかり、今までのレジスターに比べると少し高価になりましたが、お客に対するサービスは格段にアップしました。方やB店は今までのレジを変わらず使用し、お客が商品を購入する毎にスタンプカードにスタンプを押しています。
A店がパソコンPOSシステムを導入した日から、A店とB店のお客に対するサービスの形が変化しはじめます。A店では1100円のリポビタン**が売れるとその5%がポイントとして加算され、再来店の時にお金と同様に値引きとして使われます。方やB店は同じリポビタン**が売れると今まで通りのスタンプカード(20個スタンプが押されると500円の値引きされたりするもの)に500円毎スタンプがペタペタと押されます。
しばらくの間は何も競争がなかったように両店の営業が続きます。表面上は何ら今までに変わりなく、A店とB店は価格競争をしているわけではありません。一年後にはA店とB店のどちらが活況でしょうか?
私がこの話をして、「あなたはどちらの店に商品を買いに行きますか?」とたずねるとほとんどの方がA店と答えます。それはなぜでしょうか?ほとんどの方々が「やはりすぐに使えるポイントが魅力だね。」といいます。今のお客様は、ポイントの概念にも定着し、スタンプが20個押されるのを待つよりも次回または希望時に値引かれることを望むからです。
その結果1年後にはB店のお客がA店に流れ、A店は顧客の囲い込みに成功したことになります。
ポイントカードの恐ろしさは、次回から使用できるために、表面上見た目の値引きが発生せず、ライバル店は知らないうちに差がつけられていることです。
ここでいえる重要なことはシステムの導入によってお客の流れを変えることができる、ということがいえると思います。
この話はあくまでも架空の話でしかありません。なぜ薬局を例に取ったかといいますと、薬局は全国津々浦々に存在し、今まで再販制度に守られ価格競争も少なく、その上お店の件数も多い業種です。ですから自由化の流れになったならばすぐにでも競争に巻き込まれやすい業種でもあるわけです。しかしながら再販等で差別が付けにくい商品に関しては、内部的にいろいろな顧客サービス(スタンプサービス等)を行っている店も多くあります。POPなども多く見られ、工夫をよくしているお店が多いからです。
しかしこの関係は単に薬局だけのケースではおさまりません。前回ご紹介したように早くからポイントカードを始めた東京のヨドバシカメラと、ポイントの取り組みに遅れたサクラヤの関係にそのまま当てはめることができます。また、東京の新宿ではデーパート戦争が始まろうとしており、すでにポイントカードの導入(7%ポイント)を始めた高島屋とまだポイントカードを導入していないその他のデパートの1年後の関係に必ず現れてくると私は考えています。
システムでお店が監視する(ある洋食レストランのお話)
あるレストランのチェーン店では、オーダリングPOSシステムの導入を検討していました。フロアと厨房とを無線で結び注文をスムーズに流していくシステムは魅力的なのですが、費用的な面でいますぐに導入しようというの機運がなかなか社内に起きませんでした。
しかしある事件がきっかけで十数店のお店にいっきにシステムの導入がなされました。ある事件というのは、お店を任されていた店長が売り上げをごまかしていた管理上の問題でした。その社員はお店の店長で、本社からもアルバイトからも信頼されてた人物だったため不正の発覚もなかなかできませんでした。
その店長が不正を働きはじめたきっかけは単純です。このお店では、ラストオーダーを過ぎると、お客様の各テーブルを店長が回って清算をしていくという方法をとっていました。ある日いつものように店長が清算を行い、レジ閉めを行います。しかしレジを閉め本社に売り上げを連絡した後で、未処理のお金と伝票が出てきました。お金を受け取るトレーとトレーの間に伝票とお金が挟まっていたのです。そのためにレジに入金をすることができませんでした。
別に悪意があって行ったことではなく、たまたま見落として入金しなかっただけのことです。その日はどう処理していいのか解らず、机の中に伝票とお金を閉まって帰宅します。店長は気にはかけていたのですが次の日も次の日も何ら本社から連絡はありません。本社からしてもレジに入金がなかったわけですからチェックできる体制にはなかったわけです。
数日後店長はそのお金をポケットに閉まってしまいます。そしてレジに入力がないと本社が何らチェックできないことに気づきます。結局この日から店長の不正が始まりました。
この方法の最大の問題点は、注文をもらった段階では伝票を起こすのに、レジに対する入金はお客様に食事を出した後一番最後に行っていたということです。そのため一度起こした伝票でも、お金をもらった後で伝票を破棄することによってお金を懐に入れることができます。
この問題もシステムを導入することによっていとも簡単に防ぐことができました。オーダリングシステムでは、お客様から注文を取った時点で売り上げがPOSに発生しますので、POSレジに対する入金がなされないという問題も解決されます。またコンピュータ上の伝票の削除も当然のことながら内部に記録を取ることによって、間違えて行ったのか、意図的に行ったのかの区別もつきます。
当然のことながら、毎日の不正の積み重ね金額とシステムの導入費用、便利さを比較したなら、本社がシステムをすぐに導入する気になったのもうなずけます。そしてもし、このようなシステムが最初から導入されていれば優秀な人材も失わなかったかもしれません。
単にオーダーリングシステム一つをとってみても、オーダーを取る手間をシステム化して簡略化するという目的のほかに、人の流れを作るという目的、人が関与する不正をさせないという複数の目的がシステムの導入によってなされることになります。
システムで商品が飽和化する(ABC分析の弊害)
ABC分析というと、流通業の中では、売れ筋と死に筋の商品を分けて最大限の売上げ効率を目指す一つの分析と見られています。しかしABC分析にも大きなほころびが目立ってきました。私はABC分析をすべて否定するつもりはありませんが、ある特定業種を除いて、参考を50パーセント程度に留めるべきだと考えています。ある業種というのはスーパーやコンビニエンスです。スーパーやコンビニエンスにおいてはABC分析は非常に有効に働いています。
スーパーやコンビニエンスでは日用雑貨や食料品を中心に商品の品揃えを行っているため、売れる商品だけをならべることが必修条件になってきます。しかしながらすべてのスーパーやコンビニエンスが売れる商品だけを並べたらどうなるでしょうか?。お店の数が少ない時代であるならばそのお店は大きな売り上げを上げることができます。
しかし今はスーパーやコンビニエンスも過当競争の時代に突入しています。どこの店でもABC分析を行い、どこの店でも同じ商品が並んでいたらどうでしょうか?需要に対して供給が過剰になった商品は、必需商品ではあっても売れ筋商品ではなくなります。
商品の需要にはどんな売れ筋商品であっても限りがあることをもっと周知するべきです。売れる商品だけを並べるお店はマンネリ化し、どこの店とも競合体制になります。供給するお店の数が増えすぎた時点で、今までのABC分析の効果は激減し、売れ筋商品を発見するのではなく、必需品を見つけるためだけの分析に成り下がってしまいます。
どこでも買える商品。そんな商品ばかりが店頭に並んでいたならば消費者はその店で買おうという意欲は薄れてしまいます。事実どこのコンビニエンスのチェーン本部も、できるだけ自分たちのチェーン店の色を出そうとオリジナル商品の開発に力を入れています。しかしオリジナルであればあるほどそのチェーン店の特徴は出ますが、お客がコンビニエンスに求めている必需品から離れていきます。
これはコンビニエンスストアが飽和状態に近づいたことを示しています。コンビニエンスはどの流通業界よりもコンピュータシステムが近代化しています。いかにコンピュータシステムが優れているといっても、マーケットでの情報収集を行い需要の吸収は可能でも、必要以上の需要拡大はコンピュータシステムを使っても望めないのです。
もしあなたのお店がコンビニエンスストアでないのであれば、供給飽満常態にある商品の販売マーケットから早く切り抜けるべきです。私はパソコンPOSを進める立場からも、情報分析はできても、その情報分析によってマーケットを拡大させる方法は生み出せません。競争激化したマーケーットでは、一人勝ちは可能性が薄く、まして勝ち逃げの方法などは説明できません。供給が需要を上回った業界の中では、いくらデータ分析したとしても、人的な要素が強すぎてうまくはいきません。
このように私がABC分析をあまりお勧めしない理由は、誰もがABC分析を行って分析の結果どの店も同じ商品をならべては、売れる商品も分散されて売れなくなる、という結果につきます。そして現代のコンビニエンスは本部で十分にABC分析できる能力を持っていますし、すべてのコンビニのチェーン店がその結果を実行すれば、供給が需要を上回りABC分析がうまく作用しないと言う理由からです。
システムが個別商品を引き立たせる(コンビニエンスでない店作り)
コンビニエンスが飽和状態である一方、私はコンビニエンスではないお店作りをお勧めしたいと考えています。事実最近は、いままでにないような業態のお店が増えてきました。カテゴリーキラーと呼ばれるタイプのお店もその一つです。お店に置く商品を一つのアイテムに絞り、その中で数多くの種類を揃えていくような店舗です。たとえば、輸入雑貨を扱う店、浴槽で使う石鹸などのバス用品だけを扱うお店等、お店で扱う商品そのものにこだわり、特徴を持たせ、一つの業態の中で徹底的に商品を追求するタイプのお店です。
この形態のお店では、売れる商品を探すこと自体が一つの大きな仕事になります。爆発的に売れるヒット商品はあまりありません。商品構成やレイアウトやお客のニーズを見ながら刻刻と変化し、利益を出すまでに2年から3年もかかる店が珍しくありません。その代わり一度コンスタントに売れる商品を見つけるとその商品はどこの店にもない利益の大きなお店の目玉商品になります。
一つのカテゴリーに絞り、そのカテゴリーの中でできるだけ商品をそろえ、他店との差別化を行っていきます。売れる商品だけを幅広く薄くそろえるコンビニエンスの品揃えとは性格が違ってきます。専門店で売れる商品だけをお店において並べたのでは置いたのではお店が成り立たないからです。
そのようなお店の場合、個々の商品一つ一つがお店の主役になります。同じ種類の商品が数多くそろってお店の形態が成り立ちますので、そういったお店では、売れる売れないといったような区別をすること自体が難しくなります。今まで売れないと決めつけられていたような商品でも、そういった商品の種類をちゃんとそろえて、表舞台に出してやることによって売れる商品になるケースも多くあります。またあまり売れない商品であっても、売れる商品を引き立たせる役目を持ちます。
今まで売れる商品ばかりを並べることが中心だったお店の業態の中でも、他店と変化をもたらす為に差別化し、特徴を持ったお店が増えてきています。そのため幅の広い商品をそろえていくことが重要になり、下位の商品の動向も把握していくことが重要になります。
このような店舗において商品の性格の見極めが重要になります。売れている商品を見つけることは、今までのPOSシステムでも比較的簡単に行うことができましたが、売れ筋ベスト商品でなく、必要商品であるものを選別することは意外に難しい作業です。そこで重要になってくるのが、その商品の期間に区切った売上げ状況です。この期間に区切った売上げ状況を把握することによって下位商品であってもお店に必要かどうかが決定します。
システムで商品のサイクルを発見する(個別商品の動向管理)
売れているか売れていないかの判断は、期間設定によって感じ方がかなり違ってきます。商品のサイクルは、物によってさまざまで、毎日売れるもの、毎週売れるもの、毎月売れるもの等、その商品にはそれぞれ特徴を持っています。そのさまざまな特徴を持っているのに、たった一週間で区切って売れる売れないを決めること自体が間違った商品知識を生みます。
1ヶ月に一度コンスタントに売れる商品でも、1週間で区切って売れる売れないを判断されたなら売れない商品として分類されるでしょう。しかしこの商品は決して売れない商品ではありません。ここで重要なのはものの、商品が売れる売れないの判断は、その商品販売サイクルによって決まるということです。販売サイクルが一定の商品はコンスタントに売れることを示しており本当は必要商品です。しかし販売サイクルが不安定であったり、徐々にサイクル長くなっている商品、最終販売日から期間がかなりあいている商品は売れない商品に分類してもかまいません。
この辺はABC分析の考え方とはかなり違います。ABC分析はある一定期間に売れた商品の上位をそろえて下位の商品は切り捨てていく考え方です。しかしこの考え方では下位の商品でもコンスタントに売れる商品を見つけていくことは難しくなります。先ほども少し述べましたように上位の商品は競争の激しい商品ですので利益が薄くなります。しかしながら下位の商品でもコンスタントに売れる商品は競合も少なく、利益の取りやすい商品になります。
この事は売上げを重視した考え方がABC分析の考え方であり、利益を重視した考えかたが個別商品動向管理の考え方になってきます。
個別商品の動向を管理するためには、個々の商品の時系列の仕入れ、販売、在庫の動きを把握していくことが重要になります。
それではシステムでどのようなデータを用意し分析していけばようのでしょうか。
図
上記の画面のように横軸に月と週の時間の流れをとっています。画面の上段には販売された商品の動き回数を表示し、下段に商品の仕入れのようすを表示しています。この画面によって商品の月々の動きが伸びているのか、コンスタントなのか、落ちているのかがわかります。仕入れの数を販売が上回れば在庫が少ないと品切れの状態になるのがわかります。
期間の範囲指定に関しては、商品によって月単位で把握したい商品と、週単位で把握したい商品、日単位で把握したい商品がありますので、それぞれの特徴に応じたデーターの蓄積が必要になります。横軸に日、週、月等の単位で販売実績をとっていけばどのような商品でも商品動向を把握することができるようになります。
リアル処理の可能なパソコンPOS
商品のサイクルや個別動向をつかむ必要性を考えると、データ処理をスピーディーに行う必要性がシステムの中に発生します。
従来型の専用POSでは在庫や利益の計算をさせることをPOS自体でさせることはほとんどできませんでした。POSとは売上げを上げるための機械でありそれ自体でデータ分析を行おうという考えがなく、ストコンやオフコンなどとバッチ処理で連動させて、そちらで集計しようというケースがほとんどでした。
そのため在庫が月一度の棚卸し時にしか確認できなかったり、事務所の中でコンピュータを叩かないと在庫や稼動の様子が見られませんでした。それは前にお話したように今までの専用POSはレジ側から事務所のコンピュータへの一方通行でしかなかったからです。そのようなお店はどんぶり勘定で経営が成り立つはずがありません。
しかし、POSがパソコンに移行されることにより、パソコンPOSは今までの専用POSにはなかった分析能力を持つことが可能になります(むろんプログラムがされての話だが)。パソコンがPOSになることによって、パソコンPOSは情報端末に変身します。そこで十分に可能なのが、POSに連動した在庫管理や、稼動実績の動向管理です。
パソコン自体にデータを蓄積し集計することもできますが、LANなどで何台ものコンピュータを結んだ場合、当然のことながらパソコンはサーバーからデータを吸い上げ情報を画面に表示することもできます。そのため今までに情報を見る機会が少なかった現場レベルでの分析が可能になり、大雑把な分析から細かい単品レベルでの分析が可能になります。
このことはお店が担当者、または個店レベル商品動向を見る目を作りあげていきます。担当者レベルでお店の商品の状態を把握させることは、担当者にも意見を出させ、商品の品揃えに参加させる材料になります。
現場レベルの人間を仕入れに担当させることが良いのか悪いのかはそのお店の判断になりますが、一番商品を知った人間の判断基準が仕入れに反映されることは大きな意味でプラスになります。
このことは、単品の商品動向管理が非常に重要であり、これらのお店にとって商品の品揃えに大きな影響を与えます。現場担当者が商品の動向を知ることによって、利益の大きな商品を早く見つけることもできるし、売れない商品を早く処理をすることもできます。
しかも他では扱っていない商品を扱うために商品の単価を競争する必要もありませんし一つあたりの利益は大きな物になります。
POSと連動した在庫管理
今までのPOSは、商品を売ったとき売れた数、金額を計算することは可能でも、リアルタイムに在庫をPOS内部で管理することはあまり行われませんでした。在庫は通常ストコンなどにデータが送られバッチ処理されることが多く、リアルな状況で在庫を判断することは難しいことでした。
それはなぜかというと、複数台レジが導入された場合、リアルタイムに在庫を管理するのが難しいという理由があります。リアルタイムに商品の在庫を表示するには商品のデータから在庫数を読み込む必要が出てきます。そして販売を行った場合は販売した数だけを差っ引いて在庫の数を書き込む必要があります。常にデータを読んだり書いたりする作業が在庫には存在します。
POSが1台の場合はそのマシンのみでデータを読んだり書いたりするわけですから問題は起きません。しかしながら複数台数のPOSで処理しようとした場合、もし同じ商品に同時にアクセスしたとすれば、在庫を読み込むタイミングと在庫を書き込むタイミングがずれることによって、何も処理していなければ在庫を狂わす結果になります。
たとえば1台目のPOSがその商品の在庫を10個と認識し、その販売処理を終える前に2台目のPOSが同じ商品の在庫を読み込みます。1台目のPOSが販売を終えていないわけですから2台目のPOSも在庫を10個と認識してしまいます。そのシステムが何も処理をしていなければ、1台目のPOSが販売を終了した時点で在庫が9個、2台目のPOSが販売を終了した時点では在庫が8個でなくてはならないのに、2台目のPOSは自分の在庫を10個だと思っていますので在庫が9個になります。これでは在庫が常に狂ってきますので商品のデータに対して何らかの処理をしてやる必要があります。
それは排他制御という処理で、システムが同じデータにアクセスしてきた場合、1台目の処理が終わるまで他のシステムがその商品のアクセスができないように制限をかけ、1台目の処理が終わってからはじめて処理ができるようにする処理です。しかしながらこの処理はプログラムレベルで非常に面倒な処理であまりPOSに使われることはありませんでした。しかしパソコンの世界では、排他制御を行うことは常に当たり前の世界で今後パソコンPOSを行う上でこの処理ができるかどうかがその機能の格差になってくると考えます。
今までのPOSでは在庫をリアルタイムに管理しないことが当たり前で、在庫管理する場合はバッチによる処理が当たり前でした。この考え方は従来型のPOSを開発してきたプログラマーにとっては当たり前のことであり安易な方法でもあります。しかしながら複雑なプログラムが容易なパソコンでPOSを行う限り排他制御によるリアルタイムな在庫管理は行うべき処理であると私は考えます。
パソコンPOSでの粗利管理
POSシステムでの粗利の管理も今までの考え方にはあまりありません。しかしパソコンPOSで構築する限り粗利を算出することは可能な処理になります。
まず粗利を出すためには、その商品の在庫の原価や平均の単価を出す必要があります。在庫に関しては先ほどパソコンPOSでうまく処理してやることが可能であるとの考え方を示しましたが、初期の在庫数、在庫金額を起こしす為には、単に直接在庫金額や数を入力するのではなく、仕入れの作業によってを起こす必要があります。
今までの考え方ですとPOSで仕入れを起こすという考え方はほとんどありません。今までの通常はバックヤードのオフコンやストコンによって仕入れは仕入れで起こし、POSとのバッチ処理によって処理する方法が一般的です。しかしながらパソコンPOSの場合は、POSとしての使用方法からパソコンとしての使用方法に業務を拡大し、パソコンとして仕入れを起こすことも可能になってきます。
パソコンとして仕入れの操作を起こし、在庫金額、在庫数のデータをディスクの中に保管し、販売ではPOSとしてディスクの中から在庫を減らしていく。すべての処理がリアルタイムに可能であれば、この考え方の中に在庫金額の計算式を盛り込んで、販売と同時に売れた商品の粗利計算をすることが可能になってきます。
その計算のもとである在庫金額を評価する計算方法には税務上いくつかの種類があります。パソコンPOSで可能な評価方法としては最終仕入原価法や総平均法、移動平均法などの評価方法です。最終単価法で粗利を計算する場合は、販売金額から最終仕入金額を差っ引くだけで粗利が導き出せますので安易に粗利が計算できます。しかし総平均法の場合はその商品の仕入金額の合計をシステムの中に持たせる必要がありますし、移動平均法の場合は常に変動する在庫金額をシステムの中に持っておく必要があります。そして販売金額からその在庫金額を差っ引いて粗利を導き出すことになります。
在庫金額の計算が非常に難しいのであって、在庫金額の導きさえできれば粗利計算の方法はそれほど難しい問題ではありません。そのための仕組みとしてリアルタイムに処理する為の排他制御や仕入の管理が非常に重要になるのです。
ここからコラム
パソコンPOSは欲張りなPOS。しかし実現は可能
計4回によって「ストアシステムはPC―POSで構築せよ」を連載してきましたが、読者の方々はどのように感じているでしょうか?
今までのPOSの世界から見るとかなり突出したような考え方に思うかもしれません。しかしながらパソコンの可能性を考えると決して無理な技術ではありません。パソコンでは在庫管理も顧客管理も仕入管理も可能です。それに販売というPOS機能を追加しただけのシステムがパソコンPOSシステムなのです。
私どもは2年前にパソコンPOSセンターを池袋に開設し、いろいろな方々とパソコンPOSの可能性について論争をしてきました。パソコンPOSの方向についてはどのメーカーの方々もソフトハウスの方々も今後かなりの勢いで成長するという見方で一致しています。このストアシステムが発刊されたのもその一年後のことでした。
その間パソコンがすごい勢いで値下がりを始め性能も格段に進歩しました。Windows95が発売されて、マイクロソフトもOLE協議会という流通業専門の協議団体を作ったり、パソコンのCPUの性能も3ヶ月毎に性能がアップし、メモリーの価格が毎日のように値下がりしてきました。またインターネットというような情報の通信手段がまたたく間に現れ、流通業などで提唱するJ手順やH手順といったような流通専用の通信方法は特殊な環境の中で取り残されてしまっています。今や流通だとか金融だとかで特殊な基準や環境を作る時代は終わり、パソコンそのものが標準な環境を構築していきます。
パソコンPOSセンターの運用自体もかなり変化が見られました。最初は流通業の方々に秋葉原で売っているようなパソコンの形をしたPOSシステムを紹介するショールームとしてオープンしましたが、途中95年にはPOSメーカーのPC―POS化(メーカーはオープンPOSと読んでいる)によって従来型のPOSの形をしたPC-POSシステムも扱うようになりました。
また最初のターゲットにしたお客様はお店のオーナーだったのが、いざオープンすると、こられるお客様はパソコン系やオフコン系のディーラー、コンサルタントの方々が多かったのも驚きでした。そのようなディーラーがショールームに訪れるようになった理由は、ユーザーからPC―POSに近いシステムの相談受けているが、資料を探したのだがなかなかほしい資料が集まらないためでした。それほどまでにパソコンPOSに対する日本国内での情報の不足していたのです。
そのため私どもが営業もそこそこに努力したことはPC―POSのソフトウェアを作成しているソフトハウスとの交流やPOS周辺機器を扱っているハードメーカー、POSメーカーとの情報交換や資料作成です。その甲斐あってか現在60社のソフトハウスと海外を含む20数社のハードメーカーと情報交換が常にできる立場にあります。
それらのソフトハウスの動きを見ても確実に今までのPOSシステムの作りとは違う管理機能を含んだPC-POSシステムが各社から発表されようとしています。それらのシステムはただ単に売上げを集計する為だけではなく、ポイント管理機能も、顧客管理機能も、在庫管理機能も、粗利管理機能も持っていますので、今回ご紹介したような機能追加は既存のシステムで可能なのです。
外部環境がすでに流通業という環境の中だけで留まらず、新しい概念が竹の子のように生まれ、竹のようにいっきに成長する時代です。その最先端をなすものがパソコンだと考えています。これらの新しいシステムとうまく共存していくことが、今後の店舗展開の大きな原動力になっていくとともに、パソコンを一つの道具としてうまく活用いただければお店にとっても新しい展開が必ず開けるものと確信しています。
前回はポイントカードの話を中心にお話しましたが、いかにお店を活性化するよい方法であっても、それを構築するシステムが、馬鹿高くて採算が取れないようでは、システムを導入する意味がありません。
パソコンPOSは、システムをできるだけ安く構築するための材料であり、お店を活性化するためのヒントであります。
パソコンPOSの採算を具体化するためにいくつかのお店の例をお話したいと思います。
システムでお客の流れが変わる
システムでお店が監視する
システムで商品が飽和化する
システムが個別商品を引き立たせる
システムで商品のサイクルを発見する
リアル処理の可能なパソコンPOS
POSと連動した在庫管理
パソコンPOSでの粗利管理
パソコンPOSは欲張りなPOS。しかし実現は可能
システムでお客の流れが変わる(仮説・ある競合薬局のお話)
これはよく私がお会いした人にポイントカードを薦めるための、あくまでも架空のお話です。
ある町で、道一本はさんで坪数、売り上げ規模のほとんど変わらない競合する薬局のA店とB店とがあったとします。A店はとB店はお互いライバル関係にあり常に競合していたとします。
A店では某メーカーのドリンク剤、リポビタン**10本パックを1000円で、B店では10本パックに1本サービスして1100円と、ほとんど値段もサービスも現在は変わりません。
しかしある日、A店がポイントカードが取り扱えるパソコンPOSシステムを導入しました。月々3万円前後のリース費用(5年)がかかり、今までのレジスターに比べると少し高価になりましたが、お客に対するサービスは格段にアップしました。方やB店は今までのレジを変わらず使用し、お客が商品を購入する毎にスタンプカードにスタンプを押しています。
A店がパソコンPOSシステムを導入した日から、A店とB店のお客に対するサービスの形が変化しはじめます。A店では1100円のリポビタン**が売れるとその5%がポイントとして加算され、再来店の時にお金と同様に値引きとして使われます。方やB店は同じリポビタン**が売れると今まで通りのスタンプカード(20個スタンプが押されると500円の値引きされたりするもの)に500円毎スタンプがペタペタと押されます。
しばらくの間は何も競争がなかったように両店の営業が続きます。表面上は何ら今までに変わりなく、A店とB店は価格競争をしているわけではありません。一年後にはA店とB店のどちらが活況でしょうか?
