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第3話 「ストアシステムはパソコンPOSで構築せよ!!」  

1996/07 雑誌ストアシステム連載

前々回PC―POSの概要。前回目的別のPC―POSの構築をお話しましたが今回は具体的なPC―POSの利用例を考えていきたいと思います。
その前になぜ今PC―POSでないと駄目なのか?。それは現在の流通業のあり方に原点があります。流通業のこの実態を把握することが、PC―POSの利用法を具体的に構築する近道なのです。

流通業の問題点を把握し、その解決をPC―POSに求めることが、PC―POSの有効な利用につながり、個々の店舗の活性化につながると考えます。



価格破壊が流通業を駄目にする

価格破壊の対抗策は情報サービスだ

情報化の中にも2種類ある

戦略的情報化とは?

戦略的情報化の本命(ポイントカード)

ポイントカードのメリット

どうせ値引くならポイントで値引け!

あなたは何枚カードを持ち歩けますか?

ポイントカードは諸刃の剣、持ち歩かせることが一番難しい

ポイントカード活用例(ヨドバシカメラ)


価格破壊が流通業を駄目にする
今現在日本の流通業は価格破壊と呼ばれる価格競争に夢中である。マスコミも安い価格の競争はこぞって取り上げ、価格の競争をしなければこの社会を生き残れないような錯覚が蔓延しています。

本当に価格競争がお店の生き残りにはベストな方法でしょうか?自由競争社会の中で、価格競争は他店との差別化において重要な要素であり、勝ち残るためには必要な手段でもあります。しかし現在のやり方で価格破壊を続けると、最後には誰も勝ち残れない状況が目前に迫ってきているのではないでしょうか。

価格破壊の上での倒産も増えてきています。大型店の進出によって地域の価格体系が崩れ、顧客が大型店に集中する時代になってきています。しかし,そうだからといって大型店と格段に体力の違う中小のお店や商店街が、価格の競争だけで対抗するのは無謀ともいえます。

今の価格破壊の現状は、集客の宣伝効果だけをねらって、原価を無視し、赤を切ってでも商品を安く見せかけるチラシや宣伝が多く見うけられます。以前ならばそれでも別な商品をお客様が購入することによって赤を切った商品の穴埋めをすることができました。しかし、現在の消費者はそのチラシ商品だけをねらって購入するお客様が非常に増え、大型店でさえチラシを入れると赤字になってしまうお店が増えているのです。

あるホームセンターの現場担当者は、年初の会合でこのようにいっていました。「今年度の売上目標を前年度の230億円から255億円に増やすシュミレーションを描いたところ、前年度は黒字だったものが、今年度は赤字に転落するという結果が出てしまった」と。

これを聞いたときに、私はいささかショックでした。大型店の場合、集客効果によってチラシの赤字は十分に吸収できるものと考えていたためです。現在の価格破壊は大型店でさえ売上を伸ばすことが容易ではなくなっているのが実状です。いや売上を伸ばすことは容易なのですが、それにもとづいて利益を伸ばしていくことが不可能になってきたのです。

担当者いわく「お客かチラシ商品だけを目的に来店するため、チラシをまけばまくほど赤字になってしまう」と。チラシを入れると当然のことながら商品は売れていきますが、利益という実態の伴わない売上だけが上がっていく結果になります。

このように大型店ですら価格破壊の現状に行き詰まっているのに中小のお店が追随したらどうなるでしょうか。大型店は体力がまだあるので多少の赤字には我慢できても、中小のお店や商店街が同じ事を行ったら先はすぐにみえてきます。

このように行き詰まりっている流通業に必要なものは、より一層の価格の競争ではないと私は考えます。確かにお客様は価格が安い方がいいに決まっていますが、ただ安いだけでは、お店の体力も虫食まれていきます。また安さにサービスがついていかなければ、かえって宣伝効果はマイナスです。それこそ安い商品だけを買いあさり、お店には何のメリットもないお客様の団体がお店を虫食む結果になります。


価格破壊の対抗策は情報サービスだ
このままでは行き詰まりの見えている流通業において、価格破壊に対する中小のお店、商店街のカンフル剤はお客様に対する情報サービスの強化です。

先ほども言いましたが、たしかに商品の値段が安いにこした事はありません。しかしながらお客様が本当に安さだけを求めているのでしょうか?

物の安さだけを求める時代はそろそろ終わりだと私は信じています。それはなぜかといいますと、物の安さだけを求めた場合、お店自身がやっていけない時代に突入しているからです。

物の安さだけで競争できなくなったならば、何で競争していけばいいのでしょうか。それはお客様に対する情報サービスです。それも金銭の安さだけを前面に押し出すのではなく、お客様に対する便利性、情報を武器にした付加価値が、大きな宣伝、集客、売上のアップ、売上の維持に結びつくのです。

「サービスなんて古くからある物だしそんなことはとっくに考えているよ」なんていわれる読者もあるかもしれません。「いらっしゃいませ」を言うことも、心を込めて応対することも最低限度必要なサービスです。しかしながら私が提案したいのは情報を使ったサービスです。

情報を使ったサービスは決して目新しいサービスではありません。流通業の中は、デパートやスーパーが10年ぐらい前からハウスカードを発行しいろいろな形で顧客管理や売上のアップを模索してきました。そしてそれなりの効果を多少なりとも上げてきたようです。

しかしハウスカードを持てるような大手の流通ならともかく、今まで情報の手段を持たなかった中小の流通業の中ではどうでしょうか。中小の流通業の情報化遅れたのは、高価な費用をかけてコンピュータシステムを導入できなかったことが大きな要因です。その情報化が単価の安いパソコンレベルでできれば、中小であっても情報を操作することが十分可能になります。そして情報サービスによって大手並みの情報サービスを始めて試みることができることになります。

情報化の中にも2種類ある
単純に情報化といっても2種類の情報化が存在します。1つは今ある現状を改善するための現状改善型情報化、もう1つは現状を打破するために