私がこの話をして、「あなたはどちらの店に商品を買いに行きますか?」とたずねるとほとんどの方がA店と答えます。それはなぜでしょうか?ほとんどの方々が「やはりすぐに使えるポイントが魅力だね。」といいます。今のお客様は、ポイントの概念にも定着し、スタンプが20個押されるのを待つよりも次回または希望時に値引かれることを望むからです。
その結果1年後にはB店のお客がA店に流れ、A店は顧客の囲い込みに成功したことになります。
ポイントカードの恐ろしさは、次回から使用できるために、表面上見た目の値引きが発生せず、ライバル店は知らないうちに差がつけられていることです。
ここでいえる重要なことはシステムの導入によってお客の流れを変えることができる、ということがいえると思います。
この話はあくまでも架空の話でしかありません。なぜ薬局を例に取ったかといいますと、薬局は全国津々浦々に存在し、今まで再販制度に守られ価格競争も少なく、その上お店の件数も多い業種です。ですから自由化の流れになったならばすぐにでも競争に巻き込まれやすい業種でもあるわけです。しかしながら再販等で差別が付けにくい商品に関しては、内部的にいろいろな顧客サービス(スタンプサービス等)を行っている店も多くあります。POPなども多く見られ、工夫をよくしているお店が多いからです。
しかしこの関係は単に薬局だけのケースではおさまりません。前回ご紹介したように早くからポイントカードを始めた東京のヨドバシカメラと、ポイントの取り組みに遅れたサクラヤの関係にそのまま当てはめることができます。また、東京の新宿ではデーパート戦争が始まろうとしており、すでにポイントカードの導入(7%ポイント)を始めた高島屋とまだポイントカードを導入していないその他のデパートの1年後の関係に必ず現れてくると私は考えています。
システムでお店が監視する(ある洋食レストランのお話)
あるレストランのチェーン店では、オーダリングPOSシステムの導入を検討していました。フロアと厨房とを無線で結び注文をスムーズに流していくシステムは魅力的なのですが、費用的な面でいますぐに導入しようというの機運がなかなか社内に起きませんでした。
しかしある事件がきっかけで十数店のお店にいっきにシステムの導入がなされました。ある事件というのは、お店を任されていた店長が売り上げをごまかしていた管理上の問題でした。その社員はお店の店長で、本社からもアルバイトからも信頼されてた人物だったため不正の発覚もなかなかできませんでした。
その店長が不正を働きはじめたきっかけは単純です。このお店では、ラストオーダーを過ぎると、お客様の各テーブルを店長が回って清算をしていくという方法をとっていました。ある日いつものように店長が清算を行い、レジ閉めを行います。しかしレジを閉め本社に売り上げを連絡した後で、未処理のお金と伝票が出てきました。お金を受け取るトレーとトレーの間に伝票とお金が挟まっていたのです。そのためにレジに入金をすることができませんでした。
別に悪意があって行ったことではなく、たまたま見落として入金しなかっただけのことです。その日はどう処理していいのか解らず、机の中に伝票とお金を閉まって帰宅します。店長は気にはかけていたのですが次の日も次の日も何ら本社から連絡はありません。本社からしてもレジに入金がなかったわけですからチェックできる体制にはなかったわけです。
数日後店長はそのお金をポケットに閉まってしまいます。そしてレジに入力がないと本社が何らチェックできないことに気づきます。結局この日から店長の不正が始まりました。
この方法の最大の問題点は、注文をもらった段階では伝票を起こすのに、レジに対する入金はお客様に食事を出した後一番最後に行っていたということです。そのため一度起こした伝票でも、お金をもらった後で伝票を破棄することによってお金を懐に入れることができます。
この問題もシステムを導入することによっていとも簡単に防ぐことができました。オーダリングシステムでは、お客様から注文を取った時点で売り上げがPOSに発生しますので、POSレジに対する入金がなされないという問題も解決されます。またコンピュータ上の伝票の削除も当然のことながら内部に記録を取ることによって、間違えて行ったのか、意図的に行ったのかの区別もつきます。
当然のことながら、毎日の不正の積み重ね金額とシステムの導入費用、便利さを比較したなら、本社がシステムをすぐに導入する気になったのもうなずけます。そしてもし、このようなシステムが最初から導入されていれば優秀な人材も失わなかったかもしれません。
単にオーダーリングシステム一つをとってみても、オーダーを取る手間をシステム化して簡略化するという目的のほかに、人の流れを作るという目的、人が関与する不正をさせないという複数の目的がシステムの導入によってなされることになります。
システムで商品が飽和化する(ABC分析の弊害)
ABC分析というと、流通業の中では、売れ筋と死に筋の商品を分けて最大限の売上げ効率を目指す一つの分析と見られています。しかしABC分析にも大きなほころびが目立ってきました。私はABC分析をすべて否定するつもりはありませんが、ある特定業種を除いて、参考を50パーセント程度に留めるべきだと考えています。ある業種というのはスーパーやコンビニエンスです。スーパーやコンビニエンスにおいてはABC分析は非常に有効に働いています。
スーパーやコンビニエンスでは日用雑貨や食料品を中心に商品の品揃えを行っているため、売れる商品だけをならべることが必修条件になってきます。しかしながらすべてのスーパーやコンビニエンスが売れる商品だけを並べたらどうなるでしょうか?。お店の数が少ない時代であるならばそのお店は大きな売り上げを上げることができます。
しかし今はスーパーやコンビニエンスも過当競争の時代に突入しています。どこの店でもABC分析を行い、どこの店でも同じ商品が並んでいたらどうでしょうか?需要に対して供給が過剰になった商品は、必需商品ではあっても売れ筋商品ではなくなります。
商品の需要にはどんな売れ筋商品であっても限りがあることをもっと周知するべきです。売れる商品だけを並べるお店はマンネリ化し、どこの店とも競合体制になります。供給するお店の数が増えすぎた時点で、今までのABC分析の効果は激減し、売れ筋商品を発見するのではなく、必需品を見つけるためだけの分析に成り下がってしまいます。
どこでも買える商品。そんな商品ばかりが店頭に並んでいたならば消費者はその店で買おうという意欲は薄れてしまいます。事実どこのコンビニエンスのチェーン本部も、できるだけ自分たちのチェーン店の色を出そうとオリジナル商品の開発に力を入れています。しかしオリジナルであればあるほどそのチェーン店の特徴は出ますが、お客がコンビニエンスに求めている必需品から離れていきます。
これはコンビニエンスストアが飽和状態に近づいたことを示しています。コンビニエンスはどの流通業界よりもコンピュータシステムが近代化しています。いかにコンピュータシステムが優れているといっても、マーケットでの情報収集を行い需要の吸収は可能でも、必要以上の需要拡大はコンピュータシステムを使っても望めないのです。
もしあなたのお店がコンビニエンスストアでないのであれば、供給飽満常態にある商品の販売マーケットから早く切り抜けるべきです。私はパソコンPOSを進める立場からも、情報分析はできても、その情報分析によってマーケットを拡大させる方法は生み出せません。競争激化したマーケーットでは、一人勝ちは可能性が薄く、まして勝ち逃げの方法などは説明できません。供給が需要を上回った業界の中では、いくらデータ分析したとしても、人的な要素が強すぎてうまくはいきません。
このように私がABC分析をあまりお勧めしない理由は、誰もがABC分析を行って分析の結果どの店も同じ商品をならべては、売れる商品も分散されて売れなくなる、という結果につきます。そして現代のコンビニエンスは本部で十分にABC分析できる能力を持っていますし、すべてのコンビニのチェーン店がその結果を実行すれば、供給が需要を上回りABC分析がうまく作用しないと言う理由からです。
システムが個別商品を引き立たせる(コンビニエンスでない店作り)
コンビニエンスが飽和状態である一方、私はコンビニエンスではないお店作りをお勧めしたいと考えています。事実最近は、いままでにないような業態のお店が増えてきました。カテゴリーキラーと呼ばれるタイプのお店もその一つです。お店に置く商品を一つのアイテムに絞り、その中で数多くの種類を揃えていくような店舗です。たとえば、輸入雑貨を扱う店、浴槽で使う石鹸などのバス用品だけを扱うお店等、お店で扱う商品そのものにこだわり、特徴を持たせ、一つの業態の中で徹底的に商品を追求するタイプのお店です。
この形態のお店では、売れる商品を探すこと自体が一つの大きな仕事になります。爆発的に売れるヒット商品はあまりありません。商品構成やレイアウトやお客のニーズを見ながら刻刻と変化し、利益を出すまでに2年から3年もかかる店が珍しくありません。その代わり一度コンスタントに売れる商品を見つけるとその商品はどこの店にもない利益の大きなお店の目玉商品になります。
一つのカテゴリーに絞り、そのカテゴリーの中でできるだけ商品をそろえ、他店との差別化を行っていきます。売れる商品だけを幅広く薄くそろえるコンビニエンスの品揃えとは性格が違ってきます。専門店で売れる商品だけをお店において並べたのでは置いたのではお店が成り立たないからです。
そのようなお店の場合、個々の商品一つ一つがお店の主役になります。同じ種類の商品が数多くそろってお店の形態が成り立ちますので、そういったお店では、売れる売れないといったような区別をすること自体が難しくなります。今まで売れないと決めつけられていたような商品でも、そういった商品の種類をちゃんとそろえて、表舞台に出してやることによって売れる商品になるケースも多くあります。またあまり売れない商品であっても、売れる商品を引き立たせる役目を持ちます。
今まで売れる商品ばかりを並べることが中心だったお店の業態の中でも、他店と変化をもたらす為に差別化し、特徴を持ったお店が増えてきています。そのため幅の広い商品をそろえていくことが重要になり、下位の商品の動向も把握していくことが重要になります。
このような店舗において商品の性格の見極めが重要になります。売れている商品を見つけることは、今までのPOSシステムでも比較的簡単に行うことができましたが、売れ筋ベスト商品でなく、必要商品であるものを選別することは意外に難しい作業です。そこで重要になってくるのが、その商品の期間に区切った売上げ状況です。この期間に区切った売上げ状況を把握することによって下位商品であってもお店に必要かどうかが決定します。
システムで商品のサイクルを発見する(個別商品の動向管理)
売れているか売れていないかの判断は、期間設定によって感じ方がかなり違ってきます。商品のサイクルは、物によってさまざまで、毎日売れるもの、毎週売れるもの、毎月売れるもの等、その商品にはそれぞれ特徴を持っています。そのさまざまな特徴を持っているのに、たった一週間で区切って売れる売れないを決めること自体が間違った商品知識を生みます。
1ヶ月に一度コンスタントに売れる商品でも、1週間で区切って売れる売れないを判断されたなら売れない商品として分類されるでしょう。しかしこの商品は決して売れない商品ではありません。ここで重要なのはものの、商品が売れる売れないの判断は、その商品販売サイクルによって決まるということです。販売サイクルが一定の商品はコンスタントに売れることを示しており本当は必要商品です。しかし販売サイクルが不安定であったり、徐々にサイクル長くなっている商品、最終販売日から期間がかなりあいている商品は売れない商品に分類してもかまいません。
この辺はABC分析の考え方とはかなり違います。ABC分析はある一定期間に売れた商品の上位をそろえて下位の商品は切り捨てていく考え方です。しかしこの考え方では下位の商品でもコンスタントに売れる商品を見つけていくことは難しくなります。先ほども少し述べましたように上位の商品は競争の激しい商品ですので利益が薄くなります。しかしながら下位の商品でもコンスタントに売れる商品は競合も少なく、利益の取りやすい商品になります。
この事は売上げを重視した考え方がABC分析の考え方であり、利益を重視した考えかたが個別商品動向管理の考え方になってきます。
個別商品の動向を管理するためには、個々の商品の時系列の仕入れ、販売、在庫の動きを把握していくことが重要になります。
それではシステムでどのようなデータを用意し分析していけばようのでしょうか。
図
上記の画面のように横軸に月と週の時間の流れをとっています。画面の上段には販売された商品の動き回数を表示し、下段に商品の仕入れのようすを表示しています。この画面によって商品の月々の動きが伸びているのか、コンスタントなのか、落ちているのかがわかります。仕入れの数を販売が上回れば在庫が少ないと品切れの状態になるのがわかります。
期間の範囲指定に関しては、商品によって月単位で把握したい商品と、週単位で把握したい商品、日単位で把握したい商品がありますので、それぞれの特徴に応じたデーターの蓄積が必要になります。横軸に日、週、月等の単位で販売実績をとっていけばどのような商品でも商品動向を把握することができるようになります。
リアル処理の可能なパソコンPOS
商品のサイクルや個別動向をつかむ必要性を考えると、データ処理をスピーディーに行う必要性がシステムの中に発生します。
従来型の専用POSでは在庫や利益の計算をさせることをPOS自体でさせることはほとんどできませんでした。POSとは売上げを上げるための機械でありそれ自体でデータ分析を行おうという考えがなく、ストコンやオフコンなどとバッチ処理で連動させて、そちらで集計しようというケースがほとんどでした。
そのため在庫が月一度の棚卸し時にしか確認できなかったり、事務所の中でコンピュータを叩かないと在庫や稼動の様子が見られませんでした。それは前にお話したように今までの専用POSはレジ側から事務所のコンピュータへの一方通行でしかなかったからです。そのようなお店はどんぶり勘定で経営が成り立つはずがありません。
しかし、POSがパソコンに移行されることにより、パソコンPOSは今までの専用POSにはなかった分析能力を持つことが可能になります(むろんプログラムがされての話だが)。パソコンがPOSになることによって、パソコンPOSは情報端末に変身します。そこで十分に可能なのが、POSに連動した在庫管理や、稼動実績の動向管理です。
パソコン自体にデータを蓄積し集計することもできますが、LANなどで何台ものコンピュータを結んだ場合、当然のことながらパソコンはサーバーからデータを吸い上げ情報を画面に表示することもできます。そのため今までに情報を見る機会が少なかった現場レベルでの分析が可能になり、大雑把な分析から細かい単品レベルでの分析が可能になります。
このことはお店が担当者、または個店レベル商品動向を見る目を作りあげていきます。担当者レベルでお店の商品の状態を把握させることは、担当者にも意見を出させ、商品の品揃えに参加させる材料になります。
現場レベルの人間を仕入れに担当させることが良いのか悪いのかはそのお店の判断になりますが、一番商品を知った人間の判断基準が仕入れに反映されることは大きな意味でプラスになります。
このことは、単品の商品動向管理が非常に重要であり、これらのお店にとって商品の品揃えに大きな影響を与えます。現場担当者が商品の動向を知ることによって、利益の大きな商品を早く見つけることもできるし、売れない商品を早く処理をすることもできます。
しかも他では扱っていない商品を扱うために商品の単価を競争する必要もありませんし一つあたりの利益は大きな物になります。
POSと連動した在庫管理
今までのPOSは、商品を売ったとき売れた数、金額を計算することは可能でも、リアルタイムに在庫をPOS内部で管理することはあまり行われませんでした。在庫は通常ストコンなどにデータが送られバッチ処理されることが多く、リアルな状況で在庫を判断することは難しいことでした。
それはなぜかというと、複数台レジが導入された場合、リアルタイムに在庫を管理するのが難しいという理由があります。リアルタイムに商品の在庫を表示するには商品のデータから在庫数を読み込む必要が出てきます。そして販売を行った場合は販売した数だけを差っ引いて在庫の数を書き込む必要があります。常にデータを読んだり書いたりする作業が在庫には存在します。
POSが1台の場合はそのマシンのみでデータを読んだり書いたりするわけですから問題は起きません。しかしながら複数台数のPOSで処理しようとした場合、もし同じ商品に同時にアクセスしたとすれば、在庫を読み込むタイミングと在庫を書き込むタイミングがずれることによって、何も処理していなければ在庫を狂わす結果になります。
たとえば1台目のPOSがその商品の在庫を10個と認識し、その販売処理を終える前に2台目のPOSが同じ商品の在庫を読み込みます。1台目のPOSが販売を終えていないわけですから2台目のPOSも在庫を10個と認識してしまいます。そのシステムが何も処理をしていなければ、1台目のPOSが販売を終了した時点で在庫が9個、2台目のPOSが販売を終了した時点では在庫が8個でなくてはならないのに、2台目のPOSは自分の在庫を10個だと思っていますので在庫が9個になります。これでは在庫が常に狂ってきますので商品のデータに対して何らかの処理をしてやる必要があります。
それは排他制御という処理で、システムが同じデータにアクセスしてきた場合、1台目の処理が終わるまで他のシステムがその商品のアクセスができないように制限をかけ、1台目の処理が終わってからはじめて処理ができるようにする処理です。しかしながらこの処理はプログラムレベルで非常に面倒な処理であまりPOSに使われることはありませんでした。しかしパソコンの世界では、排他制御を行うことは常に当たり前の世界で今後パソコンPOSを行う上でこの処理ができるかどうかがその機能の格差になってくると考えます。
今までのPOSでは在庫をリアルタイムに管理しないことが当たり前で、在庫管理する場合はバッチによる処理が当たり前でした。この考え方は従来型のPOSを開発してきたプログラマーにとっては当たり前のことであり安易な方法でもあります。しかしながら複雑なプログラムが容易なパソコンでPOSを行う限り排他制御によるリアルタイムな在庫管理は行うべき処理であると私は考えます。
パソコンPOSでの粗利管理
POSシステムでの粗利の管理も今までの考え方にはあまりありません。しかしパソコンPOSで構築する限り粗利を算出することは可能な処理になります。
まず粗利を出すためには、その商品の在庫の原価や平均の単価を出す必要があります。在庫に関しては先ほどパソコンPOSでうまく処理してやることが可能であるとの考え方を示しましたが、初期の在庫数、在庫金額を起こしす為には、単に直接在庫金額や数を入力するのではなく、仕入れの作業によってを起こす必要があります。
今までの考え方ですとPOSで仕入れを起こすという考え方はほとんどありません。今までの通常はバックヤードのオフコンやストコンによって仕入れは仕入れで起こし、POSとのバッチ処理によって処理する方法が一般的です。しかしながらパソコンPOSの場合は、POSとしての使用方法からパソコンとしての使用方法に業務を拡大し、パソコンとして仕入れを起こすことも可能になってきます。
パソコンとして仕入れの操作を起こし、在庫金額、在庫数のデータをディスクの中に保管し、販売ではPOSとしてディスクの中から在庫を減らしていく。すべての処理がリアルタイムに可能であれば、この考え方の中に在庫金額の計算式を盛り込んで、販売と同時に売れた商品の粗利計算をすることが可能になってきます。
その計算のもとである在庫金額を評価する計算方法には税務上いくつかの種類があります。パソコンPOSで可能な評価方法としては最終仕入原価法や総平均法、移動平均法などの評価方法です。最終単価法で粗利を計算する場合は、販売金額から最終仕入金額を差っ引くだけで粗利が導き出せますので安易に粗利が計算できます。しかし総平均法の場合はその商品の仕入金額の合計をシステムの中に持たせる必要がありますし、移動平均法の場合は常に変動する在庫金額をシステムの中に持っておく必要があります。そして販売金額からその在庫金額を差っ引いて粗利を導き出すことになります。
在庫金額の計算が非常に難しいのであって、在庫金額の導きさえできれば粗利計算の方法はそれほど難しい問題ではありません。そのための仕組みとしてリアルタイムに処理する為の排他制御や仕入の管理が非常に重要になるのです。
ここからコラム
パソコンPOSは欲張りなPOS。しかし実現は可能
計4回によって「ストアシステムはPC―POSで構築せよ」を連載してきましたが、読者の方々はどのように感じているでしょうか?
今までのPOSの世界から見るとかなり突出したような考え方に思うかもしれません。しかしながらパソコンの可能性を考えると決して無理な技術ではありません。パソコンでは在庫管理も顧客管理も仕入管理も可能です。それに販売というPOS機能を追加しただけのシステムがパソコンPOSシステムなのです。
私どもは2年前にパソコンPOSセンターを池袋に開設し、いろいろな方々とパソコンPOSの可能性について論争をしてきました。パソコンPOSの方向についてはどのメーカーの方々もソフトハウスの方々も今後かなりの勢いで成長するという見方で一致しています。このストアシステムが発刊されたのもその一年後のことでした。
その間パソコンがすごい勢いで値下がりを始め性能も格段に進歩しました。Windows95が発売されて、マイクロソフトもOLE協議会という流通業専門の協議団体を作ったり、パソコンのCPUの性能も3ヶ月毎に性能がアップし、メモリーの価格が毎日のように値下がりしてきました。またインターネットというような情報の通信手段がまたたく間に現れ、流通業などで提唱するJ手順やH手順といったような流通専用の通信方法は特殊な環境の中で取り残されてしまっています。今や流通だとか金融だとかで特殊な基準や環境を作る時代は終わり、パソコンそのものが標準な環境を構築していきます。
パソコンPOSセンターの運用自体もかなり変化が見られました。最初は流通業の方々に秋葉原で売っているようなパソコンの形をしたPOSシステムを紹介するショールームとしてオープンしましたが、途中95年にはPOSメーカーのPC―POS化(メーカーはオープンPOSと読んでいる)によって従来型のPOSの形をしたPC-POSシステムも扱うようになりました。
また最初のターゲットにしたお客様はお店のオーナーだったのが、いざオープンすると、こられるお客様はパソコン系やオフコン系のディーラー、コンサルタントの方々が多かったのも驚きでした。そのようなディーラーがショールームに訪れるようになった理由は、ユーザーからPC―POSに近いシステムの相談受けているが、資料を探したのだがなかなかほしい資料が集まらないためでした。それほどまでにパソコンPOSに対する日本国内での情報の不足していたのです。
そのため私どもが営業もそこそこに努力したことはPC―POSのソフトウェアを作成しているソフトハウスとの交流やPOS周辺機器を扱っているハードメーカー、POSメーカーとの情報交換や資料作成です。その甲斐あってか現在60社のソフトハウスと海外を含む20数社のハードメーカーと情報交換が常にできる立場にあります。
それらのソフトハウスの動きを見ても確実に今までのPOSシステムの作りとは違う管理機能を含んだPC-POSシステムが各社から発表されようとしています。それらのシステムはただ単に売上げを集計する為だけではなく、ポイント管理機能も、顧客管理機能も、在庫管理機能も、粗利管理機能も持っていますので、今回ご紹介したような機能追加は既存のシステムで可能なのです。
外部環境がすでに流通業という環境の中だけで留まらず、新しい概念が竹の子のように生まれ、竹のようにいっきに成長する時代です。その最先端をなすものがパソコンだと考えています。これらの新しいシステムとうまく共存していくことが、今後の店舗展開の大きな原動力になっていくとともに、パソコンを一つの道具としてうまく活用いただければお店にとっても新しい展開が必ず開けるものと確信しています。
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- [1996/10/01 01:24]
- (1996年)ストアシステムはパソコンPOSで構築せよ!! |
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第3話 「ストアシステムはパソコンPOSで構築せよ!!」
1996/07 雑誌ストアシステム連載
前々回PC―POSの概要。前回目的別のPC―POSの構築をお話しましたが今回は具体的なPC―POSの利用例を考えていきたいと思います。
その前になぜ今PC―POSでないと駄目なのか?。それは現在の流通業のあり方に原点があります。流通業のこの実態を把握することが、PC―POSの利用法を具体的に構築する近道なのです。
流通業の問題点を把握し、その解決をPC―POSに求めることが、PC―POSの有効な利用につながり、個々の店舗の活性化につながると考えます。
価格破壊が流通業を駄目にする
価格破壊の対抗策は情報サービスだ
情報化の中にも2種類ある
戦略的情報化とは?
戦略的情報化の本命(ポイントカード)
ポイントカードのメリット
どうせ値引くならポイントで値引け!
あなたは何枚カードを持ち歩けますか?
ポイントカードは諸刃の剣、持ち歩かせることが一番難しい
ポイントカード活用例(ヨドバシカメラ)
価格破壊が流通業を駄目にする
今現在日本の流通業は価格破壊と呼ばれる価格競争に夢中である。マスコミも安い価格の競争はこぞって取り上げ、価格の競争をしなければこの社会を生き残れないような錯覚が蔓延しています。
本当に価格競争がお店の生き残りにはベストな方法でしょうか?自由競争社会の中で、価格競争は他店との差別化において重要な要素であり、勝ち残るためには必要な手段でもあります。しかし現在のやり方で価格破壊を続けると、最後には誰も勝ち残れない状況が目前に迫ってきているのではないでしょうか。
価格破壊の上での倒産も増えてきています。大型店の進出によって地域の価格体系が崩れ、顧客が大型店に集中する時代になってきています。しかし,そうだからといって大型店と格段に体力の違う中小のお店や商店街が、価格の競争だけで対抗するのは無謀ともいえます。
今の価格破壊の現状は、集客の宣伝効果だけをねらって、原価を無視し、赤を切ってでも商品を安く見せかけるチラシや宣伝が多く見うけられます。以前ならばそれでも別な商品をお客様が購入することによって赤を切った商品の穴埋めをすることができました。しかし、現在の消費者はそのチラシ商品だけをねらって購入するお客様が非常に増え、大型店でさえチラシを入れると赤字になってしまうお店が増えているのです。
あるホームセンターの現場担当者は、年初の会合でこのようにいっていました。「今年度の売上目標を前年度の230億円から255億円に増やすシュミレーションを描いたところ、前年度は黒字だったものが、今年度は赤字に転落するという結果が出てしまった」と。
これを聞いたときに、私はいささかショックでした。大型店の場合、集客効果によってチラシの赤字は十分に吸収できるものと考えていたためです。現在の価格破壊は大型店でさえ売上を伸ばすことが容易ではなくなっているのが実状です。いや売上を伸ばすことは容易なのですが、それにもとづいて利益を伸ばしていくことが不可能になってきたのです。
担当者いわく「お客かチラシ商品だけを目的に来店するため、チラシをまけばまくほど赤字になってしまう」と。チラシを入れると当然のことながら商品は売れていきますが、利益という実態の伴わない売上だけが上がっていく結果になります。
このように大型店ですら価格破壊の現状に行き詰まっているのに中小のお店が追随したらどうなるでしょうか。大型店は体力がまだあるので多少の赤字には我慢できても、中小のお店や商店街が同じ事を行ったら先はすぐにみえてきます。
このように行き詰まりっている流通業に必要なものは、より一層の価格の競争ではないと私は考えます。確かにお客様は価格が安い方がいいに決まっていますが、ただ安いだけでは、お店の体力も虫食まれていきます。また安さにサービスがついていかなければ、かえって宣伝効果はマイナスです。それこそ安い商品だけを買いあさり、お店には何のメリットもないお客様の団体がお店を虫食む結果になります。
価格破壊の対抗策は情報サービスだ
このままでは行き詰まりの見えている流通業において、価格破壊に対する中小のお店、商店街のカンフル剤はお客様に対する情報サービスの強化です。
先ほども言いましたが、たしかに商品の値段が安いにこした事はありません。しかしながらお客様が本当に安さだけを求めているのでしょうか?
物の安さだけを求める時代はそろそろ終わりだと私は信じています。それはなぜかといいますと、物の安さだけを求めた場合、お店自身がやっていけない時代に突入しているからです。
物の安さだけで競争できなくなったならば、何で競争していけばいいのでしょうか。それはお客様に対する情報サービスです。それも金銭の安さだけを前面に押し出すのではなく、お客様に対する便利性、情報を武器にした付加価値が、大きな宣伝、集客、売上のアップ、売上の維持に結びつくのです。
「サービスなんて古くからある物だしそんなことはとっくに考えているよ」なんていわれる読者もあるかもしれません。「いらっしゃいませ」を言うことも、心を込めて応対することも最低限度必要なサービスです。しかしながら私が提案したいのは情報を使ったサービスです。
情報を使ったサービスは決して目新しいサービスではありません。流通業の中は、デパートやスーパーが10年ぐらい前からハウスカードを発行しいろいろな形で顧客管理や売上のアップを模索してきました。そしてそれなりの効果を多少なりとも上げてきたようです。
しかしハウスカードを持てるような大手の流通ならともかく、今まで情報の手段を持たなかった中小の流通業の中ではどうでしょうか。中小の流通業の情報化遅れたのは、高価な費用をかけてコンピュータシステムを導入できなかったことが大きな要因です。その情報化が単価の安いパソコンレベルでできれば、中小であっても情報を操作することが十分可能になります。そして情報サービスによって大手並みの情報サービスを始めて試みることができることになります。
情報化の中にも2種類ある
単純に情報化といっても2種類の情報化が存在します。1つは今ある現状を改善するための現状改善型情報化、もう1つは現状を打破するために前向きに取り組む戦略的情報化です。現状改善型情報化は、在庫管理や商品管理が該当し、戦略的報化は顧客管理や情報を武器にした新しい企画が該当します。
前者の在庫管理や商品管理などは今までの流通業の中で何度となく論じられそれを管理することは当たり前のことだと考えます。しかしシステムが導入されていないためか、それができていないお店も多く、そのお店は早くそこの管理を始める必要があると考えます。パソコンのコストが下がったことによって、情報化すること自体のコストとその情報化がもたらす効果(コスト軽減)を比較しても十分採算の取れる状況になってきたためです。
お店の情報化は、すでにコンピュータが導入された大手流通やコンビニエンスだけのものではありません。中小のお店であっても、パソコンを導入することによって、商品管理や顧客管理、売り上げ分析など十分に情報化は可能です。(ただし物流の問題においては情報化だけでは解決しない点もあるが)
しかし今回は紙面の関係もあり前者の現状改善型情報化を取り上げるのではなく、後者の戦略的情報化に的を絞ってお話を進めていきたいと思います。というのも前者の管理や分析は私が話すまでもなく今まで十分に論じられて来ていると考えるからです。
戦略的情報化とは?
戦略的情報化については、流通の中ではありませんが今まで何度か話題になったことがあります。
つい2~3年前でしょうか?テレビのコマーシャルで企業の情報化をコンピュータで築きあげるSIS( Strategic Information System 戦略的情報システム)なる言葉が持てはやされた時期があります。これらの宣伝はコンピュータ会社のもくろみ通りうまくいったのでしょうか?。わたしが思うにコンピュータシステムを買わせることだけが先行して、うまくいかなかったように思います。その理由は、社内のOA化と戦略的情報システムの区別が明確でなかったためだと考えます。社内のOA化にあたるのが現状改善型情報化であり、SISが戦略的情報化にあたります。
この2つを分けずに情報化を進めようとしてもうまくいくはずがありません。混在して進めると通常OA化が中心になってしまい、戦略化は後回しにされてしまいます。というのもOA化は目の前に迫った切実な内容が多いため、要望も強く、具体案がある場合があるので構築することも非常に楽ですが、戦略的情報化は今から開拓する業務のため何から始めていいのかなかなか具体的な概念が浮いてこないためです。
また戦略的情報システムを進めさせるためのソフトのパッケージ化が進まなかったこともSISの失敗の大きな要因に上げられます。出来合いのパッケージがあればシステムの構築も進めやすいのですが、具体的な概念が浮いてこないのにシステムを構築することは不可能に近い仕事です。
戦略的情報システムにたどり着く前に、コンピュータを導入し単なるその企業のオフィスのOA化になってしまったのも十分に理解できます。単なるOA化ですから社内の合理化だけに留まり、一番の目的としていた営業拡大に結びつかなかったわけです。
戦略的な情報システムと言いながら、何千万もの費用をかけて結果社内のOA化を行っていたのでは笑い話にしかなりません。
戦略的情報化を行なうには、まず第一に会社内のOA化を目的とするのではなく、売上を伸ばすための具体的な営業戦略項目(顧客管理、嗜好管理等)を押さえること。第二にできるだけ既存システムのよいところを学び、そのシステムのパッケージ化をはかり、システムの費用の軽減化を図る必要があります。
流通業においても戦略的情報化を行なうには同様のことがいえます。それは第一に現在の店舗の現状改善を目的とするのではなく、売上を上げることを目的にした情報化戦略であること、そして第二にそれを行なうために既存の流通の良い点を学び、できるだけシステムにお金をかけないで構築することを十分に認識しておかないと中途半端なSA(ストアオートメーション)化にしかなり得なくなってしまいます。
戦略的情報化の本命(ポイントカード)
一般のお客様を相手にしている流通業では情報化するものが固定化され流れが一定化してきます。流通業では、お店が商品を仕入れ、仕入れた商品をお客様が買う、という一定の流れが発生します。対象になるものは商品とお客と売上です。これだけ対象が絞られてきますと戦略がずっとつかみやすくなります。この構図はどの流通業と呼ばれる店舗においてもあまり変化がないと思われます。
商品とお客と売上しかない構造のためこの3つを考えていけば何らかのシステムを構築することができます。売上を伸ばすため積極的に顧客に対してアピールを行ない固定客の確保や再来店を促す戦略的情報システムの構築です。
その中心に今後なり得そうなのがポイントカードシステムの考え方です。
ポイントカードを使ったシステムは今まで私が話してきた戦略的情報化の考え方にぴったり当てはまります。
ポイントカードシステムが今まであまり進められなかったのはコンピュータシステムの構築に費用がかかりすぎたからです。しかしPC―POSであれば費用的にもシステム的にも、構築することは難しくありません。そのため今後ますますポイントカードを使ったお店が増えてくるものと思われます。
PC―POSが身近になったために可能になったポイントカードシステム。ポイントカードは今後の戦略的情報化には欠くことのできない中心の情報サービスだと私は考えます。
少しこのポイントカードの概念を説明するとともにPC―POSを使った攻めの方法をお話したいと思います。
ポイントカードのメリット
ポイントカードの内容や効能を説明しはじめると1冊の本ができてしまうほど長くなりますので重要なポイントだけを押さえてお話したいと思います。
ポイントカードを使った営業戦略のメリットは大きく分けて4つあります。
使用対象が原則現金
ポイントは次回使用
1ポイント=1円
顧客管理
たったこれだけの特徴ですが、スタンプカードやサービスカードに比べかなり大きな戦略が秘められています。
使用対象が原則現金
ある大手の量販店がポイントカードシステムを始めた当初、利用条件は現金のみでクレジットカードでの使用は認めていませんでした。クレジットカードで購入された場合数%の手数料がカード会社から引かれてしまいます。
これではクレジットカードで購入された場合、お店から見るとポイントとクレジット手数料の2つの金額を販売金額から差っ引かれることになってしまいます。そのため使用を現金のみに絞ることによってクレジット手数料を考えることなしにポイントのみを考えながら販売ができることになります。
これは逆に考えると、お店がある一定のクレジット手数料をクレジット会社に払うと仮定して、その同等金額を現金購入のお客様に還元したならば、お客様へのサービスになります。しかも現金ですのでカード会社の決算を待つ必要がなく、お店側から見ればカードで購入しても現金で購入しても入ってくる金額は一緒です。
よく「現金だといくらでクレジットだと5%増しですよ」という店があります。これはあきらかにクレジットカード会社との契約違反であり、クレジット会社とトラブルを起こします。しかしその場で値引きをおこすことのないポイントであれば意味合いは変わってきます。
なんていう事をしなくても、最初からクレジット価格で料金を表示しておいても、現金で買えば常に数%値引く事をお客様に定着させることによって商品価格を下げずに安く見せることができます。この方法だ特に価格の競争をしたくないものややりにくいものの価格を下げる必要がないために、地域的な価格の問題を引き起こさずにすむ事ができます。
注)
最近ではクレジットカードを使用してもポイントを付けるお店も出始めている。しかしこれはお店とクレジット会社の力関係で微妙に変わってくるものと思われる。クレジットカードを頻繁に使われるような業態でポイントを現金のみに絞ると現金での比率が異常に上がり、クレジットの比率が落ちてしまう。クレジット金額の大きい大手の量販店だからこそクレジット会社と手数料の交渉の余地ができるのであって中小のお店でもできることだとは思われない。
事実クレジットカードの原則は、現金のお客とクレジットカードのお客の差を付けないことなのに、現金、クレジット両方でポイントカードが使える店ではポイント還元の%が異なり(たとえばあるお店では現金5%、クレジット3%)ポイントの次回値引きが定着化した現状では、原則に反している。
これは何等かの形でクレジットカードもポイントに参加できるように検討された妥協の産物だと考えられる。
ポイントの使用は次回から
ポイントカードの第二のメリットは、購入したその場で次回使えることです。次回とした事によっていろいろなメリットが発生します。
第1に再来店が望める事です。ポイントカードを使用したお客さんはそのカードに値引きできるポイントが残っているわけですから、わざわざ別の店に行くよりもまずポイントのついているお店に行く傾向が強くなります。
第2に見た目の値引きを避けることができる事です。仮にライバル店が近くに存在した場合、値段を安く表示をすることによって価格競争を生む結果となります。しかしポイントで処理する場合、見た目にはポイント分料金を高め、または定価で表示し競争心をあおる事もありません。しかしお客様から見た場合、ポイント分実質の金額の値下げ、さらに前回のポイントが貯まってた場合は、前回のポイントの分だけ多く引ける計算になりますのでお客様としてはポイントの使える店の方が安く感じます(これはあくまでも感じるだけです)。これは常にライバル店と売値を合わせておけば実質的にそのポイントの比率分だけ安いイメージを定着させることができます。
第3のメリットは、クレジットカードを多く使う店に発生します。先ほど少し述べたように、現金とクレジットで売値を差別することはクレジット会社との契約違反です。しかしポイントカードを使用しても今回の商品に限っては現金もクレジットも一緒の値段でその場で差を付けていません。ポイントを次回でなくその場で値引いた場合、現金とクレジットカードの二重価格が存在することになりますが、次回であれば買う商品と値引く商品の関連性はありませんので問題もなくなります。
第4のメリット、これはあまり大きなものになり得ないと考えますが即座に使わせないことによってユーザーでのポイント蓄積が発生します。これは一部プリペイカード的な発想ではありますが、ユーザーがポイントを消化しない限りお店の金銭的な負担が軽減します。またポイントカードの最終使用日から何年と期限を切ることによって古いポイントを消去してしまうことも可能です。
しかしながら、ポイントを使わせない考え方よりもポイントをどんどん消化して売上を上げてもらう方がお店にとってはいいのが事実です。
ポイントは 1 点 1 円
どうせポイントカードを作るのならば1ポイント=1円にすべきです。よく今までのスタンプサービスで1000円で1スタンプなんていうお店がありますが、これはスタンプカードだから1000円で1個なのであって、コンピュータを使ったポイントカードシステムであれば1円1ポイントでも十分に処理ができます。
また1ポイント=1円ならば計算も非常にわかりやすくなります。これはお客様から見ると非常にわかりやすく150ポイント=150円と簡単に換算できるため値引きの計算も非常にわかりやすくなります。お客様が頭の中で前回のポイントを値引きの金額に換算してもらえれば、他店との競争でも前回の使用ポイントを含んで値引きを見せることも可能です。
平行して顧客管理
第4のメリットは、ポイントカードを作ることによって顧客を管理することができるということです。
お店を経営されている方で、お店に来ているお客様の住所や年齢等を知りたいと思ったことはないでしょうか?これができれば何等かの形で宣伝をうったり分析したり、チラシやDMをうったりすることができると考えているお店の経営者の方は多くいらっしゃいます。しかし普通に考えて何もしない状態で顧客登録をすることは不可能です。何らかの理由がない限りお客様が申し込み用紙に記入することはほとんどありませんでした。
しかしポイントカードならお客様は喜んで申し込みを行ないます。しかもお店に来られるたびにポイントカードを掲示しますので、お店としても会員の利用状況や嗜好をデータとして蓄積しやすくなります。
どうせ値引くならポイントで値引け!
このようにポイントを使った販売は多くの点でお店にメリットをもたらします。ポイントカードを使用することによって、ポイントとして起こした金額はすべてもとのお店に還元されることになります。
仮にこれを単なる値引きとして起こしてしまったならばどうなるでしょうか?その金額はお客様の財布の中にプールされ、飲食なりその他の店の購買になってしまうでしょう。しかしながらポイントに置き換えることですべてが自店に返ってくる値引きに変身します。
お客様から見ればポイントは単なる値引きとして映り、お店側から見ると単なる値引きではなくなります。
当然のことながら、ポイント金額は自店に戻って売上になりますし、それが次回に発生するのです。
ポイントのカードの使用は次回に発生することが、また大きなメリットなのです。ポイントの使用とともに次の大きな購買が発生します。中にはポイント金額だけの使用になってしまうかもしれませんが、単に値引いて他の店で購入されたことを考えれば大きな違いが発生します。
お客様はポイントの発生をサービスとして受け取りますし、それなりのイメージアップにもつながります。
このようにポイントカードはあらゆる面で戦略的な営業体制に結び付けていくことができます。
コラム
あなたは何枚カードを持ち歩けますか?
(重要なカードの選択)
ポイントカードが売上げを伸ばす可能性があるのはよくわかったと思いますが、すぐに飛び付く前に幾つかの重要な項目について再度考え直してください。
まずポイントカードといってすぐに思い付くのがプラスチックカードなのですが、あなたは今現在ポケット又はバックの中に何枚のカードを持ち歩いていますか?自宅においてあるカードは除いてです。
私はバックをあまり持ち歩かないせいもありますが、せいぜい持ち歩いても7、8枚のカードを持ち歩くのがやっとです。これ以上のカードを持ち歩くとポケットの中の財布やカード入れが分厚くて重たくなります。
最初はうすいと思っていたプラスチックカードですが5枚6枚と枚数が増えると結構厚みが増して重たいものです。では、その中でその数枚に厳選されるカードはどのようなカードでしょうか。
これも私の独断で申し訳ありませんが、私ならばまず免許証、クレジットカード、銀行のキャッシュカード(郵便局も)、定期券、テレホンカード、あと本当に頻繁に使用するお店のカードです。これだけで私の財布(厳密には定期入)の中はいっぱいで、これ以上のカードはほとんどが家においてあるのが現状です。
そうすると、あなたのお店が出したポイントカードは先にあげた「本当に頻繁に使用するお店のカード」に入れてもらえるでしょうか?
重要なカードの選択
カードがあるから買う?カードがないから買わない?
せっかく発行したポイントカードなのに、そのお客様が持ち歩かなかったらどうなるのでしょうか?
少し前にも説明したように「ポイントカードがあるからまたそのお店にいって買物をするんだ」というお客は非常に多くいます。
しかし、よく考えてみてください。もしそのポイントカードを持ち歩いていなければどうなるでしょうか?
これも私の考え方で申訳ないのですが、大手カメラディスカウントのカードはいつも持ち歩いていません。それは先にあげた物理的な要因で持ち歩けないのです。
たまに近くの大手カメラディスカウントで買物をすることがあるのですが、ポイントカードなしで買物をすると損をした気分になります。
数百円の小さなものであれば買ってしまうのですが、数千円以上になると買物をためらったり、やめてしまうこともあります。
またやめてしまうと、その時にはとても欲しかったものが、いつのまにか不要になったりします。余談にはなりますがポイントカードを持ち歩かないことは衝動買いの予防効果をもたらします。
ポイントカードは諸刃の剣、持ち歩かせることが一番難しい
このことからもわかるように、ポイントカードを持ち歩かせることによってお店は売り上げを伸ばすこともできますし、ポイントカードを持たせないことによってお店から遠ざけることもできる諸刃の剣だということがよくわかると思います。
持ち歩かせるにはどうしたらいいでしょうか?
まずプレミアムを高くしてそれなりの価値を高めてあげることも一つの方法だと思います。
しかし、プレミアムを高くすることはお店の利益効率を圧迫しますので、それができるお店とそれができないお店もあるでしょう。
そのため、お金もかからず基本的なことは、見栄をはって見栄えのいいプラスティックカードを選ぶよりも、できるだけ薄いポイントカードを検討することがいいでしょう。
このことは単純な話ではありますが基本です。この事を考えないでポイントカードを作成するならば、ポイントカードの効果は半減します。
ポイントカードを持ち歩かない人がいること。ポイントカードを持たないで購入すると損をした気分になること。ポイントカードを持たないと購入を一時的にでも止めてしまうこと。この事を人間の心理として覚えておいてください。
ポイントカード活用例(ヨドバシカメラ)
ポイントカードの現状としてヨドバシカメラのシステム担当者にお話をお聞きした。私が考える限りヨドバシカメラがコンピュータを使ってポイントカードのシステム化をした最初のお店ではないかと思われる。なお、ヨドバシカメラのシステムは第一回の流通システム大賞にて奨励賞を受賞している。
お話を聞く限り世の中の環境の変化と、業務の拡大、お客様に対するサービスの拡大を考えた結果必然的に生まれたのがポイントカードのシステムであったという。
ポイントカードを始めたのが今から5年前のこと。最初の発想はある定価の決められた商品を売り始めたとき、直接的に安く売ることができないため、どの店でもやっているスタンプカードに変わるスマートなものはないかと考えたのが一つのきっかけであったという。ポイントを一つの景品的な扱いで考えたそうだ。
また、その当時、お客様と売り場での値引き交渉するのが当たり前の時代であり、書かれている値札はあってなきも。商品に対する価格表示方法が、あるものは特価商品、あるものは値引き交渉をというような二重価格が散乱していた。価格のオープン化が進すむ以前の話である。
しかし、だんだん直接値段表示を見て安いなと感じて買われるお客様が増えてくると同時に、値引きするしないは買い方の技術が必要で、お客様に対しても不公平ではあるだろうかという疑問が店内でも発生し、できるだけ金額を統一しようという方向性が生まれた。
また値引きに労する時間のロスも考えられたという。たしかに値引きに要する時間の賃金を、値引きと比較するとさほど違いのないことが見えてきて、そのロス金額を値引き結び付けることの方がサービスとしても言いのではないかという考えが生まれたという。
しかし単なる値引きを起こしたのでは、お客様に差し上げた値引き分は他のお店で使われるケースも多く自店にお金が還元することがないし、値引きをするのであれば値下げを行なった方がいいのではないかと
そして値引きに見返るものは何かサービスとしてないだろうかと考えて生まれたのが現在のポイントカードの考え方だったと。ポイントカードは、単なる値引きを避けて、値引き以上のサービスがあり,お店にもお客にもメリットがあり、お客様が定着するサービスとして考えた。
それができる環境がヨドバシカメラにはあった。ヨドバシカメラ特有の状況もそこにはあり、新宿近辺にいくつもの店舗があり、商品管理につてはリアルタイムにオンラインで監視するネットワーク環境がすでに出来上がっていた。
現在650万人の会員を抱え、実質400万人の稼動会員を抱える。そしてリピート会員を含め、現金で購入されるお客の9割の方がヨドバシのポイントカードを掲示している。気持ちの上でお客様に拘束力を持つのではなく、物理的なカードによって拘束力を持てる効果は莫大なものがあり、当初考えたお客様の囲い込みは現実に効果を上げている。
発行を始めた当初、値引き分として発行したポイントの原資が60%ぐらいお預かりとして残った。単なる値引きであればその60%はお店の売上にはならず、外部に持ち出されていたことになる。値引いた金額がすべて自店の売上になることはすごいことだ。しかし今ではお客様もポイントカードの使い方に馴れ、貯まったポイントをどんどん使っているという。しかしその方がお店全体の売り上げアップにつながり回転が良くなっている。
また、当初の2年は現金のお買い上げの時だけポイントを付けていたのが、ポイントの比率を変えて(現金5%,クレジット3%)今は現金のお客様もクレジットのお客様も使えるようになった。しかし当初現金のみの場合は現金の比率がべらぼうに高くなった。そのために現金の回収効率がよくなった。
しかし今では客層も広がり、現金の会員だけを優遇するわけにもいかずクレジットのお客様のためにもポイントを使えるように改善を行なっている。
ポイントの使用期限は2年で、23ヶ月目になると自動的にハガキを出し継続を呼びかけている。そのうちの半数は継続を行ない、半数は消えていってるという。
また定期的に150万部の情報誌を発行しておりできるだけ双方向での対応を模索している。最近来た人、リピート回数、使用金額の常連さんには常に出している。
ヨドバシカメラでのポイントカード戦略はある程度第1段回を終了し、次の戦略に入ろうとしている。
今後の商品の品揃えをどのようにするか、メーカーの生産計画に対してお客様の購入記録をどのように結び付けるかとか、小売業がお客様を見ながら何を考えて何を求めているのかを考えていけば予測が十分に可能になるであろう。その中で物流等を考えていけば無駄も省け、又それがお客様に還元されるものだと。最初からそこまで考えて作ってきたのではないのだが、お客様の要望を聞いていくうちにそのようになってきたというのが結果論だ。
またポイントカードのシステムを定着させるために、店員の教育も重要になる。必ず「ポイントカードを御持ちですか」と声をかけないとトラブルが発生する。また返品などは、ポイントを使い切ってしまっている場合処理が混乱するという。そのためできるだけマニュアル化を行ないトラブル防止に努めているという。
最後に担当者が言った「POSは,壊れないこと、待たせないこと、従業員をちゃんと拘束すること」この3つが大切だといった言葉が印象に残っている。
前々回PC―POSの概要。前回目的別のPC―POSの構築をお話しましたが今回は具体的なPC―POSの利用例を考えていきたいと思います。
その前になぜ今PC―POSでないと駄目なのか?。それは現在の流通業のあり方に原点があります。流通業のこの実態を把握することが、PC―POSの利用法を具体的に構築する近道なのです。
流通業の問題点を把握し、その解決をPC―POSに求めることが、PC―POSの有効な利用につながり、個々の店舗の活性化につながると考えます。
価格破壊が流通業を駄目にする
価格破壊の対抗策は情報サービスだ
情報化の中にも2種類ある
戦略的情報化とは?
戦略的情報化の本命(ポイントカード)
ポイントカードのメリット
どうせ値引くならポイントで値引け!
あなたは何枚カードを持ち歩けますか?
ポイントカードは諸刃の剣、持ち歩かせることが一番難しい
ポイントカード活用例(ヨドバシカメラ)
価格破壊が流通業を駄目にする
今現在日本の流通業は価格破壊と呼ばれる価格競争に夢中である。マスコミも安い価格の競争はこぞって取り上げ、価格の競争をしなければこの社会を生き残れないような錯覚が蔓延しています。
本当に価格競争がお店の生き残りにはベストな方法でしょうか?自由競争社会の中で、価格競争は他店との差別化において重要な要素であり、勝ち残るためには必要な手段でもあります。しかし現在のやり方で価格破壊を続けると、最後には誰も勝ち残れない状況が目前に迫ってきているのではないでしょうか。
価格破壊の上での倒産も増えてきています。大型店の進出によって地域の価格体系が崩れ、顧客が大型店に集中する時代になってきています。しかし,そうだからといって大型店と格段に体力の違う中小のお店や商店街が、価格の競争だけで対抗するのは無謀ともいえます。
今の価格破壊の現状は、集客の宣伝効果だけをねらって、原価を無視し、赤を切ってでも商品を安く見せかけるチラシや宣伝が多く見うけられます。以前ならばそれでも別な商品をお客様が購入することによって赤を切った商品の穴埋めをすることができました。しかし、現在の消費者はそのチラシ商品だけをねらって購入するお客様が非常に増え、大型店でさえチラシを入れると赤字になってしまうお店が増えているのです。
あるホームセンターの現場担当者は、年初の会合でこのようにいっていました。「今年度の売上目標を前年度の230億円から255億円に増やすシュミレーションを描いたところ、前年度は黒字だったものが、今年度は赤字に転落するという結果が出てしまった」と。
これを聞いたときに、私はいささかショックでした。大型店の場合、集客効果によってチラシの赤字は十分に吸収できるものと考えていたためです。現在の価格破壊は大型店でさえ売上を伸ばすことが容易ではなくなっているのが実状です。いや売上を伸ばすことは容易なのですが、それにもとづいて利益を伸ばしていくことが不可能になってきたのです。
担当者いわく「お客かチラシ商品だけを目的に来店するため、チラシをまけばまくほど赤字になってしまう」と。チラシを入れると当然のことながら商品は売れていきますが、利益という実態の伴わない売上だけが上がっていく結果になります。
このように大型店ですら価格破壊の現状に行き詰まっているのに中小のお店が追随したらどうなるでしょうか。大型店は体力がまだあるので多少の赤字には我慢できても、中小のお店や商店街が同じ事を行ったら先はすぐにみえてきます。
このように行き詰まりっている流通業に必要なものは、より一層の価格の競争ではないと私は考えます。確かにお客様は価格が安い方がいいに決まっていますが、ただ安いだけでは、お店の体力も虫食まれていきます。また安さにサービスがついていかなければ、かえって宣伝効果はマイナスです。それこそ安い商品だけを買いあさり、お店には何のメリットもないお客様の団体がお店を虫食む結果になります。
価格破壊の対抗策は情報サービスだ
このままでは行き詰まりの見えている流通業において、価格破壊に対する中小のお店、商店街のカンフル剤はお客様に対する情報サービスの強化です。
先ほども言いましたが、たしかに商品の値段が安いにこした事はありません。しかしながらお客様が本当に安さだけを求めているのでしょうか?
物の安さだけを求める時代はそろそろ終わりだと私は信じています。それはなぜかといいますと、物の安さだけを求めた場合、お店自身がやっていけない時代に突入しているからです。
物の安さだけで競争できなくなったならば、何で競争していけばいいのでしょうか。それはお客様に対する情報サービスです。それも金銭の安さだけを前面に押し出すのではなく、お客様に対する便利性、情報を武器にした付加価値が、大きな宣伝、集客、売上のアップ、売上の維持に結びつくのです。
「サービスなんて古くからある物だしそんなことはとっくに考えているよ」なんていわれる読者もあるかもしれません。「いらっしゃいませ」を言うことも、心を込めて応対することも最低限度必要なサービスです。しかしながら私が提案したいのは情報を使ったサービスです。
情報を使ったサービスは決して目新しいサービスではありません。流通業の中は、デパートやスーパーが10年ぐらい前からハウスカードを発行しいろいろな形で顧客管理や売上のアップを模索してきました。そしてそれなりの効果を多少なりとも上げてきたようです。
しかしハウスカードを持てるような大手の流通ならともかく、今まで情報の手段を持たなかった中小の流通業の中ではどうでしょうか。中小の流通業の情報化遅れたのは、高価な費用をかけてコンピュータシステムを導入できなかったことが大きな要因です。その情報化が単価の安いパソコンレベルでできれば、中小であっても情報を操作することが十分可能になります。そして情報サービスによって大手並みの情報サービスを始めて試みることができることになります。
情報化の中にも2種類ある
単純に情報化といっても2種類の情報化が存在します。1つは今ある現状を改善するための現状改善型情報化、もう1つは現状を打破するために前向きに取り組む戦略的情報化です。現状改善型情報化は、在庫管理や商品管理が該当し、戦略的報化は顧客管理や情報を武器にした新しい企画が該当します。
前者の在庫管理や商品管理などは今までの流通業の中で何度となく論じられそれを管理することは当たり前のことだと考えます。しかしシステムが導入されていないためか、それができていないお店も多く、そのお店は早くそこの管理を始める必要があると考えます。パソコンのコストが下がったことによって、情報化すること自体のコストとその情報化がもたらす効果(コスト軽減)を比較しても十分採算の取れる状況になってきたためです。
お店の情報化は、すでにコンピュータが導入された大手流通やコンビニエンスだけのものではありません。中小のお店であっても、パソコンを導入することによって、商品管理や顧客管理、売り上げ分析など十分に情報化は可能です。(ただし物流の問題においては情報化だけでは解決しない点もあるが)
しかし今回は紙面の関係もあり前者の現状改善型情報化を取り上げるのではなく、後者の戦略的情報化に的を絞ってお話を進めていきたいと思います。というのも前者の管理や分析は私が話すまでもなく今まで十分に論じられて来ていると考えるからです。
戦略的情報化とは?
戦略的情報化については、流通の中ではありませんが今まで何度か話題になったことがあります。
つい2~3年前でしょうか?テレビのコマーシャルで企業の情報化をコンピュータで築きあげるSIS( Strategic Information System 戦略的情報システム)なる言葉が持てはやされた時期があります。これらの宣伝はコンピュータ会社のもくろみ通りうまくいったのでしょうか?。わたしが思うにコンピュータシステムを買わせることだけが先行して、うまくいかなかったように思います。その理由は、社内のOA化と戦略的情報システムの区別が明確でなかったためだと考えます。社内のOA化にあたるのが現状改善型情報化であり、SISが戦略的情報化にあたります。
この2つを分けずに情報化を進めようとしてもうまくいくはずがありません。混在して進めると通常OA化が中心になってしまい、戦略化は後回しにされてしまいます。というのもOA化は目の前に迫った切実な内容が多いため、要望も強く、具体案がある場合があるので構築することも非常に楽ですが、戦略的情報化は今から開拓する業務のため何から始めていいのかなかなか具体的な概念が浮いてこないためです。
また戦略的情報システムを進めさせるためのソフトのパッケージ化が進まなかったこともSISの失敗の大きな要因に上げられます。出来合いのパッケージがあればシステムの構築も進めやすいのですが、具体的な概念が浮いてこないのにシステムを構築することは不可能に近い仕事です。
戦略的情報システムにたどり着く前に、コンピュータを導入し単なるその企業のオフィスのOA化になってしまったのも十分に理解できます。単なるOA化ですから社内の合理化だけに留まり、一番の目的としていた営業拡大に結びつかなかったわけです。
戦略的な情報システムと言いながら、何千万もの費用をかけて結果社内のOA化を行っていたのでは笑い話にしかなりません。
戦略的情報化を行なうには、まず第一に会社内のOA化を目的とするのではなく、売上を伸ばすための具体的な営業戦略項目(顧客管理、嗜好管理等)を押さえること。第二にできるだけ既存システムのよいところを学び、そのシステムのパッケージ化をはかり、システムの費用の軽減化を図る必要があります。
流通業においても戦略的情報化を行なうには同様のことがいえます。それは第一に現在の店舗の現状改善を目的とするのではなく、売上を上げることを目的にした情報化戦略であること、そして第二にそれを行なうために既存の流通の良い点を学び、できるだけシステムにお金をかけないで構築することを十分に認識しておかないと中途半端なSA(ストアオートメーション)化にしかなり得なくなってしまいます。
戦略的情報化の本命(ポイントカード)
一般のお客様を相手にしている流通業では情報化するものが固定化され流れが一定化してきます。流通業では、お店が商品を仕入れ、仕入れた商品をお客様が買う、という一定の流れが発生します。対象になるものは商品とお客と売上です。これだけ対象が絞られてきますと戦略がずっとつかみやすくなります。この構図はどの流通業と呼ばれる店舗においてもあまり変化がないと思われます。
商品とお客と売上しかない構造のためこの3つを考えていけば何らかのシステムを構築することができます。売上を伸ばすため積極的に顧客に対してアピールを行ない固定客の確保や再来店を促す戦略的情報システムの構築です。
その中心に今後なり得そうなのがポイントカードシステムの考え方です。
ポイントカードを使ったシステムは今まで私が話してきた戦略的情報化の考え方にぴったり当てはまります。
ポイントカードシステムが今まであまり進められなかったのはコンピュータシステムの構築に費用がかかりすぎたからです。しかしPC―POSであれば費用的にもシステム的にも、構築することは難しくありません。そのため今後ますますポイントカードを使ったお店が増えてくるものと思われます。
PC―POSが身近になったために可能になったポイントカードシステム。ポイントカードは今後の戦略的情報化には欠くことのできない中心の情報サービスだと私は考えます。
少しこのポイントカードの概念を説明するとともにPC―POSを使った攻めの方法をお話したいと思います。
ポイントカードのメリット
ポイントカードの内容や効能を説明しはじめると1冊の本ができてしまうほど長くなりますので重要なポイントだけを押さえてお話したいと思います。
ポイントカードを使った営業戦略のメリットは大きく分けて4つあります。
使用対象が原則現金
ポイントは次回使用
1ポイント=1円
顧客管理
たったこれだけの特徴ですが、スタンプカードやサービスカードに比べかなり大きな戦略が秘められています。
使用対象が原則現金
ある大手の量販店がポイントカードシステムを始めた当初、利用条件は現金のみでクレジットカードでの使用は認めていませんでした。クレジットカードで購入された場合数%の手数料がカード会社から引かれてしまいます。
これではクレジットカードで購入された場合、お店から見るとポイントとクレジット手数料の2つの金額を販売金額から差っ引かれることになってしまいます。そのため使用を現金のみに絞ることによってクレジット手数料を考えることなしにポイントのみを考えながら販売ができることになります。
これは逆に考えると、お店がある一定のクレジット手数料をクレジット会社に払うと仮定して、その同等金額を現金購入のお客様に還元したならば、お客様へのサービスになります。しかも現金ですのでカード会社の決算を待つ必要がなく、お店側から見ればカードで購入しても現金で購入しても入ってくる金額は一緒です。
よく「現金だといくらでクレジットだと5%増しですよ」という店があります。これはあきらかにクレジットカード会社との契約違反であり、クレジット会社とトラブルを起こします。しかしその場で値引きをおこすことのないポイントであれば意味合いは変わってきます。
なんていう事をしなくても、最初からクレジット価格で料金を表示しておいても、現金で買えば常に数%値引く事をお客様に定着させることによって商品価格を下げずに安く見せることができます。この方法だ特に価格の競争をしたくないものややりにくいものの価格を下げる必要がないために、地域的な価格の問題を引き起こさずにすむ事ができます。
注)
最近ではクレジットカードを使用してもポイントを付けるお店も出始めている。しかしこれはお店とクレジット会社の力関係で微妙に変わってくるものと思われる。クレジットカードを頻繁に使われるような業態でポイントを現金のみに絞ると現金での比率が異常に上がり、クレジットの比率が落ちてしまう。クレジット金額の大きい大手の量販店だからこそクレジット会社と手数料の交渉の余地ができるのであって中小のお店でもできることだとは思われない。
事実クレジットカードの原則は、現金のお客とクレジットカードのお客の差を付けないことなのに、現金、クレジット両方でポイントカードが使える店ではポイント還元の%が異なり(たとえばあるお店では現金5%、クレジット3%)ポイントの次回値引きが定着化した現状では、原則に反している。
これは何等かの形でクレジットカードもポイントに参加できるように検討された妥協の産物だと考えられる。
ポイントの使用は次回から
ポイントカードの第二のメリットは、購入したその場で次回使えることです。次回とした事によっていろいろなメリットが発生します。
第1に再来店が望める事です。ポイントカードを使用したお客さんはそのカードに値引きできるポイントが残っているわけですから、わざわざ別の店に行くよりもまずポイントのついているお店に行く傾向が強くなります。
第2に見た目の値引きを避けることができる事です。仮にライバル店が近くに存在した場合、値段を安く表示をすることによって価格競争を生む結果となります。しかしポイントで処理する場合、見た目にはポイント分料金を高め、または定価で表示し競争心をあおる事もありません。しかしお客様から見た場合、ポイント分実質の金額の値下げ、さらに前回のポイントが貯まってた場合は、前回のポイントの分だけ多く引ける計算になりますのでお客様としてはポイントの使える店の方が安く感じます(これはあくまでも感じるだけです)。これは常にライバル店と売値を合わせておけば実質的にそのポイントの比率分だけ安いイメージを定着させることができます。
第3のメリットは、クレジットカードを多く使う店に発生します。先ほど少し述べたように、現金とクレジットで売値を差別することはクレジット会社との契約違反です。しかしポイントカードを使用しても今回の商品に限っては現金もクレジットも一緒の値段でその場で差を付けていません。ポイントを次回でなくその場で値引いた場合、現金とクレジットカードの二重価格が存在することになりますが、次回であれば買う商品と値引く商品の関連性はありませんので問題もなくなります。
第4のメリット、これはあまり大きなものになり得ないと考えますが即座に使わせないことによってユーザーでのポイント蓄積が発生します。これは一部プリペイカード的な発想ではありますが、ユーザーがポイントを消化しない限りお店の金銭的な負担が軽減します。またポイントカードの最終使用日から何年と期限を切ることによって古いポイントを消去してしまうことも可能です。
しかしながら、ポイントを使わせない考え方よりもポイントをどんどん消化して売上を上げてもらう方がお店にとってはいいのが事実です。
ポイントは 1 点 1 円
どうせポイントカードを作るのならば1ポイント=1円にすべきです。よく今までのスタンプサービスで1000円で1スタンプなんていうお店がありますが、これはスタンプカードだから1000円で1個なのであって、コンピュータを使ったポイントカードシステムであれば1円1ポイントでも十分に処理ができます。
また1ポイント=1円ならば計算も非常にわかりやすくなります。これはお客様から見ると非常にわかりやすく150ポイント=150円と簡単に換算できるため値引きの計算も非常にわかりやすくなります。お客様が頭の中で前回のポイントを値引きの金額に換算してもらえれば、他店との競争でも前回の使用ポイントを含んで値引きを見せることも可能です。
平行して顧客管理
第4のメリットは、ポイントカードを作ることによって顧客を管理することができるということです。
お店を経営されている方で、お店に来ているお客様の住所や年齢等を知りたいと思ったことはないでしょうか?これができれば何等かの形で宣伝をうったり分析したり、チラシやDMをうったりすることができると考えているお店の経営者の方は多くいらっしゃいます。しかし普通に考えて何もしない状態で顧客登録をすることは不可能です。何らかの理由がない限りお客様が申し込み用紙に記入することはほとんどありませんでした。
しかしポイントカードならお客様は喜んで申し込みを行ないます。しかもお店に来られるたびにポイントカードを掲示しますので、お店としても会員の利用状況や嗜好をデータとして蓄積しやすくなります。
どうせ値引くならポイントで値引け!
このようにポイントを使った販売は多くの点でお店にメリットをもたらします。ポイントカードを使用することによって、ポイントとして起こした金額はすべてもとのお店に還元されることになります。
仮にこれを単なる値引きとして起こしてしまったならばどうなるでしょうか?その金額はお客様の財布の中にプールされ、飲食なりその他の店の購買になってしまうでしょう。しかしながらポイントに置き換えることですべてが自店に返ってくる値引きに変身します。
お客様から見ればポイントは単なる値引きとして映り、お店側から見ると単なる値引きではなくなります。
当然のことながら、ポイント金額は自店に戻って売上になりますし、それが次回に発生するのです。
ポイントのカードの使用は次回に発生することが、また大きなメリットなのです。ポイントの使用とともに次の大きな購買が発生します。中にはポイント金額だけの使用になってしまうかもしれませんが、単に値引いて他の店で購入されたことを考えれば大きな違いが発生します。
お客様はポイントの発生をサービスとして受け取りますし、それなりのイメージアップにもつながります。
このようにポイントカードはあらゆる面で戦略的な営業体制に結び付けていくことができます。
コラム
あなたは何枚カードを持ち歩けますか?
(重要なカードの選択)
ポイントカードが売上げを伸ばす可能性があるのはよくわかったと思いますが、すぐに飛び付く前に幾つかの重要な項目について再度考え直してください。
まずポイントカードといってすぐに思い付くのがプラスチックカードなのですが、あなたは今現在ポケット又はバックの中に何枚のカードを持ち歩いていますか?自宅においてあるカードは除いてです。
私はバックをあまり持ち歩かないせいもありますが、せいぜい持ち歩いても7、8枚のカードを持ち歩くのがやっとです。これ以上のカードを持ち歩くとポケットの中の財布やカード入れが分厚くて重たくなります。
最初はうすいと思っていたプラスチックカードですが5枚6枚と枚数が増えると結構厚みが増して重たいものです。では、その中でその数枚に厳選されるカードはどのようなカードでしょうか。
これも私の独断で申し訳ありませんが、私ならばまず免許証、クレジットカード、銀行のキャッシュカード(郵便局も)、定期券、テレホンカード、あと本当に頻繁に使用するお店のカードです。これだけで私の財布(厳密には定期入)の中はいっぱいで、これ以上のカードはほとんどが家においてあるのが現状です。
そうすると、あなたのお店が出したポイントカードは先にあげた「本当に頻繁に使用するお店のカード」に入れてもらえるでしょうか?
重要なカードの選択
カードがあるから買う?カードがないから買わない?
せっかく発行したポイントカードなのに、そのお客様が持ち歩かなかったらどうなるのでしょうか?
少し前にも説明したように「ポイントカードがあるからまたそのお店にいって買物をするんだ」というお客は非常に多くいます。
しかし、よく考えてみてください。もしそのポイントカードを持ち歩いていなければどうなるでしょうか?
これも私の考え方で申訳ないのですが、大手カメラディスカウントのカードはいつも持ち歩いていません。それは先にあげた物理的な要因で持ち歩けないのです。
たまに近くの大手カメラディスカウントで買物をすることがあるのですが、ポイントカードなしで買物をすると損をした気分になります。
数百円の小さなものであれば買ってしまうのですが、数千円以上になると買物をためらったり、やめてしまうこともあります。
またやめてしまうと、その時にはとても欲しかったものが、いつのまにか不要になったりします。余談にはなりますがポイントカードを持ち歩かないことは衝動買いの予防効果をもたらします。
ポイントカードは諸刃の剣、持ち歩かせることが一番難しい
このことからもわかるように、ポイントカードを持ち歩かせることによってお店は売り上げを伸ばすこともできますし、ポイントカードを持たせないことによってお店から遠ざけることもできる諸刃の剣だということがよくわかると思います。
持ち歩かせるにはどうしたらいいでしょうか?
まずプレミアムを高くしてそれなりの価値を高めてあげることも一つの方法だと思います。
しかし、プレミアムを高くすることはお店の利益効率を圧迫しますので、それができるお店とそれができないお店もあるでしょう。
そのため、お金もかからず基本的なことは、見栄をはって見栄えのいいプラスティックカードを選ぶよりも、できるだけ薄いポイントカードを検討することがいいでしょう。
このことは単純な話ではありますが基本です。この事を考えないでポイントカードを作成するならば、ポイントカードの効果は半減します。
ポイントカードを持ち歩かない人がいること。ポイントカードを持たないで購入すると損をした気分になること。ポイントカードを持たないと購入を一時的にでも止めてしまうこと。この事を人間の心理として覚えておいてください。
ポイントカード活用例(ヨドバシカメラ)
ポイントカードの現状としてヨドバシカメラのシステム担当者にお話をお聞きした。私が考える限りヨドバシカメラがコンピュータを使ってポイントカードのシステム化をした最初のお店ではないかと思われる。なお、ヨドバシカメラのシステムは第一回の流通システム大賞にて奨励賞を受賞している。
お話を聞く限り世の中の環境の変化と、業務の拡大、お客様に対するサービスの拡大を考えた結果必然的に生まれたのがポイントカードのシステムであったという。
ポイントカードを始めたのが今から5年前のこと。最初の発想はある定価の決められた商品を売り始めたとき、直接的に安く売ることができないため、どの店でもやっているスタンプカードに変わるスマートなものはないかと考えたのが一つのきっかけであったという。ポイントを一つの景品的な扱いで考えたそうだ。
また、その当時、お客様と売り場での値引き交渉するのが当たり前の時代であり、書かれている値札はあってなきも。商品に対する価格表示方法が、あるものは特価商品、あるものは値引き交渉をというような二重価格が散乱していた。価格のオープン化が進すむ以前の話である。
しかし、だんだん直接値段表示を見て安いなと感じて買われるお客様が増えてくると同時に、値引きするしないは買い方の技術が必要で、お客様に対しても不公平ではあるだろうかという疑問が店内でも発生し、できるだけ金額を統一しようという方向性が生まれた。
また値引きに労する時間のロスも考えられたという。たしかに値引きに要する時間の賃金を、値引きと比較するとさほど違いのないことが見えてきて、そのロス金額を値引き結び付けることの方がサービスとしても言いのではないかという考えが生まれたという。
しかし単なる値引きを起こしたのでは、お客様に差し上げた値引き分は他のお店で使われるケースも多く自店にお金が還元することがないし、値引きをするのであれば値下げを行なった方がいいのではないかと
そして値引きに見返るものは何かサービスとしてないだろうかと考えて生まれたのが現在のポイントカードの考え方だったと。ポイントカードは、単なる値引きを避けて、値引き以上のサービスがあり,お店にもお客にもメリットがあり、お客様が定着するサービスとして考えた。
それができる環境がヨドバシカメラにはあった。ヨドバシカメラ特有の状況もそこにはあり、新宿近辺にいくつもの店舗があり、商品管理につてはリアルタイムにオンラインで監視するネットワーク環境がすでに出来上がっていた。
現在650万人の会員を抱え、実質400万人の稼動会員を抱える。そしてリピート会員を含め、現金で購入されるお客の9割の方がヨドバシのポイントカードを掲示している。気持ちの上でお客様に拘束力を持つのではなく、物理的なカードによって拘束力を持てる効果は莫大なものがあり、当初考えたお客様の囲い込みは現実に効果を上げている。
発行を始めた当初、値引き分として発行したポイントの原資が60%ぐらいお預かりとして残った。単なる値引きであればその60%はお店の売上にはならず、外部に持ち出されていたことになる。値引いた金額がすべて自店の売上になることはすごいことだ。しかし今ではお客様もポイントカードの使い方に馴れ、貯まったポイントをどんどん使っているという。しかしその方がお店全体の売り上げアップにつながり回転が良くなっている。
また、当初の2年は現金のお買い上げの時だけポイントを付けていたのが、ポイントの比率を変えて(現金5%,クレジット3%)今は現金のお客様もクレジットのお客様も使えるようになった。しかし当初現金のみの場合は現金の比率がべらぼうに高くなった。そのために現金の回収効率がよくなった。
しかし今では客層も広がり、現金の会員だけを優遇するわけにもいかずクレジットのお客様のためにもポイントを使えるように改善を行なっている。
ポイントの使用期限は2年で、23ヶ月目になると自動的にハガキを出し継続を呼びかけている。そのうちの半数は継続を行ない、半数は消えていってるという。
また定期的に150万部の情報誌を発行しておりできるだけ双方向での対応を模索している。最近来た人、リピート回数、使用金額の常連さんには常に出している。
ヨドバシカメラでのポイントカード戦略はある程度第1段回を終了し、次の戦略に入ろうとしている。
今後の商品の品揃えをどのようにするか、メーカーの生産計画に対してお客様の購入記録をどのように結び付けるかとか、小売業がお客様を見ながら何を考えて何を求めているのかを考えていけば予測が十分に可能になるであろう。その中で物流等を考えていけば無駄も省け、又それがお客様に還元されるものだと。最初からそこまで考えて作ってきたのではないのだが、お客様の要望を聞いていくうちにそのようになってきたというのが結果論だ。
またポイントカードのシステムを定着させるために、店員の教育も重要になる。必ず「ポイントカードを御持ちですか」と声をかけないとトラブルが発生する。また返品などは、ポイントを使い切ってしまっている場合処理が混乱するという。そのためできるだけマニュアル化を行ないトラブル防止に努めているという。
最後に担当者が言った「POSは,壊れないこと、待たせないこと、従業員をちゃんと拘束すること」この3つが大切だといった言葉が印象に残っている。

- [1996/07/01 01:22]
- (1996年)ストアシステムはパソコンPOSで構築せよ!! |
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第2話「ストアシステムはパソコンPOSで構築せよ!!」
1996/04 雑誌ストアシステム 連載
前回はPOSがPCーPOSに流れていく大きな理由を述べましたが、今回は具体的にPCーPOSをどのように構築していけばいいのか考えてみたいと思います。
私はPCーPOSは、導入するものではなく構築するものだと考えています。これは決して部品を買ってきて組み立てなさいという意味ではありません。お店には個々にいろいろな業態、やり方があり、POSシステムにもその業態にあわせたシステムの構築が必要だと思っているからです。
ただし今まではそのお店にあわせた独自のシステムを構築しようとすると高いシステム、高額の費用が要求されました。それは専用POSそのものが、最初から一辺倒の固定概念でしかシステム設計されていなかったのと、メーカーが自由に設計できる機種は高級機として認識していたからです。
これではお店を経営している多くの人が経営分析やちょっとした顧客サービスを始めようとすると、メーカーの高級POSを購入するしかなく、それゆえに躊躇したり導入をあきらめざるおえませんでした。
これは背広を作るのによく似ています。POSには、いままでオーダーメイドと既製品の2つの種類しかありませんでした。既製品では最初から与えられたサイズは数えるほどしかなく、ありきたりのものでしかありません。少しでも体型の違う人が背広を作ろうとするとオーダーメイドしかなく、そのオーダーメイドするためには値段の高い生地しか与えていませんでした。
しかしこれだけいろいろな形態のお店が出てくれば既製品の背広やオーダーメイドだけでまかなえるはずがありません。その中間にあたるイージーオーダーの考え方であるPC-POSです
たとえばレストランのPOSは、以前は売上を集計するか、チケットの販売程度にしか使われていなかったものが、現在は本来のPOSとしての目的よりもオーダリングとしての目的の方を重視されています。スーパーではお客をすばやくこなすことを目的とし、コンビニエンスでは対面販売でカウンター処理をおこない、あきらかにスーパーと接客方法が変わってきます。
このように業種によってPOSの使い方も異なってきているのにスーパーもコンビニもレストランもその他の専門店も同じ既製品のPOSを着せられていたのです。POSを売上げを集計することのみの目的として使う今までの考え方ならば許されたものが、多種多様化した店舗に窮屈なお店自身の進歩もさまたげることにもなりかねません。
PCーPOSの場合、業務の目的に合わせて中に組み込むソフトを変えることができますし、設計することもできます。組み込むソフトは、その性格から大きく分けて2つあります。1つは業種別にすでに完成されたアプリケーションソフト。もう1つはその目的に合わせて開発するオーダリングソフトです。
アプリケーションの利用
簡易データーベースの利用
通常の選択
PCーPOSの向いてる業種
PCーPOSで出来ること
現場担当者が求めるシステム
PC-POSの原点にもどって
アプリケーションの利用
専用POSがPCーPOSに移り変わり、そのためにできてきたのがアプリケーションパッケージという出来上がったイージーオーダーソフトです。
このソフトの今までの既製品と違う点は、POSとは独立したプログラムであるため、そのプログラムの組みかたによって仕様にかなりの余裕を持たせることが可能になります。
いくつかの業種向けに合わされたアプリケーションはすでに用意されており、その店舗の目的に合わせてアプリケーションを選択します。プログラムを一から作り上げる手間暇を考えれば、この手順は数十倍も効率がよくスピーディーに導入できます。またこのアプリケーションはすでに開発されているので費用も最初から構築するよりも十分安くできます。
また今までの業種向けアプリケーションは、メーカー各社ごとのPOSに開発されていましたが、PCーPOSになりOSがWindowsなどで統一されることで同じアプリケーションがいろいろなメーカーのPCーPOSシステムで動くことが十分に可能になってきました。
アプリケーション利用の最大のメリットは、一般に完成度が非常に高く、それ専用に作られているため処理スピードがはやく、分析等に関しても今までの事例を基に十分練られており、開発の費用も安くつきます。
しかしその反面デメリットはすでに完成されているがゆえに、独自の変更などソフトの改良が難しい点です。また、通常本当にそのお店にあったパッケージソフトならば問題はないのですが、中には粗悪なパッケージも多く、選択に失敗した場合使えないか、不満を抱えたままの使用になってしまいます。
簡易データーベースの利用
PCーPOSの場合アプリケーションソフトを使用するのとは別にオーダーメイドすることも簡単な方法があります。それはパソコンで頻繁に使用されているデータベースソフトを使って簡易にプログラムを組んでしまう方法です。
最近ではソフトハウスでもデータベースソフトの Access (マイクロソフト製)や桐(管理工学研究所製)を使ってプログラムを組んでいるところも多くみかけます。というのも元々がデーターベースソフトであり、簡易言語が用意されていますので、ある程度まではスピーディーにプログラムを組むことができるためです。
この簡易言語を使えばソフトハウスの人間でなくても多少パソコンを知っている人なら、一ヶ月ぐらい勉強すれば簡単な販売管理ぐらいはプログラムすることが可能です。また最近のPOSメーカーは、自社のPOSを売るために「POSアプリケーション開発システム」として基本的なレジ機能を Access などのデータベースで提供するメーカーも出てきました。
この方法の大きなメリットは比較的にユーザーの希望に添ったシステムが構築しやすく、時間も短期間に開発が可能で、そしてユーザーの改造希望も比較的楽に(予算的にも期間的にも)受け入れることができます。
そのデメリットは、データーベース言語自体が汎用なためスピードが非常に遅く使用に耐えられないケースが多く見られます。そして少しでも複雑な処理をしようとするとデーターベースで与えられた処理を超えてしまうため、データーベースであるがゆえの限界を感じたり、バッチやパッチ処理と呼ばれるデータベース外での操作で処理してやらなくてはならないケースも多くなかなか融通が利きません。
また一般ユーザーがプログラムを開発したならば、すべての処理を完結した形で完成しおわればいいのですがそのシステムが中途半端で終わるといつまでもその業務に縛られ、システムトラブルが発生するとそのトラブル処理に追われてしまう事になりかねません。
通常の選択
アプリケーションとオーダーメードのどちらを選ぶか?と聞かれた場合、私の個人的な意見にはなりますが、特殊な処理をせずに、お店にマッチしたパッケージがあるのであれば、できるだけ実績のあるアプリケーションを選ぶことをお勧めします。
というのも単独にソフトを作ることは、いくら簡単にできるからといって最終的には時間も費用もそこそこにかかってしまうからです。
一般的に使用者側がシステムを設計する場合、よっぽどシステム設計に馴れた人でないと必要な機能と不必要な機能が混在し、後になって不満や要望によって用件を追加するするケースが多く見受けられます。そういった改造費用は当然のことながら別請求になり、結果的に高く付くケースが多くなります。
また作ったソフトハウスもいつまでもそのソフトの仕様を覚えているとは限りません。トラブルが起きたときには担当者が辞めていないケースも今まで数多くあります。
通常ソフトハウス側がアプリケーションを開発する場合はいろいろなケース(使い勝手、スピード、トラブル、メンテナンス等)を踏まえて設計しますので(中には何も考えていないソフトハウスもあるが)オーダーメイドされたソフトよりは数倍性能がいいケースの方が多いのです。
また実績があるソフトは多くのユーザーによってバグ等もつぶされていますので安心して使用できますし、最近では多少の範囲内でオーダーメードの要求に応じるソフトハウスも出てきました。
そのためPCーPOSに組み込むソフトは、できるだけ実績のあるソフトハウスのアプリケーションパッケージを選ぶことをお勧めします。
PCーPOSの向いてる業種
PCーPOSは、スーパーのような大型店舗よりも専門店に向いている,といわれてます。
専門店が向いてるその理由は、スーパーのように大量のレジ通過を目的としているのではなく、商品の個別管理や在庫管理、顧客管理等をする十分な目的思考があるからです。
私は次の処理をしたいならばすべてがPCーPOSに向いていると考えています。
顧客管理(ポイント管理も含む)
商品管理(商品稼働、不稼働、ベスト)
在庫管理(リアル在庫、棚卸し)
店舗不正防止()
データ分析(グラフ)
多店舗管理(店舗間の移動)
本部管理(売上集計、商品稼働集計)
顧客管理や商品管理が必要なPCーPOSが普及している業種としては、ビデオやCDのレンタルショップなどが上げられます。レンタルショップでは商品を人に貸すのですから商品管理や顧客管理が当たり前の世界です。
TVゲームショップなどもPCーPOSをよく見かけます。これは在庫の価値の変動が大きいく、仕入が個人のため業者のように一定していないからです。
これらは一般の販売業種とは少し違った業態の店舗です。どちらかというとパソコンで処理をした方が早いため、必然的にPCーPOSが台頭してきただと考えられます。このため日本国内ではある程度特殊な業態でない限りPCーPOSが成長しないような雰囲気が在りました。
しかし、まだまだいろいろな専門店でPCーPOSは成長する可能性があります。
例えば、飲食関係。ファミリーレストランなどでは既に注文をハンディーターミナルで受けて注文を出すオーダリングシステムが普及しています。これもPCーPOSを使った安いシステムが既に開発されています。
お客様から商品を預かるクリーニング屋さんや、商品を配達する酒屋さん、米屋さん、などは十分に顧客管理をしてもいい業種だと思います。しかし顧客管理をしている店はほとんどありません。逆に顧客管理しているほうが話題になったりします。
また衣料品関係も商品管理をしてもいい業種です。季節によって商品が移り代わり、売値もセール等で非常に価格の移り変わりが激しい業種です。商品の単品管理やグロス管理が可能になれば採算の目安を立てることが容易になります。
しかし、スーパーや百貨店、コンビニエンスなどでも、どこを見ても従来型のPOSシステムが多く、PCーPOSはあまりみかけません。
これは個別の商品や顧客を管理するよりも売上を計算するレジ通過に力点がおかれているからです。POSそのものでデータ分析を行うという考えそのものがあまりなく、事務所でおこなうのが当たり前になっています。
しかし、コンビニエンス等は、最近いろいろな業務(公共料金、宅配便等)をこなさなくてはいけませんので、ますますPCーPOSの方が向いているのではないかと思ったりもしています。
次に各業種向けアプリケーションの特徴を簡単に列記しています。
スーパー
スーパー用のPOSは大量な商品をさばくため何台も並列におかれスピーディに処理することを求められます。通常処理したデータはそのPOSに蓄積され業務の合間にサーバー機にデータを転送しサーバーにて集計を取ります。典型的なデータ吸い上げ端末です。最近は無線によってデーターをサーバー機に転送するシステムも出てきました。
コンビニエンス
お客と対面に処理され通常2~3台程度おかれます。まだまだデータ吸い上げ端末としての性格が強く売れた商品の受発注に目的を置いている。在庫の管理はほとんどがバックヤードでの処理が多い。公共料金支払いや宅急便の取り扱いなど特殊機能を持っている
薬局・ドラックストア
POSとして使用している店舗は在庫や有効期限などの管理をこなす。本格的に使っているところは薬事管理なども始めており、顧客管理も少しずつ導入しはじめている店舗あり
ドラックストアと呼ばれる店舗ではポイントカードなどのサービスを展開している店舗もあり
酒屋
配達などをおこなっている店は売掛けの管理が必要になり当然ながら顧客管理も重要。
特殊な機能として酒税の管理も必要
本、CD、
本の場合すべて委託商品であり在庫管理をしている店はほとんどなし。POSらしきものを入れているお店はジャンルごとの売上げの把握管理にとどまっている。
CDは再販商品で価格が守られているため追加オーダー・新品オーダー・返品としての機能が大きい。そのため本部(問屋)との連絡に重点が置かれている。
レストラン(喫茶店、居酒屋等)
専用機
お客からのハンディによる注文、受けた順番、厨房でのオーダー注残などのこなす機能が充実。本来のPOS機能の単品の売上管理他
在庫管理の概念より食材管理の機能あり
レンタル(ビデオ、CD等)
顧客管理必要、お客に商品を貸出するため売上の管理と貸し出した商品の管理(延滞金の計算等)特殊な機能必要、専用機
リサイクル(TVゲーム、CD、本、)
商品を仕入先だけでなく顧客から買取る機能あり。在庫管理がしっかりできていなければ管理不可能。金額の変動多い
クリーニング
人から物を預かる商売。意外と顧客管理できているお店が少なく売上げの管理とタグ発行にとどまっているシステムが多い。
ブティック(衣料品店)
同じ商品でも色、形、サイズによって商品の管理が異なるため複雑。紳士服はバーゲンが少ないが婦人服は見切りバーゲンが多く男女でもシステムが異なる
メガネ、貴金属
一品あたりの単価が非常に高く棚卸の管理重要。顧客管理の概念を取り込む店舗も増えてきてDM等の機能も増えてきた
美容院・理髪店
顧客カルテの管理的に使用されるケースが多い。DMやポイントカードの機能も増加
ディスカウント・電気店
大型店ではポイントカードのシステムが発達。ポイントによって値引きをおこし次回の来店につなげるシステム多い。
小型店では顧客の管理を充実させ履歴の管理や再購入のデータの蓄積など努力あり
そのほかまだまだいろいろな業種がありますが、業種によってPOSでチェックしたい目的がかなり多様化していることがわかると思います。
POSの機能別に業種を分類すると下記の図のようになります。
売上の集計に重点を置いた場合在庫の概念がない書店や左下に位置されます。またスーパーは売り上げに対して流動性が高いため在庫の金額変動が少なく定期発注の考えが強く現れます。
またCDなどは在庫の2~3割の商品で8割の売上が生じるため、売れ筋の商品の販売の機会損失を防ぐため商品が売れたらすぐに発注をかける必要が生じます。
レンタルショップやクリーニング店の場合は商品の発注という概念があまりありません。人から物を預かったり貸したりする商売のため初期にある一定の在庫を抱えることにより商品が回転していきます。そのため顧客管理の方が重要になってきます
これらの業種個々に絞ったアプリケーションパッケージも多く出てきましたのでいろいろな資料を取り寄せて、何ができるのかを検討して見てください。
PCーPOSで出来ること
では具体的にPCーPOSを使って、流通業では何が出来るでしょうか?。PCーPOSの可能な機能を列記しました。
販売業務
売上管理
仕入業務
売掛管理
在庫管理
顧客管理
商品実績管理
従来型のPOSの場合、販売と売上集計業務が中心で、それ以外の機能(例えば仕入れ、在庫、商品の動き)は別のコンピュータ(例えばストコン)等でおこなうことが多かったのですが、逆にPCーPOSであれば、中に組み込むソフト次第で何でも考えられるということになります。
しかしパソコンを同系列に並べ、LANで接続し、PCーPOSとして使用することによって販売・仕入・売掛・在庫・顧客管理がどのマシンでも可能になります。
販売(売上)業務
全業種対象
POSにこの機能がないシステムはありません。お店が鋭利を目的としている限り金銭の授受を計算することが最低限度必要な機能になります。通常は部門(ジャンル)ごとに売上の集計がおこなわれ、最近では時間別や担当者別に一日の売上がグラフで見れるようなシステムもできました。これによって社員、アルバイトの配置や担当のノルマを検討することが可能になります。
最近では販売の時点でポイントの概念を取り込むお店が増えてきました。ポイントは値引きの概念と共通でスタンプカードなどに比べお客様には即効性あるわかりやすい値引きになります。
仕入管理
従来POSで仕入を起こす考えはあり有りません。スーパーのような量販店舗ではあまり進められませんが、専門店などではPOSを仕入れのできる端末だと考えれば非常に便利になります。1台しか使わない店舗などではもちろん、数台のPOSを使っている店舗でも、片方では客様との接客業務をおこないながら、もう片方では仕入れ業務をおこなえ、POSの有効利用ができます。仕入れした数から販売した数を差し引いて在庫を出した方が管理が楽になります。
ただし通常の販売管理でいう買掛金の管理にはあまりむきません。どこからいくら仕入れて、いくら払わなければならないといったような、支払いに追われた事務的な管理は店頭業務ではなく事務処理に任せた方がいいと考えます。
仕入れの管理はその商品の在庫数、在庫金額、粗利管理のためのデータ入力手段と割り切って使った方が売上を伸ばす方に頭を使うことができます。
在庫管理
在庫管理は売り上げを伸ばすための前向きな考え方ではありません。しかしながらこの数字の把握ができないとお店が儲かっているのかどうか把握するのは不可能です。またお店の効率もこの管理によって制御されます。
在庫が過剰に存在すると数字上の利益は出ますが現金が不足する、また在庫が少ないと無駄はなくなりますが売上が落ちたら利益がへる、あくまでも仕入れた商品の効率をよくするための管理です。
在庫管理は通常管理メニュー等で見ることが多いのですが、単品管理をしている商品であれば販売時点で在庫が見れれば便利な業種もたくさんあります。販売時点で在庫を表示することが出来ればその商品の欠品や過少在庫を随時チェックできれば棚卸と同じ効果を得ることができます。
ただし在庫をリアルタイムに表示することはコンピュータ処理のタイミング上、非常に難しい処理になりますのでなかなか表示されているソフトは少ないようです。
商品の実績(稼動)管理
その商品が売れているのか、売れ残っているのか?その商品は在庫が適切なのか?見極めるには商品の稼動実績を見る必要があります。
通常は売上実績をその商品の動きと見ているようですが、できればもう一歩進んだ管理ができればいろいろな分析が可能になります。
稼動の実績を月単位(12ヶ月)、週単位、日単位に持たせることによって商品の流れが見えてきます。またそれと平行して仕入れ、在庫も稼動と同じ時系列にとることによってその商品がどのくらい仕入れて、どのくらい売れて、どのくらい在庫が残ったのかが見えてきます。またその商品の最終販売日や回転率なども大きなデータになります。
たとえば 1 つの商品を50個仕入れて、 1 ヶ月に 10 個売れれば、その商品は5ヶ月分の在庫ということがわかります。これが12ヶ月の数字としてその商品のバーコードをなぞることによって画面で見れれば、その商品がどのぐらいのペースで販売されているか流れが一目瞭然になります。
しかしこの商品稼動のデータの取り方はソフトハウスのどこもが頭をなやます限りです。というのも細かなデータをとろうとすると全体のデータが大きくなってしまいますし、稼動の単位が月→週→日と小さくなればなるほどデータ更新のタイミングが短くなります。そのためのメンテナンスが頻繁に発生します。
顧客管理
通常のPOSシステムで顧客管理をおこなっている業種はあまり多くありません。量販店(スーパー、ホームセンター、ディスカウンター等)のような店舗はいかに早くお客の流れが速くさばくかということを前提にPOSがつくられているために、悠長に接客している暇がありません。しかしながら商品の単価が高いく、お客の反復性がある業種の場合は顧客管理をするメリットが出てきます。たとえば米屋、酒屋、美容院、クリーニング、化粧品店、薬局、 EDP などが該当する業種です。
レンタルショップなどのようにお客の管理が完全に必要なお店もありますし電気店やのように過去の実績や顧客の家族構成までも管理しているお店も増えてきました。しかし中にはクリーニング店のように顧客から商品を預かっているのにもかかわらず顧客の管理を十分やっているとは思えない業種もあります。
今現在、顧客管理をやっていないにしろ顧客管理が十分にできれば売上げの伸ばすことのできる業種もたくさんあります。
たとえば米屋さんなどは常連客を顧客登録しその人数や消費のサイクルを計算しお米がなくなりそうになったら定期的にTELするサービスをすることによってお客様の定着を逃さないようにしているチェーン店なども出てきました。
売掛管理
売掛けの管理は特定の業種によって存在します。たとえば酒屋などは売掛けの非常に多い業種ですし、企業を対象にした文具屋なども細かな請求業務が発生します。売掛けなどの管理になると請求書を立てる必要がありますので実際はPOSよりも販売管理のシステムに任せた方がよい気もしますが、POSならば販売時点で売掛けを立てることができますので便利になります。
また、売掛の管理は顧客管理をすることも必要になり、支払いの締めも問題や入金の計算などしないと管理することが出来ませんので複雑なシステムになってしまいます。
顧客管理、入金、締め日、経過も問題を考えるならばこれだけで複雑な一つのシステムができあがってしまいますので、売上を上げる目的のPOSにはあまりむいていません。できればPOSの業務と分けて考えたほうがいいでしょう。
現場担当者が求めるシステム
私が今まで見てきたPOSシステムでは、管理者がもとめるデータと現場担当者が求めるデータが異なっているケースが多く見られます。
私はPOSで集計した資料は事務所だけで見るのではなく、その商品を売っている現場担当者も見るべきだと考えています。
しかし、今までの通常のPOSシステムはデータの流れがレジ側から事務所側に流れる一方通行でなんらその結果が帰ってきません。
お店の管理者が「今日の売上が少ないな」とか、「この部門の売上が最近落ちてきたな」というようなことはわかってもなぜ売上が落ちているのかがわかりません。また事務担当者が1ヶ月の商品の売上情報を10数センチにも及ぶ商品リストに打ち出してマーカーペンを片手「この商品は売れていないな」などとつぶやいてみても何ら売上を伸ばす手段は見つかりません。
お店のデータは事務所に蓄積され、現場担当者は見ることができない。また、現場担当者に商品情報(カンを含む)はに蓄積されますが、事務所のデータとは結びつかない。ここに物理的な事務所のデータと現場担当者のカンが結びつかない問題が浮かび上がります。
それは先ほどのべた情報の一方通行化がもたらしている弊害でもあります。POSはデーター収集端末ですので情報をPOS自体で見ることはできません。事務所のコンピュータは開放されていたとしても仕入れやその他の事務処理に使用され、現場担当者の数だけ用意されていませんので物理的に見ることが不可能です。また売り場からは離れているケースが多いのでいちいち見に行くわけにはいきません。
現場担当者は、
どのぐらい売れているのか
在庫は適切か、残していないか
売れてきたのか、売れなくなったのか
発注がちゃんとおきているか
仕入れはいくらなのか
価格は適切か
見切り売りのタイミングは適切か
原価割れをしていないか
値札は適切か
どういうお客なのか
お買い上げ金額、来店回数は
といったような情報が分かれば、お店の現場担当者のカンと情報が結びつき売り場が見えてくることになります。
このような構成にはPC―POSが最適な環境をもたらします。通常POS画面として使用しているモニターをそのまま情報表示画面として使用するのです。
POSは当然のことながらお店の規模に合わせてシステム構成が変わってきます。PC―POSが1台しかないお店はそのPC―POSをレジとして使用したり、パソコンとして機能を使用したりという、管理の機能として情報分析をおこなうことができます。。
事務所のコンピュータとLANで結びつきついているPC―POSの場合は、情報端末が現場担当者の手元にいつでもあることになります。通常はPOSとして使用しつつ、お客様からの問い合わせや自分の状況分析に合わせて、商品在庫の問い合わせや顧客データの問い合わせに使用することができます。
このようにパソコンLANお機能に有効に生かすことによって、現場担当者の商品に対する経営認識および知識が高まり、よりお客様に対しての信頼感が高まることになります。
当然パソコンですから、ロータス123や MS-Excel との連動も十分考えられます。POS専用に作られたアプリケーションではなかなかグラフまで表示することができませんが、そのデータをそっくり利用して表計算ソフトで自分のほしいグラフを作ることが可能です。
一つの例として、事務所のサーバー機にPOP印刷のアプリケーションソフトをインストールし、カラープリンタをつなぐことによって情報サーバー兼プリンターサーバーになり得ます。そのサーバー機をPC―POS端末にてコントロールし、POPの印刷をサーバー機にさせることによって、現場担当者が好きなときに必要なPOPの印刷をさせることができます。
PC―POS機に棚割のアプリケーションをインストールすることによってサーバー機から情報を取り寄せPC―POS上で棚割のデータを表示させて見ることもできます。
これはあるソフトハウスがおこなっていたことですがお店の死角にCCDカメラを備え付け、パソコンのディスプレイを監視カメラとして使用することができます。そのソフトハウスのPC―POSが Windows で動いているからできることなのですが、CCDカメラは最近非常に安くなってきてますし、 1 つの画面でPOSも監視カメラのモニタもできるわけですから省スペースにもなります。当然のことながらPOSの操作中は画面の後ろに追いやられてしまいます
このように現場担当者のもっとも欲しがる情報を、もっとも見やすい環境にできるのがPC―POSであり、その応用は計り知れないものがあります。
PC-POSの原点にもどって
ある程度特殊な環境でなければPC-POSの原点はありえなかった。ビデオのレンタルショップはそういう意味ではぴたりその環境に当てはまっている。
私どもが10年前にレンタルシステムを始めたのは、そのシステムがPOSでは作りにくく、パソコンでは作りやすかった、そんな理由による。
また、新しい業界でもありPOSの形にこだわらなくてもいい、そんな環境がPC―POSの原点になっていったと感じている。
人に物を貸す商売。いいままでの商売は人に物を売りその商品は売りっぱなしでよかったので売上だけを管理していればよかったのである。しかしビデオテープを人に貸すと言うことは顧客管理をしなくてはならず、またテープを何回も回転させるためその商品の管理もしなくてはならない。通常のPOSでは考えにくい処理がそこには存在した。
またシステムがこの商売を発展させたのも事実である。レンタルを管理しようとしたならば人手でこなすとすれば 1 日最低でも業務終了後1~2時間の事務処理が必要になるであろう。それをコンピュータを使うことによってリアルタイムに処理をしていくわけだからアルバイトの人件費以上にコンピュータが役に立ったわけだ。
大きな業務に返却業務がある。大型店では常に1000本以上の商品を人に貸しているわけだから、商品返却の消し込み業務は人手でこなそうとすれば大変な処理になってしまう。まして延滞金の計算があればなおさらである。また会員の管理も1万人単位、商品の数も1万単位で存在する。
そうした環境がPC―POSを生む素地にもなっている
レンタルシステムを構築したソフトハウスおよびメーカーはPOSメーカーからオフコンメーカ、パソコンメーカーまでピーク時で50社にも達した。POSメーカーはPOSを改造し、オフコンメーカーはオフコンをPOSに、パソコンメーカーも同様にだ。
ここにもシステムを自店で作ったオーナーが多く存在した。確かに5~10数件の数になれば開発費用も含めて自社開発した方が得だ、という考え方がおきてくるのが普通だ。じかしここでもメンテナンスの問題やマシンの変化についていけず数年後に入れ替えをしたオーナーが数多くいる。
専用で作っているソフトメーカーでさえ、すさまじい勢いで開発競争が生じ、すさまじい勢いで淘汰された。今レンタルシステムを本格的に手がけているメーカーは10社足らずである。実に40社近い会社が倒産したり撤退したりしているのである。
実際私どものお店で1200件の店舗がPC―POSとして稼動している。それらのお店のすべてが私どのも先生でありよきアドバイザーである。お店の意見は非常に参考になるし、お店のオーナーや店員がどんな気持ちでシステムを使ってくれているのか常に気になっている。
しかしその中でも一番気になることがサポートおよびメンテナンスである。先ほど淘汰された40社の会社の中にはこの事をおろそかにしたために売りっぱなしになったり、トラブルを起こしたり、2度と使ってもらえなかったところも多かった。
POSは毎日使うものだ、ということを常に念頭において作る方も、使う方も考えなければ、安易にPC―POSに乗り出すべきではないと考える。
前回はPOSがPCーPOSに流れていく大きな理由を述べましたが、今回は具体的にPCーPOSをどのように構築していけばいいのか考えてみたいと思います。
私はPCーPOSは、導入するものではなく構築するものだと考えています。これは決して部品を買ってきて組み立てなさいという意味ではありません。お店には個々にいろいろな業態、やり方があり、POSシステムにもその業態にあわせたシステムの構築が必要だと思っているからです。
ただし今まではそのお店にあわせた独自のシステムを構築しようとすると高いシステム、高額の費用が要求されました。それは専用POSそのものが、最初から一辺倒の固定概念でしかシステム設計されていなかったのと、メーカーが自由に設計できる機種は高級機として認識していたからです。
これではお店を経営している多くの人が経営分析やちょっとした顧客サービスを始めようとすると、メーカーの高級POSを購入するしかなく、それゆえに躊躇したり導入をあきらめざるおえませんでした。
これは背広を作るのによく似ています。POSには、いままでオーダーメイドと既製品の2つの種類しかありませんでした。既製品では最初から与えられたサイズは数えるほどしかなく、ありきたりのものでしかありません。少しでも体型の違う人が背広を作ろうとするとオーダーメイドしかなく、そのオーダーメイドするためには値段の高い生地しか与えていませんでした。
しかしこれだけいろいろな形態のお店が出てくれば既製品の背広やオーダーメイドだけでまかなえるはずがありません。その中間にあたるイージーオーダーの考え方であるPC-POSです
たとえばレストランのPOSは、以前は売上を集計するか、チケットの販売程度にしか使われていなかったものが、現在は本来のPOSとしての目的よりもオーダリングとしての目的の方を重視されています。スーパーではお客をすばやくこなすことを目的とし、コンビニエンスでは対面販売でカウンター処理をおこない、あきらかにスーパーと接客方法が変わってきます。
このように業種によってPOSの使い方も異なってきているのにスーパーもコンビニもレストランもその他の専門店も同じ既製品のPOSを着せられていたのです。POSを売上げを集計することのみの目的として使う今までの考え方ならば許されたものが、多種多様化した店舗に窮屈なお店自身の進歩もさまたげることにもなりかねません。
PCーPOSの場合、業務の目的に合わせて中に組み込むソフトを変えることができますし、設計することもできます。組み込むソフトは、その性格から大きく分けて2つあります。1つは業種別にすでに完成されたアプリケーションソフト。もう1つはその目的に合わせて開発するオーダリングソフトです。
アプリケーションの利用
簡易データーベースの利用
通常の選択
PCーPOSの向いてる業種
PCーPOSで出来ること
現場担当者が求めるシステム
PC-POSの原点にもどって
アプリケーションの利用
専用POSがPCーPOSに移り変わり、そのためにできてきたのがアプリケーションパッケージという出来上がったイージーオーダーソフトです。
このソフトの今までの既製品と違う点は、POSとは独立したプログラムであるため、そのプログラムの組みかたによって仕様にかなりの余裕を持たせることが可能になります。
いくつかの業種向けに合わされたアプリケーションはすでに用意されており、その店舗の目的に合わせてアプリケーションを選択します。プログラムを一から作り上げる手間暇を考えれば、この手順は数十倍も効率がよくスピーディーに導入できます。またこのアプリケーションはすでに開発されているので費用も最初から構築するよりも十分安くできます。
また今までの業種向けアプリケーションは、メーカー各社ごとのPOSに開発されていましたが、PCーPOSになりOSがWindowsなどで統一されることで同じアプリケーションがいろいろなメーカーのPCーPOSシステムで動くことが十分に可能になってきました。
アプリケーション利用の最大のメリットは、一般に完成度が非常に高く、それ専用に作られているため処理スピードがはやく、分析等に関しても今までの事例を基に十分練られており、開発の費用も安くつきます。
しかしその反面デメリットはすでに完成されているがゆえに、独自の変更などソフトの改良が難しい点です。また、通常本当にそのお店にあったパッケージソフトならば問題はないのですが、中には粗悪なパッケージも多く、選択に失敗した場合使えないか、不満を抱えたままの使用になってしまいます。
簡易データーベースの利用
PCーPOSの場合アプリケーションソフトを使用するのとは別にオーダーメイドすることも簡単な方法があります。それはパソコンで頻繁に使用されているデータベースソフトを使って簡易にプログラムを組んでしまう方法です。
最近ではソフトハウスでもデータベースソフトの Access (マイクロソフト製)や桐(管理工学研究所製)を使ってプログラムを組んでいるところも多くみかけます。というのも元々がデーターベースソフトであり、簡易言語が用意されていますので、ある程度まではスピーディーにプログラムを組むことができるためです。
この簡易言語を使えばソフトハウスの人間でなくても多少パソコンを知っている人なら、一ヶ月ぐらい勉強すれば簡単な販売管理ぐらいはプログラムすることが可能です。また最近のPOSメーカーは、自社のPOSを売るために「POSアプリケーション開発システム」として基本的なレジ機能を Access などのデータベースで提供するメーカーも出てきました。
この方法の大きなメリットは比較的にユーザーの希望に添ったシステムが構築しやすく、時間も短期間に開発が可能で、そしてユーザーの改造希望も比較的楽に(予算的にも期間的にも)受け入れることができます。
そのデメリットは、データーベース言語自体が汎用なためスピードが非常に遅く使用に耐えられないケースが多く見られます。そして少しでも複雑な処理をしようとするとデーターベースで与えられた処理を超えてしまうため、データーベースであるがゆえの限界を感じたり、バッチやパッチ処理と呼ばれるデータベース外での操作で処理してやらなくてはならないケースも多くなかなか融通が利きません。
また一般ユーザーがプログラムを開発したならば、すべての処理を完結した形で完成しおわればいいのですがそのシステムが中途半端で終わるといつまでもその業務に縛られ、システムトラブルが発生するとそのトラブル処理に追われてしまう事になりかねません。
通常の選択
アプリケーションとオーダーメードのどちらを選ぶか?と聞かれた場合、私の個人的な意見にはなりますが、特殊な処理をせずに、お店にマッチしたパッケージがあるのであれば、できるだけ実績のあるアプリケーションを選ぶことをお勧めします。
というのも単独にソフトを作ることは、いくら簡単にできるからといって最終的には時間も費用もそこそこにかかってしまうからです。
一般的に使用者側がシステムを設計する場合、よっぽどシステム設計に馴れた人でないと必要な機能と不必要な機能が混在し、後になって不満や要望によって用件を追加するするケースが多く見受けられます。そういった改造費用は当然のことながら別請求になり、結果的に高く付くケースが多くなります。
また作ったソフトハウスもいつまでもそのソフトの仕様を覚えているとは限りません。トラブルが起きたときには担当者が辞めていないケースも今まで数多くあります。
通常ソフトハウス側がアプリケーションを開発する場合はいろいろなケース(使い勝手、スピード、トラブル、メンテナンス等)を踏まえて設計しますので(中には何も考えていないソフトハウスもあるが)オーダーメイドされたソフトよりは数倍性能がいいケースの方が多いのです。
また実績があるソフトは多くのユーザーによってバグ等もつぶされていますので安心して使用できますし、最近では多少の範囲内でオーダーメードの要求に応じるソフトハウスも出てきました。
そのためPCーPOSに組み込むソフトは、できるだけ実績のあるソフトハウスのアプリケーションパッケージを選ぶことをお勧めします。
PCーPOSの向いてる業種
PCーPOSは、スーパーのような大型店舗よりも専門店に向いている,といわれてます。
専門店が向いてるその理由は、スーパーのように大量のレジ通過を目的としているのではなく、商品の個別管理や在庫管理、顧客管理等をする十分な目的思考があるからです。
私は次の処理をしたいならばすべてがPCーPOSに向いていると考えています。
顧客管理(ポイント管理も含む)
商品管理(商品稼働、不稼働、ベスト)
在庫管理(リアル在庫、棚卸し)
店舗不正防止()
データ分析(グラフ)
多店舗管理(店舗間の移動)
本部管理(売上集計、商品稼働集計)
顧客管理や商品管理が必要なPCーPOSが普及している業種としては、ビデオやCDのレンタルショップなどが上げられます。レンタルショップでは商品を人に貸すのですから商品管理や顧客管理が当たり前の世界です。
TVゲームショップなどもPCーPOSをよく見かけます。これは在庫の価値の変動が大きいく、仕入が個人のため業者のように一定していないからです。
これらは一般の販売業種とは少し違った業態の店舗です。どちらかというとパソコンで処理をした方が早いため、必然的にPCーPOSが台頭してきただと考えられます。このため日本国内ではある程度特殊な業態でない限りPCーPOSが成長しないような雰囲気が在りました。
しかし、まだまだいろいろな専門店でPCーPOSは成長する可能性があります。
例えば、飲食関係。ファミリーレストランなどでは既に注文をハンディーターミナルで受けて注文を出すオーダリングシステムが普及しています。これもPCーPOSを使った安いシステムが既に開発されています。
お客様から商品を預かるクリーニング屋さんや、商品を配達する酒屋さん、米屋さん、などは十分に顧客管理をしてもいい業種だと思います。しかし顧客管理をしている店はほとんどありません。逆に顧客管理しているほうが話題になったりします。
また衣料品関係も商品管理をしてもいい業種です。季節によって商品が移り代わり、売値もセール等で非常に価格の移り変わりが激しい業種です。商品の単品管理やグロス管理が可能になれば採算の目安を立てることが容易になります。
しかし、スーパーや百貨店、コンビニエンスなどでも、どこを見ても従来型のPOSシステムが多く、PCーPOSはあまりみかけません。
これは個別の商品や顧客を管理するよりも売上を計算するレジ通過に力点がおかれているからです。POSそのものでデータ分析を行うという考えそのものがあまりなく、事務所でおこなうのが当たり前になっています。
しかし、コンビニエンス等は、最近いろいろな業務(公共料金、宅配便等)をこなさなくてはいけませんので、ますますPCーPOSの方が向いているのではないかと思ったりもしています。
次に各業種向けアプリケーションの特徴を簡単に列記しています。
スーパー
スーパー用のPOSは大量な商品をさばくため何台も並列におかれスピーディに処理することを求められます。通常処理したデータはそのPOSに蓄積され業務の合間にサーバー機にデータを転送しサーバーにて集計を取ります。典型的なデータ吸い上げ端末です。最近は無線によってデーターをサーバー機に転送するシステムも出てきました。
コンビニエンス
お客と対面に処理され通常2~3台程度おかれます。まだまだデータ吸い上げ端末としての性格が強く売れた商品の受発注に目的を置いている。在庫の管理はほとんどがバックヤードでの処理が多い。公共料金支払いや宅急便の取り扱いなど特殊機能を持っている
薬局・ドラックストア
POSとして使用している店舗は在庫や有効期限などの管理をこなす。本格的に使っているところは薬事管理なども始めており、顧客管理も少しずつ導入しはじめている店舗あり
ドラックストアと呼ばれる店舗ではポイントカードなどのサービスを展開している店舗もあり
酒屋
配達などをおこなっている店は売掛けの管理が必要になり当然ながら顧客管理も重要。
特殊な機能として酒税の管理も必要
本、CD、
本の場合すべて委託商品であり在庫管理をしている店はほとんどなし。POSらしきものを入れているお店はジャンルごとの売上げの把握管理にとどまっている。
CDは再販商品で価格が守られているため追加オーダー・新品オーダー・返品としての機能が大きい。そのため本部(問屋)との連絡に重点が置かれている。
レストラン(喫茶店、居酒屋等)
専用機
お客からのハンディによる注文、受けた順番、厨房でのオーダー注残などのこなす機能が充実。本来のPOS機能の単品の売上管理他
在庫管理の概念より食材管理の機能あり
レンタル(ビデオ、CD等)
顧客管理必要、お客に商品を貸出するため売上の管理と貸し出した商品の管理(延滞金の計算等)特殊な機能必要、専用機
リサイクル(TVゲーム、CD、本、)
商品を仕入先だけでなく顧客から買取る機能あり。在庫管理がしっかりできていなければ管理不可能。金額の変動多い
クリーニング
人から物を預かる商売。意外と顧客管理できているお店が少なく売上げの管理とタグ発行にとどまっているシステムが多い。
ブティック(衣料品店)
同じ商品でも色、形、サイズによって商品の管理が異なるため複雑。紳士服はバーゲンが少ないが婦人服は見切りバーゲンが多く男女でもシステムが異なる
メガネ、貴金属
一品あたりの単価が非常に高く棚卸の管理重要。顧客管理の概念を取り込む店舗も増えてきてDM等の機能も増えてきた
美容院・理髪店
顧客カルテの管理的に使用されるケースが多い。DMやポイントカードの機能も増加
ディスカウント・電気店
大型店ではポイントカードのシステムが発達。ポイントによって値引きをおこし次回の来店につなげるシステム多い。
小型店では顧客の管理を充実させ履歴の管理や再購入のデータの蓄積など努力あり
そのほかまだまだいろいろな業種がありますが、業種によってPOSでチェックしたい目的がかなり多様化していることがわかると思います。
POSの機能別に業種を分類すると下記の図のようになります。
売上の集計に重点を置いた場合在庫の概念がない書店や左下に位置されます。またスーパーは売り上げに対して流動性が高いため在庫の金額変動が少なく定期発注の考えが強く現れます。
またCDなどは在庫の2~3割の商品で8割の売上が生じるため、売れ筋の商品の販売の機会損失を防ぐため商品が売れたらすぐに発注をかける必要が生じます。
レンタルショップやクリーニング店の場合は商品の発注という概念があまりありません。人から物を預かったり貸したりする商売のため初期にある一定の在庫を抱えることにより商品が回転していきます。そのため顧客管理の方が重要になってきます
これらの業種個々に絞ったアプリケーションパッケージも多く出てきましたのでいろいろな資料を取り寄せて、何ができるのかを検討して見てください。
PCーPOSで出来ること
では具体的にPCーPOSを使って、流通業では何が出来るでしょうか?。PCーPOSの可能な機能を列記しました。
販売業務
売上管理
仕入業務
売掛管理
在庫管理
顧客管理
商品実績管理
従来型のPOSの場合、販売と売上集計業務が中心で、それ以外の機能(例えば仕入れ、在庫、商品の動き)は別のコンピュータ(例えばストコン)等でおこなうことが多かったのですが、逆にPCーPOSであれば、中に組み込むソフト次第で何でも考えられるということになります。
しかしパソコンを同系列に並べ、LANで接続し、PCーPOSとして使用することによって販売・仕入・売掛・在庫・顧客管理がどのマシンでも可能になります。
販売(売上)業務
全業種対象
POSにこの機能がないシステムはありません。お店が鋭利を目的としている限り金銭の授受を計算することが最低限度必要な機能になります。通常は部門(ジャンル)ごとに売上の集計がおこなわれ、最近では時間別や担当者別に一日の売上がグラフで見れるようなシステムもできました。これによって社員、アルバイトの配置や担当のノルマを検討することが可能になります。
最近では販売の時点でポイントの概念を取り込むお店が増えてきました。ポイントは値引きの概念と共通でスタンプカードなどに比べお客様には即効性あるわかりやすい値引きになります。
仕入管理
従来POSで仕入を起こす考えはあり有りません。スーパーのような量販店舗ではあまり進められませんが、専門店などではPOSを仕入れのできる端末だと考えれば非常に便利になります。1台しか使わない店舗などではもちろん、数台のPOSを使っている店舗でも、片方では客様との接客業務をおこないながら、もう片方では仕入れ業務をおこなえ、POSの有効利用ができます。仕入れした数から販売した数を差し引いて在庫を出した方が管理が楽になります。
ただし通常の販売管理でいう買掛金の管理にはあまりむきません。どこからいくら仕入れて、いくら払わなければならないといったような、支払いに追われた事務的な管理は店頭業務ではなく事務処理に任せた方がいいと考えます。
仕入れの管理はその商品の在庫数、在庫金額、粗利管理のためのデータ入力手段と割り切って使った方が売上を伸ばす方に頭を使うことができます。
在庫管理
在庫管理は売り上げを伸ばすための前向きな考え方ではありません。しかしながらこの数字の把握ができないとお店が儲かっているのかどうか把握するのは不可能です。またお店の効率もこの管理によって制御されます。
在庫が過剰に存在すると数字上の利益は出ますが現金が不足する、また在庫が少ないと無駄はなくなりますが売上が落ちたら利益がへる、あくまでも仕入れた商品の効率をよくするための管理です。
在庫管理は通常管理メニュー等で見ることが多いのですが、単品管理をしている商品であれば販売時点で在庫が見れれば便利な業種もたくさんあります。販売時点で在庫を表示することが出来ればその商品の欠品や過少在庫を随時チェックできれば棚卸と同じ効果を得ることができます。
ただし在庫をリアルタイムに表示することはコンピュータ処理のタイミング上、非常に難しい処理になりますのでなかなか表示されているソフトは少ないようです。
商品の実績(稼動)管理
その商品が売れているのか、売れ残っているのか?その商品は在庫が適切なのか?見極めるには商品の稼動実績を見る必要があります。
通常は売上実績をその商品の動きと見ているようですが、できればもう一歩進んだ管理ができればいろいろな分析が可能になります。
稼動の実績を月単位(12ヶ月)、週単位、日単位に持たせることによって商品の流れが見えてきます。またそれと平行して仕入れ、在庫も稼動と同じ時系列にとることによってその商品がどのくらい仕入れて、どのくらい売れて、どのくらい在庫が残ったのかが見えてきます。またその商品の最終販売日や回転率なども大きなデータになります。
たとえば 1 つの商品を50個仕入れて、 1 ヶ月に 10 個売れれば、その商品は5ヶ月分の在庫ということがわかります。これが12ヶ月の数字としてその商品のバーコードをなぞることによって画面で見れれば、その商品がどのぐらいのペースで販売されているか流れが一目瞭然になります。
しかしこの商品稼動のデータの取り方はソフトハウスのどこもが頭をなやます限りです。というのも細かなデータをとろうとすると全体のデータが大きくなってしまいますし、稼動の単位が月→週→日と小さくなればなるほどデータ更新のタイミングが短くなります。そのためのメンテナンスが頻繁に発生します。
顧客管理
通常のPOSシステムで顧客管理をおこなっている業種はあまり多くありません。量販店(スーパー、ホームセンター、ディスカウンター等)のような店舗はいかに早くお客の流れが速くさばくかということを前提にPOSがつくられているために、悠長に接客している暇がありません。しかしながら商品の単価が高いく、お客の反復性がある業種の場合は顧客管理をするメリットが出てきます。たとえば米屋、酒屋、美容院、クリーニング、化粧品店、薬局、 EDP などが該当する業種です。
レンタルショップなどのようにお客の管理が完全に必要なお店もありますし電気店やのように過去の実績や顧客の家族構成までも管理しているお店も増えてきました。しかし中にはクリーニング店のように顧客から商品を預かっているのにもかかわらず顧客の管理を十分やっているとは思えない業種もあります。
今現在、顧客管理をやっていないにしろ顧客管理が十分にできれば売上げの伸ばすことのできる業種もたくさんあります。
たとえば米屋さんなどは常連客を顧客登録しその人数や消費のサイクルを計算しお米がなくなりそうになったら定期的にTELするサービスをすることによってお客様の定着を逃さないようにしているチェーン店なども出てきました。
売掛管理
売掛けの管理は特定の業種によって存在します。たとえば酒屋などは売掛けの非常に多い業種ですし、企業を対象にした文具屋なども細かな請求業務が発生します。売掛けなどの管理になると請求書を立てる必要がありますので実際はPOSよりも販売管理のシステムに任せた方がよい気もしますが、POSならば販売時点で売掛けを立てることができますので便利になります。
また、売掛の管理は顧客管理をすることも必要になり、支払いの締めも問題や入金の計算などしないと管理することが出来ませんので複雑なシステムになってしまいます。
顧客管理、入金、締め日、経過も問題を考えるならばこれだけで複雑な一つのシステムができあがってしまいますので、売上を上げる目的のPOSにはあまりむいていません。できればPOSの業務と分けて考えたほうがいいでしょう。
現場担当者が求めるシステム
私が今まで見てきたPOSシステムでは、管理者がもとめるデータと現場担当者が求めるデータが異なっているケースが多く見られます。
私はPOSで集計した資料は事務所だけで見るのではなく、その商品を売っている現場担当者も見るべきだと考えています。
しかし、今までの通常のPOSシステムはデータの流れがレジ側から事務所側に流れる一方通行でなんらその結果が帰ってきません。
お店の管理者が「今日の売上が少ないな」とか、「この部門の売上が最近落ちてきたな」というようなことはわかってもなぜ売上が落ちているのかがわかりません。また事務担当者が1ヶ月の商品の売上情報を10数センチにも及ぶ商品リストに打ち出してマーカーペンを片手「この商品は売れていないな」などとつぶやいてみても何ら売上を伸ばす手段は見つかりません。
お店のデータは事務所に蓄積され、現場担当者は見ることができない。また、現場担当者に商品情報(カンを含む)はに蓄積されますが、事務所のデータとは結びつかない。ここに物理的な事務所のデータと現場担当者のカンが結びつかない問題が浮かび上がります。
それは先ほどのべた情報の一方通行化がもたらしている弊害でもあります。POSはデーター収集端末ですので情報をPOS自体で見ることはできません。事務所のコンピュータは開放されていたとしても仕入れやその他の事務処理に使用され、現場担当者の数だけ用意されていませんので物理的に見ることが不可能です。また売り場からは離れているケースが多いのでいちいち見に行くわけにはいきません。
現場担当者は、
どのぐらい売れているのか
在庫は適切か、残していないか
売れてきたのか、売れなくなったのか
発注がちゃんとおきているか
仕入れはいくらなのか
価格は適切か
見切り売りのタイミングは適切か
原価割れをしていないか
値札は適切か
どういうお客なのか
お買い上げ金額、来店回数は
といったような情報が分かれば、お店の現場担当者のカンと情報が結びつき売り場が見えてくることになります。
このような構成にはPC―POSが最適な環境をもたらします。通常POS画面として使用しているモニターをそのまま情報表示画面として使用するのです。
POSは当然のことながらお店の規模に合わせてシステム構成が変わってきます。PC―POSが1台しかないお店はそのPC―POSをレジとして使用したり、パソコンとして機能を使用したりという、管理の機能として情報分析をおこなうことができます。。
事務所のコンピュータとLANで結びつきついているPC―POSの場合は、情報端末が現場担当者の手元にいつでもあることになります。通常はPOSとして使用しつつ、お客様からの問い合わせや自分の状況分析に合わせて、商品在庫の問い合わせや顧客データの問い合わせに使用することができます。
このようにパソコンLANお機能に有効に生かすことによって、現場担当者の商品に対する経営認識および知識が高まり、よりお客様に対しての信頼感が高まることになります。
当然パソコンですから、ロータス123や MS-Excel との連動も十分考えられます。POS専用に作られたアプリケーションではなかなかグラフまで表示することができませんが、そのデータをそっくり利用して表計算ソフトで自分のほしいグラフを作ることが可能です。
一つの例として、事務所のサーバー機にPOP印刷のアプリケーションソフトをインストールし、カラープリンタをつなぐことによって情報サーバー兼プリンターサーバーになり得ます。そのサーバー機をPC―POS端末にてコントロールし、POPの印刷をサーバー機にさせることによって、現場担当者が好きなときに必要なPOPの印刷をさせることができます。
PC―POS機に棚割のアプリケーションをインストールすることによってサーバー機から情報を取り寄せPC―POS上で棚割のデータを表示させて見ることもできます。
これはあるソフトハウスがおこなっていたことですがお店の死角にCCDカメラを備え付け、パソコンのディスプレイを監視カメラとして使用することができます。そのソフトハウスのPC―POSが Windows で動いているからできることなのですが、CCDカメラは最近非常に安くなってきてますし、 1 つの画面でPOSも監視カメラのモニタもできるわけですから省スペースにもなります。当然のことながらPOSの操作中は画面の後ろに追いやられてしまいます
このように現場担当者のもっとも欲しがる情報を、もっとも見やすい環境にできるのがPC―POSであり、その応用は計り知れないものがあります。
PC-POSの原点にもどって
ある程度特殊な環境でなければPC-POSの原点はありえなかった。ビデオのレンタルショップはそういう意味ではぴたりその環境に当てはまっている。
私どもが10年前にレンタルシステムを始めたのは、そのシステムがPOSでは作りにくく、パソコンでは作りやすかった、そんな理由による。
また、新しい業界でもありPOSの形にこだわらなくてもいい、そんな環境がPC―POSの原点になっていったと感じている。
人に物を貸す商売。いいままでの商売は人に物を売りその商品は売りっぱなしでよかったので売上だけを管理していればよかったのである。しかしビデオテープを人に貸すと言うことは顧客管理をしなくてはならず、またテープを何回も回転させるためその商品の管理もしなくてはならない。通常のPOSでは考えにくい処理がそこには存在した。
またシステムがこの商売を発展させたのも事実である。レンタルを管理しようとしたならば人手でこなすとすれば 1 日最低でも業務終了後1~2時間の事務処理が必要になるであろう。それをコンピュータを使うことによってリアルタイムに処理をしていくわけだからアルバイトの人件費以上にコンピュータが役に立ったわけだ。
大きな業務に返却業務がある。大型店では常に1000本以上の商品を人に貸しているわけだから、商品返却の消し込み業務は人手でこなそうとすれば大変な処理になってしまう。まして延滞金の計算があればなおさらである。また会員の管理も1万人単位、商品の数も1万単位で存在する。
そうした環境がPC―POSを生む素地にもなっている
レンタルシステムを構築したソフトハウスおよびメーカーはPOSメーカーからオフコンメーカ、パソコンメーカーまでピーク時で50社にも達した。POSメーカーはPOSを改造し、オフコンメーカーはオフコンをPOSに、パソコンメーカーも同様にだ。
ここにもシステムを自店で作ったオーナーが多く存在した。確かに5~10数件の数になれば開発費用も含めて自社開発した方が得だ、という考え方がおきてくるのが普通だ。じかしここでもメンテナンスの問題やマシンの変化についていけず数年後に入れ替えをしたオーナーが数多くいる。
専用で作っているソフトメーカーでさえ、すさまじい勢いで開発競争が生じ、すさまじい勢いで淘汰された。今レンタルシステムを本格的に手がけているメーカーは10社足らずである。実に40社近い会社が倒産したり撤退したりしているのである。
実際私どものお店で1200件の店舗がPC―POSとして稼動している。それらのお店のすべてが私どのも先生でありよきアドバイザーである。お店の意見は非常に参考になるし、お店のオーナーや店員がどんな気持ちでシステムを使ってくれているのか常に気になっている。
しかしその中でも一番気になることがサポートおよびメンテナンスである。先ほど淘汰された40社の会社の中にはこの事をおろそかにしたために売りっぱなしになったり、トラブルを起こしたり、2度と使ってもらえなかったところも多かった。
POSは毎日使うものだ、ということを常に念頭において作る方も、使う方も考えなければ、安易にPC―POSに乗り出すべきではないと考える。

- [1996/04/01 01:19]
- (1996年)ストアシステムはパソコンPOSで構築せよ!! |
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第1話「ストアシステムはパソコンPOSで構築せよ!!」
はじめに
ここ近年コンピュータの進歩はとても激しいものがあります。それに伴い、これらのシステム機器もダウンサイジングと呼ばれる通り、急激に値下がりしています。
その中でもパソコンの進歩は目覚ましいものがあり、実際にパソコンに携わる我々でさえ情報紙や新聞、カタログなど目が離せない状況にあります。これはとても喜ばしいことであり、スピードや性能の向上、価格の低下は、今までに予算的に、または技術に出来なかったことを可能にし、新しい展望が見えてきました。
これだけ身近に近づいてきたパソコンの進歩を見逃すことはないでしょう。「どうにかしてパソコンを流通業の中で有効に利用は出来ないだろうか」と、考えた企画が今回の「流通業のパソコンを使った情報戦略」であります。
私共が目標としている今回の大きなテーマは、パソコンという非常に優れたツールを、店舗の中にに持ち込むことによって、どれだけ店舗の収益を伸ばせるか、どれだけ店舗の効率をアップできるか、ということです。
ただし、店舗にせっかく便利なシステムを導入したとしても、何千~ン百万も費用をかけていたのでは、伸ばした収益も全部システム費用にとられてしまうことになります。
そのため、今まで何千~ン百万もかかっていた費用を、一桁もしくは半額にさげて実行できるようなシステム作り、数百~ン十万の世界で可能なパソコンの世界を読者の皆さんに提供できれば、と考えています。これでこそ私共が目的にしてるローコスト、高収益の世界なのです。
目次
パソコンの進歩が流通業を巻き込む
PC-POSとは?(PCーPOSの定義)
今なぜPCーPOSなのか?
50%を超える海外のPC-POS
メーカの中でも起こる世代交代
部品調達による値段の違い
性能の違い
ソフトの違い
結論、PC-POSのメリットは
PCーPOSを動かす環境
時代の流れはMS-DOSからWINDOWSへ
ソフトウエアのハード互換性
ソフトの操作性の統一
注)OLE POS技術協議会の発足
第1回 PC-POS構築法
パソコンの進歩が流通業を巻き込む
「パソコンはソフトがなければただの箱」という言葉があります。しかしこの言葉の裏には「パソコンはソフトを組み込むことによって大きな可能性を持っている」と言う意味が必然的に含まれています。
事実、適切なソフトを付加されたパソコンは、そのソフトの内容によって大きな仕事をこなしていきます。そのハード、ソフト性能の向上は,ますますその範囲を広げています。
流通業の中でもパソコンがいろいろな分野に使われるようになりました。しかし、まだまだワープロや表計算などといった一般的な使用のとどまっていることが多く、流通業の本流を支えるような業務の中で使われるケースはまだ少ないようです。
その理由は、2つあります。
POSなど流通業向けシステムは、いままで特殊な環境の中で使用されおり、今でもその傾向が強く残っている。
流通業向けPCアプリケーションの紹介がいままで余りされてこなかった
私は決して流通業向けシステムは特殊だとは思っていません。確かに形はレジの形をしていた方が一般受けが良いことは事実です。しかし中身は決して特殊な処理をしているわけではありません。パソコンで出来ない処理はほとんどありません。そのためパソコンであっても良いはずです。
それに答えるかのように最近はレジの形をしたパソコンも、POSメーカーから出てきました。
また、PCアプリケーションもPCーPOSやEOS、在庫管理、顧客管理、販売促進、等のソフトが今から増えていくことでしょう。そうなると流通業務を1台のパソコンまたはLANによる複数パソコンで業務をこなしていくことが可能になります。
そのため、私はもっと流通業の本流、重要なところでパソコンそのものを使っていってもいいのではないかと考えています。
その中でも大きく注目しなくてはいけないのがPCーPOSです。専用POSからPCーPOSに変えることによって、一方方向に売上を吸い上げる売上登録集計機から、総方向に情報を分析できる情報端末に変身します。
PCーPOSは、そういう意味で流通業の中でいろいろな可能性を秘めています。ソフトの開発によっていろいろな業務をこなしていくことが十分出来ます。
またそれに伴う流通業向けのパソコンパッケージソフトも、いろいろなソフトハウスから出てきました。これらを駆使することにPOS業務自体もPCーPOSを使って出来そうです。
今までこれらのソフトはなかなか紹介される機会が有りませんでした。POS自体、紹介の機会は少なく、私が知っている限り1年に一回開かれるSAショーぐらいです。しかしSAショーの中でもソフトが紹介されるとは限りません。
今回は、こうしたPCーPOSを中心に、その有効性と使い方を概略、機能をもとに説明していきたいと思っています。
PC-POSとは?(PCーPOSの定義)
PC-POSはおおざっぱに言えば「パソコンをつかったPOS」と解釈してもいいと思います。しかし私はどちらかとえいば「パソコン&POS」と考えています。なぜかというとパソコンはパソコン自体としても使えるし、POSにもなると考えているからです。
パソコンは、本来のパソコンとして使い方、ワープロや表計算等に使う用途とPCーPOSとしての使い方が流通業の中では考えられます。
しかし、PC-POSという言葉は、もう少し厳密に定義して置く必要があるでしょう。というのも、現在私が知る限りもう少し深い意味が存在するからです。
POSは「Point Of Sale」、日本語に直しますと「販売時点情報管理システム」です。
PCは「パソコン」の略称です。しかし、PC-POSの「PC(パソコン)」の部分については、ハードだけを指すのではなく、ソフトも含んだ厳密な定義が必要だと思います。
PC-POSの「PC」とは、パソコンのハード部分のことだけを指すのではなく、その中で動く一般的なパソコンOS(オペレーションシステム)で動くもの、としたい。つまりMS-DOSやWINDOWS(95を含む)、WINDOWSNT、OS-2、等のパソコン系一般OSを含んでいる事を前提条件としたいと考えます。
なぜならば、POSをPC-POSに置き換える大前提は、POSシステムのオープン化の流れに基づくものであり、一般化された技術の中で、誰でもがPOSのデータの加工やプログラミングが可能で、なおかつ、どのようなPOSもパソコンもLANや通信で結び付けられるものでなければならない、と考えるからです。
これらの処条件がまかなえないようなPC-POSならば、なんらPC-POSを推進する意味がなくなります。そのため、OSも一般的に技術開示されたもので尚且つLANで結び付けられるものに限定したいのです。
それをもとに定義しますと「パソコンハードと一般的なパソコンOSを用いたPOS(販売時点情報管理)システム」ということになります。
注)POSの流れの中でFlexOSでシステムを構築する流れもありますが、私はこのOSを使用したPOSはPCーPOSの範疇には入らないと考えている。なぜならばFlexOS自体がパソコンの世界では使われてはおらず、POS業界の中だけでもてはやされているOSだからである。FlexOSをオープンPOSといってレジ業界の中では新鮮には見えても、より大きな流れのパソコンの分野から見るとレジ業界の中だけのOSに成り下がってみえる。レジ業界の中だけでオープン化を叫ぶのではなく、より広い範囲でシステムを構築することの方が、本当の意味でオープン化といえるでありましょう。
今なぜPCーPOSなのか?
「今なぜPCーPOSなのか?」という問いに対して「日本は今までなぜPCーPOSでなかったのか?」という疑問が起きます。
専用POSとパソコンの関係は、ワープロとパソコンの関係によく似ています。
ワープロは文章を書く専用機で、単に文章を書くだけならば十分に役に立ちます。しかし計算したり、データの互換性を考えたり、他での用途を考え始めるとどうしても専用機の欠点がにじみ出てきます。
パソコンは逆に最初から用途が決まっていません。中に組込むソフトによって用途が決まります。そのためソフトを選択することによって幅広い用途に答えることが出来ます。
ワープロとパソコンの結果はどうだったでしょうか?
90年度は、ワープロ276万台、パソコン258万台でワープロの方がリードしていました。しかし、94年度はワープロ211万台(前年比5%ダウン)、パソコン360万台(前年比47%アップ)となりパソコンが圧勝の状態です。
しかもワープロはパソコンよりも常に20%安く販売されていました。その結果によって起きた結果です。
専用POSとPCーPOSの関係はどうでしょうか?
専用POSも売上を集計する専用機で、単にレジとして使うだけならば十分に役に立ちます。しかし、その計算を分析したり、データの互換性を考えたり、少しでも他での用途を考え始めるとワープロと同じ結果になります。
しかも専用POSはワープロとは逆にパソコンより20%以上価格が高めに設定されています。
現在の専用POSとPCーPOSの比率は95:5ぐらいです。この関係は私の予測で4~5年先には50:50までPCーPOSのシェアが増えていくと考えています。
それは今から述べる考えの下に推測しています。
50%を超える海外のPC-POS
もともとPOSのPCーPOS化の流れは、アメリカやヨーロッパ、アジア諸国からきています。海外に行かれた方ならご覧になった方もいるかもしれませんが、日本以外の国ではコンピュータのキーボードとディスプレイを見ながらパソコンでカウンター業務を行うことが一般化しています。
別にPOSがレジの形をしていなければいけないのではないのです。パソコンそのものをレジ代わりに自由に使っています。
日本以外の国々ではPOSレジとパソコンの区別がないように思われます。そのためかアメリカではPC-POSの比率がすでに50%を超えています。町中の専門店では見るお店のほとんどがPCーPOSになっており、10~14インチぐらいのディスプレイとキーボードがカウンターの上に置かれていて使用されています。
通常はディスクトップ型のパソコンがカウンターの下に置かれているのですが、なかにはタワー型の大きなパソコンがカウンターの下に置かれている店さえあります。
逆にレジを使っているようなお店は、在庫も商品管理も必要のない売り上げだけがわかればいいような小さなお店なのです。
衣料品店でちょっとした買い物をしますと、店員が「会員カードを作りますから電話番号を教えてくれ」などと聞いてきます。新しいお客が来ますと会員登録するのがあたりまえの世界です。
またちょっとしゃれた店になると、ディスプレイがカウンターの下のガラスの中に治まっていて邪魔にならないようになっています。そんな風景が至るところで見られます。
もともとキーボードになれている人種だからでしょうか?。何の違和感もなくパソコンを使ってお店の業務をこなしています。
PC-POSといいますと、なにか大変なものに思われがちですが、今や海外では一般的なものになっています。
メーカの中でも起こる世代交代
従来POSメーカーと呼ばれる国内メーカーからもすでに多くのPC-POSシステムが発表されています。
つい数年前までPOSメーカーでは、従来型の専用POSしか出していませんでしたが、ここ1~2年の間にほぼ全メーカーがパソコンをベースにしたPCーPOSの発表を完了しました。それらの機種はレジの形をしたものから液晶のディスプレイの形をしたものまで様々であります。
私の記憶では国内で一番最初にPCーPOSを発表したのは日本AT&T情報システム(元NCRを含む)です。94年の晴海のSAショーで「WinPos」が紹介されました。
その後95年春に東京晴海で開かれたSAショーでは、今までPOSメーカーと呼ばれる会社からコンピュータメーカーと呼ばれる会社まで一斉にPC-POSシステムの展示をおこなっています。
主なものに富士通が「TermPOS」、TECがオープンPOSとして「ShopWorks」、ともにDOS/Vと呼ばれるPC/AT互換機の仕様のPCーPOSです。NECは「TWINPOS」というPC98互換のPOSを発表しています。
そのほか、セイコーエプソン、IBM、日立、シャープ、三洋電気、カシオ等、また海外ではドイツのシーメンス、シンガポールのIPC、国内でPOSを出しているほとんどのメーカーがPCーPOSとしてOSにMS-DOSやWINDOWS(一部OS/2もある)が使えるという名目の元に発表しています。
各社戦略はPCーPOSを専門店だけに的を絞ってPCーPOSを出してきているメーカーや、専門店から量販店まで幅広く導入出来るように考えているメーカーまで様々です。
しかしその流れは確実に専用POSからPCーPOSに移り変わってきています。
メーカー名 商品名
IBM
日本電気 TWINPOS
富士通 TermPOS
TEC ShopWorks
日立 5700シリーズ
AT&T情報システム WinPOS
シャープ RZ-A300
セイコーエプソン IT
三洋電気 RETAIL TERMINAL
シーメンス BEETLE
部品調達による値段の違い
メーカーがPCーPOS製造に乗り出したのは大きな理由があります。
まず、POS製造における部品調達コストの違いです。
PC-POSと専用POSに大きな違いが出るのは、制御部分(基盤部分)の部品調達コストであります。流通業でのPOSのマーケットは年間十万台であり、パソコンのマーケットは数百万台のマーケットであり、一桁数字が違います。
パソコンの制御部分(マザーボード)は、各パソコンメーカーのほとんど共通部品になりつつあり、各社が同じボードを使用してパソコンの組み立てをおこなっています。そのため部品として基盤を製造する数は数十万台になり、量産効果によって低価格を維持することが可能になります。
前に紹介したメーカー系PC-POSのほとんどが、こうしたパソコンで開発したマザーボードを使用し、独自の開発コストや製造コストがかかることを最小限に押さえています。
しかし、専用POSの制御部分はほとんどが自社開発で開発コストも製造コストもかかってしまいます。そして生産する数も各メーカーに別れて作るため多いメーカでも2~5万台の規模であります。
このためPC-POSにくらべ専用POSの方がどうしても割高になってしまうのです。
性能の違い
同様に技術面においても同じことがいえます。パソコンは数百万台の規模で生産するため開発費も早いテンポで消化されていきます。また競争も激しいためによりすぐれたものが次々に開発されています。
そのパソコンで新しく開発された部品をPC-POSに調達することにより、最新の技術がPOSに繁栄していくことになります。
方や専用POSは1度開発されたものは最低2~3年は販売し続けていくことになります。そのため開発して2~3年経った専用POSはPCーPOSと比較して、技術的にも性能的にも大きな性能の差が出ていくことになります。
ソフトの違い
PCーPOSの場合は、世間一般的に販売・使用しているOSを用いるためより多くの人間がPC-POSのシステムを理解することができます。
そのためPCーPOSで販売したデータを123やEXCELでグラフにして見たりすることが比較的容易に出来ます。
そのシステムを開発するプログラムは、一般的な言語を用いるため、多くのプログラマやコンピュータ会社がシステムの構築を競いあうことも可能になります。
そしてパソコン、標準OSという共通のプラットホームによって、他メーカー同士のシステムも結び付きやすくなってきます。
方や専用POSは当然のことながら制御部分を独自に開発するため、その制御するOSもプログラムする言語(通常「レジ言語」と呼ばれる)も独自に開発しなければなりませんでした。
そのためシステムの増設や改良などに関してはそのPOSメーカーの人間にしか相談できず、古い機種になればそのメーカーの人間にさえわからなくなってしまうこともあります。
結論、PC-POSのメリットは
ハードの価格が安く押さえられる
最新のパソコン技術の応用ができる
情報端末として利用できる
周辺機器の選択の余地が広い
それ自体がコンピュータのためデータの分析が可能
他のPCーPOS、パソコンとの接続、データの互換が容易
豊富な市販のアプリケーションが使用が可能(データーベース、表計算等)
システムの開発が容易
このようにPCーPOSには、専用POSにない大きなメリットがあります。そのためメーカーとしてもPOSの制御部分を独自に開発しますよりも、パソコンの制御部分を購入してPOSを構築したほうが数段安く、尚且つ技術的にも最新鋭の技術を供与できる時代になってきました。
これらすべての理由により専用POSからPCーPOSに移っていくと考えられます。
PCーPOSを動かす環境
では、どのような環境のもとでPCーPOSが構築され動いていくのでしょうか。
PCーPOSを動かすハード的な環境は先程述べたようにずいぶん整ってきました。またハードを動かすそのアプリケーションソフトも徐々に増えつつあります。
その中でも現在もっとも多いのはMS-DOS上で動くソフトです。
MS-DOSはパソコンでもっとも普及しているOS(オペレーションシテム)であり、もっとも一般的です。しかし同じOSであるにもかかわらずパソコンの機種が違えば内容も異なる不統一のOSでもありました。
そのためPCーPOSのソフトもMS-DOS上で動くソフトが多く出ていますが、各パソコンでしか動かない固有のソフトになってしまいました。
時代の流れはMS-DOSからWINDOWSへ
パソコンの世界ではMS-DOSからWINDOWSに移りつつあります。ここにきてその加速度はますます早くなってきました。
WINDOWS上でソフトは、MS-DOSに比べてハードのスピードやメモリが非常に多く必要で、動きが遅いソフトではあります。しかしここにきてハードの急速な低価格か、スピードの向上がそれらの欠点をカバーしつつあります。
また、95年8月にWINDOWS95の英語版が発売されて、その環境での動作が当たり前になるような雰囲気造りが成されています。この動きはPOS業界だけではなく金融から家庭までに浸透しそうな勢いです。
流通業の業務上のアプリケーションソフトに関しても例外ではありません。
ソフトウエアのハード互換性
MS-DOSの世界では、メーカーが違えばソフトは互換性がありませんでした。NECパソコン向けのソフトは富士通のパソコンでは動かなかったのです。
もとから業務用のアプリケーションはワープロソフトや表計算等の一般アプリケーションソフトなどと比べ売れる数が少なくなります。それに加えソフトが動くメーカーに限定をかけていたのではますます売れる数は少なくなります。そのためソフトハウスがいくら良いソフトを開発しても元から狭い業界の、また狭いメーカの範囲でしか販売が出来なくなります。
それがWINDOWSに移行することによって、ハードメーカの境がなくなります。元々狭い業界ではありますが、ハードメーカーに境がなくなったことでいろいろなハードを選択することが可能になり、ソフトも選択する余地が出てきます。
ソフトの操作性の統一
WINDOWSそのものの操作性は流通業のような業種向けアプリケーションにとっては決して使い易いものですとは思いません。だとすれば、なぜWINDOWSが今後の流通業向けアプリケーションの主力になるのでしょうか。
MS-DOSの世界では、画面のレイアウトやキーボードの設定も自由でした。そのため各ソフトによって操作性もまちまちで、「どのキーでカーソルが動くのか?」、「どのキーを押しましたら終了するのか?」等、慣れるまではマニュアルが必需品でした。
WINDOWSには、画面の設計においてルールがあります。このことは操作をする側からは非常に便利になります。「どのキーでカーソルが動くのか?」、「どのキーを押しましたら終了するのか」(ほとんどマウスの操作になりますが)は、どのソフトも操作性が共通で、一度慣れてしまえばほとんどマニュアルなしで操作できます。
ただ、この操作性は流通業の中だけで共通になるのではなく、ワープロやゲームの世界まで幅広く共通の世界になってしまうので、流通業やレジ単独の世界から見れば、余計な考慮をしている分だけ勝手が違うように見えます。
フォントの使用
これは後半で詳しく述べますが、フォントが自由に使用できることは流通業では非常にメリットがあります。
流通業ではPOPや商品のアピールをするポスター等を多く見かけます。これらをお店で手書きで作成しますとなりますと結構時間がかかります。
WINDOWSにフォントが使用できるようになったことで、これらのPOP等をパソコンを使って自由に作成することが出来るようになりました。
文字を大きくしたり、POP書体等いろいろな書体を使ったりして、カラープリンタやカッティングマシンを使って、簡単に安く作れるようになりました。
WINDOWSのこのような使い方は、パソコン1台をいろいろな用途に使い回しが出来ることを示しています。
たとえば、昼間はPOSとして使用していたパソコンを、よる業務が終わりましたら表計算の123やEXCELを使っててグラフを出し分析を行い、セールの前の日はチラシのPOPの打ち出しに使う。などといった 1 台何役かの機能を持たせることはいとも簡単に出来ます。
以上今回はパソコンを使ったPCーPOSの環境や概略、今後を説明しましたが、次回は具体的にPCーPOSを使ったシステムの構築、PCーPOSの紹介を行いたいと思います。
注)OLE POS技術協議会の発足
95年7月19日にPOSシステムの標準化を推進する団体として「OLE POS技術協議会」( Object Linking & Enbedding )が発足された。
これはマイクロソフト社が中心に同社のOSであるWINDOWS( ver3.1 、 95 、NT)を用いてPOSシステムを構成する関連機器・設備に関わるインターフェイスの標準化を行うのが目的である。
OLE自体はマイクロソフト社がオブジェクトプログラミング技術「OLEコントロール」として流通業だけでなく金融業等も包括する戦略的な標準化の流れである。
95年8月現在ハードメーカーを中心とする幹事会員11社と周辺機器メーカー・ソフトハウスが参加する一般会員94社が参加している。
これによりパソコンをベースにした高性能POSの多目的利用を促進させるソフトが一段と加速されていくものと思われる。
ここ近年コンピュータの進歩はとても激しいものがあります。それに伴い、これらのシステム機器もダウンサイジングと呼ばれる通り、急激に値下がりしています。
その中でもパソコンの進歩は目覚ましいものがあり、実際にパソコンに携わる我々でさえ情報紙や新聞、カタログなど目が離せない状況にあります。これはとても喜ばしいことであり、スピードや性能の向上、価格の低下は、今までに予算的に、または技術に出来なかったことを可能にし、新しい展望が見えてきました。
これだけ身近に近づいてきたパソコンの進歩を見逃すことはないでしょう。「どうにかしてパソコンを流通業の中で有効に利用は出来ないだろうか」と、考えた企画が今回の「流通業のパソコンを使った情報戦略」であります。
私共が目標としている今回の大きなテーマは、パソコンという非常に優れたツールを、店舗の中にに持ち込むことによって、どれだけ店舗の収益を伸ばせるか、どれだけ店舗の効率をアップできるか、ということです。
ただし、店舗にせっかく便利なシステムを導入したとしても、何千~ン百万も費用をかけていたのでは、伸ばした収益も全部システム費用にとられてしまうことになります。
そのため、今まで何千~ン百万もかかっていた費用を、一桁もしくは半額にさげて実行できるようなシステム作り、数百~ン十万の世界で可能なパソコンの世界を読者の皆さんに提供できれば、と考えています。これでこそ私共が目的にしてるローコスト、高収益の世界なのです。
目次
パソコンの進歩が流通業を巻き込む
PC-POSとは?(PCーPOSの定義)
今なぜPCーPOSなのか?
50%を超える海外のPC-POS
メーカの中でも起こる世代交代
部品調達による値段の違い
性能の違い
ソフトの違い
結論、PC-POSのメリットは
PCーPOSを動かす環境
時代の流れはMS-DOSからWINDOWSへ
ソフトウエアのハード互換性
ソフトの操作性の統一
注)OLE POS技術協議会の発足
第1回 PC-POS構築法
パソコンの進歩が流通業を巻き込む
「パソコンはソフトがなければただの箱」という言葉があります。しかしこの言葉の裏には「パソコンはソフトを組み込むことによって大きな可能性を持っている」と言う意味が必然的に含まれています。
事実、適切なソフトを付加されたパソコンは、そのソフトの内容によって大きな仕事をこなしていきます。そのハード、ソフト性能の向上は,ますますその範囲を広げています。
流通業の中でもパソコンがいろいろな分野に使われるようになりました。しかし、まだまだワープロや表計算などといった一般的な使用のとどまっていることが多く、流通業の本流を支えるような業務の中で使われるケースはまだ少ないようです。
その理由は、2つあります。
POSなど流通業向けシステムは、いままで特殊な環境の中で使用されおり、今でもその傾向が強く残っている。
流通業向けPCアプリケーションの紹介がいままで余りされてこなかった
私は決して流通業向けシステムは特殊だとは思っていません。確かに形はレジの形をしていた方が一般受けが良いことは事実です。しかし中身は決して特殊な処理をしているわけではありません。パソコンで出来ない処理はほとんどありません。そのためパソコンであっても良いはずです。
それに答えるかのように最近はレジの形をしたパソコンも、POSメーカーから出てきました。
また、PCアプリケーションもPCーPOSやEOS、在庫管理、顧客管理、販売促進、等のソフトが今から増えていくことでしょう。そうなると流通業務を1台のパソコンまたはLANによる複数パソコンで業務をこなしていくことが可能になります。
そのため、私はもっと流通業の本流、重要なところでパソコンそのものを使っていってもいいのではないかと考えています。
その中でも大きく注目しなくてはいけないのがPCーPOSです。専用POSからPCーPOSに変えることによって、一方方向に売上を吸い上げる売上登録集計機から、総方向に情報を分析できる情報端末に変身します。
PCーPOSは、そういう意味で流通業の中でいろいろな可能性を秘めています。ソフトの開発によっていろいろな業務をこなしていくことが十分出来ます。
またそれに伴う流通業向けのパソコンパッケージソフトも、いろいろなソフトハウスから出てきました。これらを駆使することにPOS業務自体もPCーPOSを使って出来そうです。
今までこれらのソフトはなかなか紹介される機会が有りませんでした。POS自体、紹介の機会は少なく、私が知っている限り1年に一回開かれるSAショーぐらいです。しかしSAショーの中でもソフトが紹介されるとは限りません。
今回は、こうしたPCーPOSを中心に、その有効性と使い方を概略、機能をもとに説明していきたいと思っています。
PC-POSとは?(PCーPOSの定義)
PC-POSはおおざっぱに言えば「パソコンをつかったPOS」と解釈してもいいと思います。しかし私はどちらかとえいば「パソコン&POS」と考えています。なぜかというとパソコンはパソコン自体としても使えるし、POSにもなると考えているからです。
パソコンは、本来のパソコンとして使い方、ワープロや表計算等に使う用途とPCーPOSとしての使い方が流通業の中では考えられます。
しかし、PC-POSという言葉は、もう少し厳密に定義して置く必要があるでしょう。というのも、現在私が知る限りもう少し深い意味が存在するからです。
POSは「Point Of Sale」、日本語に直しますと「販売時点情報管理システム」です。
PCは「パソコン」の略称です。しかし、PC-POSの「PC(パソコン)」の部分については、ハードだけを指すのではなく、ソフトも含んだ厳密な定義が必要だと思います。
PC-POSの「PC」とは、パソコンのハード部分のことだけを指すのではなく、その中で動く一般的なパソコンOS(オペレーションシステム)で動くもの、としたい。つまりMS-DOSやWINDOWS(95を含む)、WINDOWSNT、OS-2、等のパソコン系一般OSを含んでいる事を前提条件としたいと考えます。
なぜならば、POSをPC-POSに置き換える大前提は、POSシステムのオープン化の流れに基づくものであり、一般化された技術の中で、誰でもがPOSのデータの加工やプログラミングが可能で、なおかつ、どのようなPOSもパソコンもLANや通信で結び付けられるものでなければならない、と考えるからです。
これらの処条件がまかなえないようなPC-POSならば、なんらPC-POSを推進する意味がなくなります。そのため、OSも一般的に技術開示されたもので尚且つLANで結び付けられるものに限定したいのです。
それをもとに定義しますと「パソコンハードと一般的なパソコンOSを用いたPOS(販売時点情報管理)システム」ということになります。
注)POSの流れの中でFlexOSでシステムを構築する流れもありますが、私はこのOSを使用したPOSはPCーPOSの範疇には入らないと考えている。なぜならばFlexOS自体がパソコンの世界では使われてはおらず、POS業界の中だけでもてはやされているOSだからである。FlexOSをオープンPOSといってレジ業界の中では新鮮には見えても、より大きな流れのパソコンの分野から見るとレジ業界の中だけのOSに成り下がってみえる。レジ業界の中だけでオープン化を叫ぶのではなく、より広い範囲でシステムを構築することの方が、本当の意味でオープン化といえるでありましょう。
今なぜPCーPOSなのか?
「今なぜPCーPOSなのか?」という問いに対して「日本は今までなぜPCーPOSでなかったのか?」という疑問が起きます。
専用POSとパソコンの関係は、ワープロとパソコンの関係によく似ています。
ワープロは文章を書く専用機で、単に文章を書くだけならば十分に役に立ちます。しかし計算したり、データの互換性を考えたり、他での用途を考え始めるとどうしても専用機の欠点がにじみ出てきます。
パソコンは逆に最初から用途が決まっていません。中に組込むソフトによって用途が決まります。そのためソフトを選択することによって幅広い用途に答えることが出来ます。
ワープロとパソコンの結果はどうだったでしょうか?
90年度は、ワープロ276万台、パソコン258万台でワープロの方がリードしていました。しかし、94年度はワープロ211万台(前年比5%ダウン)、パソコン360万台(前年比47%アップ)となりパソコンが圧勝の状態です。
しかもワープロはパソコンよりも常に20%安く販売されていました。その結果によって起きた結果です。
専用POSとPCーPOSの関係はどうでしょうか?
専用POSも売上を集計する専用機で、単にレジとして使うだけならば十分に役に立ちます。しかし、その計算を分析したり、データの互換性を考えたり、少しでも他での用途を考え始めるとワープロと同じ結果になります。
しかも専用POSはワープロとは逆にパソコンより20%以上価格が高めに設定されています。
現在の専用POSとPCーPOSの比率は95:5ぐらいです。この関係は私の予測で4~5年先には50:50までPCーPOSのシェアが増えていくと考えています。
それは今から述べる考えの下に推測しています。
50%を超える海外のPC-POS
もともとPOSのPCーPOS化の流れは、アメリカやヨーロッパ、アジア諸国からきています。海外に行かれた方ならご覧になった方もいるかもしれませんが、日本以外の国ではコンピュータのキーボードとディスプレイを見ながらパソコンでカウンター業務を行うことが一般化しています。
別にPOSがレジの形をしていなければいけないのではないのです。パソコンそのものをレジ代わりに自由に使っています。
日本以外の国々ではPOSレジとパソコンの区別がないように思われます。そのためかアメリカではPC-POSの比率がすでに50%を超えています。町中の専門店では見るお店のほとんどがPCーPOSになっており、10~14インチぐらいのディスプレイとキーボードがカウンターの上に置かれていて使用されています。
通常はディスクトップ型のパソコンがカウンターの下に置かれているのですが、なかにはタワー型の大きなパソコンがカウンターの下に置かれている店さえあります。
逆にレジを使っているようなお店は、在庫も商品管理も必要のない売り上げだけがわかればいいような小さなお店なのです。
衣料品店でちょっとした買い物をしますと、店員が「会員カードを作りますから電話番号を教えてくれ」などと聞いてきます。新しいお客が来ますと会員登録するのがあたりまえの世界です。
またちょっとしゃれた店になると、ディスプレイがカウンターの下のガラスの中に治まっていて邪魔にならないようになっています。そんな風景が至るところで見られます。
もともとキーボードになれている人種だからでしょうか?。何の違和感もなくパソコンを使ってお店の業務をこなしています。
PC-POSといいますと、なにか大変なものに思われがちですが、今や海外では一般的なものになっています。
メーカの中でも起こる世代交代
従来POSメーカーと呼ばれる国内メーカーからもすでに多くのPC-POSシステムが発表されています。
つい数年前までPOSメーカーでは、従来型の専用POSしか出していませんでしたが、ここ1~2年の間にほぼ全メーカーがパソコンをベースにしたPCーPOSの発表を完了しました。それらの機種はレジの形をしたものから液晶のディスプレイの形をしたものまで様々であります。
私の記憶では国内で一番最初にPCーPOSを発表したのは日本AT&T情報システム(元NCRを含む)です。94年の晴海のSAショーで「WinPos」が紹介されました。
その後95年春に東京晴海で開かれたSAショーでは、今までPOSメーカーと呼ばれる会社からコンピュータメーカーと呼ばれる会社まで一斉にPC-POSシステムの展示をおこなっています。
主なものに富士通が「TermPOS」、TECがオープンPOSとして「ShopWorks」、ともにDOS/Vと呼ばれるPC/AT互換機の仕様のPCーPOSです。NECは「TWINPOS」というPC98互換のPOSを発表しています。
そのほか、セイコーエプソン、IBM、日立、シャープ、三洋電気、カシオ等、また海外ではドイツのシーメンス、シンガポールのIPC、国内でPOSを出しているほとんどのメーカーがPCーPOSとしてOSにMS-DOSやWINDOWS(一部OS/2もある)が使えるという名目の元に発表しています。
各社戦略はPCーPOSを専門店だけに的を絞ってPCーPOSを出してきているメーカーや、専門店から量販店まで幅広く導入出来るように考えているメーカーまで様々です。
しかしその流れは確実に専用POSからPCーPOSに移り変わってきています。
メーカー名 商品名
IBM
日本電気 TWINPOS
富士通 TermPOS
TEC ShopWorks
日立 5700シリーズ
AT&T情報システム WinPOS
シャープ RZ-A300
セイコーエプソン IT
三洋電気 RETAIL TERMINAL
シーメンス BEETLE
部品調達による値段の違い
メーカーがPCーPOS製造に乗り出したのは大きな理由があります。
まず、POS製造における部品調達コストの違いです。
PC-POSと専用POSに大きな違いが出るのは、制御部分(基盤部分)の部品調達コストであります。流通業でのPOSのマーケットは年間十万台であり、パソコンのマーケットは数百万台のマーケットであり、一桁数字が違います。
パソコンの制御部分(マザーボード)は、各パソコンメーカーのほとんど共通部品になりつつあり、各社が同じボードを使用してパソコンの組み立てをおこなっています。そのため部品として基盤を製造する数は数十万台になり、量産効果によって低価格を維持することが可能になります。
前に紹介したメーカー系PC-POSのほとんどが、こうしたパソコンで開発したマザーボードを使用し、独自の開発コストや製造コストがかかることを最小限に押さえています。
しかし、専用POSの制御部分はほとんどが自社開発で開発コストも製造コストもかかってしまいます。そして生産する数も各メーカーに別れて作るため多いメーカでも2~5万台の規模であります。
このためPC-POSにくらべ専用POSの方がどうしても割高になってしまうのです。
性能の違い
同様に技術面においても同じことがいえます。パソコンは数百万台の規模で生産するため開発費も早いテンポで消化されていきます。また競争も激しいためによりすぐれたものが次々に開発されています。
そのパソコンで新しく開発された部品をPC-POSに調達することにより、最新の技術がPOSに繁栄していくことになります。
方や専用POSは1度開発されたものは最低2~3年は販売し続けていくことになります。そのため開発して2~3年経った専用POSはPCーPOSと比較して、技術的にも性能的にも大きな性能の差が出ていくことになります。
ソフトの違い
PCーPOSの場合は、世間一般的に販売・使用しているOSを用いるためより多くの人間がPC-POSのシステムを理解することができます。
そのためPCーPOSで販売したデータを123やEXCELでグラフにして見たりすることが比較的容易に出来ます。
そのシステムを開発するプログラムは、一般的な言語を用いるため、多くのプログラマやコンピュータ会社がシステムの構築を競いあうことも可能になります。
そしてパソコン、標準OSという共通のプラットホームによって、他メーカー同士のシステムも結び付きやすくなってきます。
方や専用POSは当然のことながら制御部分を独自に開発するため、その制御するOSもプログラムする言語(通常「レジ言語」と呼ばれる)も独自に開発しなければなりませんでした。
そのためシステムの増設や改良などに関してはそのPOSメーカーの人間にしか相談できず、古い機種になればそのメーカーの人間にさえわからなくなってしまうこともあります。
結論、PC-POSのメリットは
ハードの価格が安く押さえられる
最新のパソコン技術の応用ができる
情報端末として利用できる
周辺機器の選択の余地が広い
それ自体がコンピュータのためデータの分析が可能
他のPCーPOS、パソコンとの接続、データの互換が容易
豊富な市販のアプリケーションが使用が可能(データーベース、表計算等)
システムの開発が容易
このようにPCーPOSには、専用POSにない大きなメリットがあります。そのためメーカーとしてもPOSの制御部分を独自に開発しますよりも、パソコンの制御部分を購入してPOSを構築したほうが数段安く、尚且つ技術的にも最新鋭の技術を供与できる時代になってきました。
これらすべての理由により専用POSからPCーPOSに移っていくと考えられます。
PCーPOSを動かす環境
では、どのような環境のもとでPCーPOSが構築され動いていくのでしょうか。
PCーPOSを動かすハード的な環境は先程述べたようにずいぶん整ってきました。またハードを動かすそのアプリケーションソフトも徐々に増えつつあります。
その中でも現在もっとも多いのはMS-DOS上で動くソフトです。
MS-DOSはパソコンでもっとも普及しているOS(オペレーションシテム)であり、もっとも一般的です。しかし同じOSであるにもかかわらずパソコンの機種が違えば内容も異なる不統一のOSでもありました。
そのためPCーPOSのソフトもMS-DOS上で動くソフトが多く出ていますが、各パソコンでしか動かない固有のソフトになってしまいました。
時代の流れはMS-DOSからWINDOWSへ
パソコンの世界ではMS-DOSからWINDOWSに移りつつあります。ここにきてその加速度はますます早くなってきました。
WINDOWS上でソフトは、MS-DOSに比べてハードのスピードやメモリが非常に多く必要で、動きが遅いソフトではあります。しかしここにきてハードの急速な低価格か、スピードの向上がそれらの欠点をカバーしつつあります。
また、95年8月にWINDOWS95の英語版が発売されて、その環境での動作が当たり前になるような雰囲気造りが成されています。この動きはPOS業界だけではなく金融から家庭までに浸透しそうな勢いです。
流通業の業務上のアプリケーションソフトに関しても例外ではありません。
ソフトウエアのハード互換性
MS-DOSの世界では、メーカーが違えばソフトは互換性がありませんでした。NECパソコン向けのソフトは富士通のパソコンでは動かなかったのです。
もとから業務用のアプリケーションはワープロソフトや表計算等の一般アプリケーションソフトなどと比べ売れる数が少なくなります。それに加えソフトが動くメーカーに限定をかけていたのではますます売れる数は少なくなります。そのためソフトハウスがいくら良いソフトを開発しても元から狭い業界の、また狭いメーカの範囲でしか販売が出来なくなります。
それがWINDOWSに移行することによって、ハードメーカの境がなくなります。元々狭い業界ではありますが、ハードメーカーに境がなくなったことでいろいろなハードを選択することが可能になり、ソフトも選択する余地が出てきます。
ソフトの操作性の統一
WINDOWSそのものの操作性は流通業のような業種向けアプリケーションにとっては決して使い易いものですとは思いません。だとすれば、なぜWINDOWSが今後の流通業向けアプリケーションの主力になるのでしょうか。
MS-DOSの世界では、画面のレイアウトやキーボードの設定も自由でした。そのため各ソフトによって操作性もまちまちで、「どのキーでカーソルが動くのか?」、「どのキーを押しましたら終了するのか?」等、慣れるまではマニュアルが必需品でした。
WINDOWSには、画面の設計においてルールがあります。このことは操作をする側からは非常に便利になります。「どのキーでカーソルが動くのか?」、「どのキーを押しましたら終了するのか」(ほとんどマウスの操作になりますが)は、どのソフトも操作性が共通で、一度慣れてしまえばほとんどマニュアルなしで操作できます。
ただ、この操作性は流通業の中だけで共通になるのではなく、ワープロやゲームの世界まで幅広く共通の世界になってしまうので、流通業やレジ単独の世界から見れば、余計な考慮をしている分だけ勝手が違うように見えます。
フォントの使用
これは後半で詳しく述べますが、フォントが自由に使用できることは流通業では非常にメリットがあります。
流通業ではPOPや商品のアピールをするポスター等を多く見かけます。これらをお店で手書きで作成しますとなりますと結構時間がかかります。
WINDOWSにフォントが使用できるようになったことで、これらのPOP等をパソコンを使って自由に作成することが出来るようになりました。
文字を大きくしたり、POP書体等いろいろな書体を使ったりして、カラープリンタやカッティングマシンを使って、簡単に安く作れるようになりました。
WINDOWSのこのような使い方は、パソコン1台をいろいろな用途に使い回しが出来ることを示しています。
たとえば、昼間はPOSとして使用していたパソコンを、よる業務が終わりましたら表計算の123やEXCELを使っててグラフを出し分析を行い、セールの前の日はチラシのPOPの打ち出しに使う。などといった 1 台何役かの機能を持たせることはいとも簡単に出来ます。
以上今回はパソコンを使ったPCーPOSの環境や概略、今後を説明しましたが、次回は具体的にPCーPOSを使ったシステムの構築、PCーPOSの紹介を行いたいと思います。
注)OLE POS技術協議会の発足
95年7月19日にPOSシステムの標準化を推進する団体として「OLE POS技術協議会」( Object Linking & Enbedding )が発足された。
これはマイクロソフト社が中心に同社のOSであるWINDOWS( ver3.1 、 95 、NT)を用いてPOSシステムを構成する関連機器・設備に関わるインターフェイスの標準化を行うのが目的である。
OLE自体はマイクロソフト社がオブジェクトプログラミング技術「OLEコントロール」として流通業だけでなく金融業等も包括する戦略的な標準化の流れである。
95年8月現在ハードメーカーを中心とする幹事会員11社と周辺機器メーカー・ソフトハウスが参加する一般会員94社が参加している。
これによりパソコンをベースにした高性能POSの多目的利用を促進させるソフトが一段と加速されていくものと思われる。

- [1996/01/01 01:14]
- (1996年)ストアシステムはパソコンPOSで構築せよ!! |
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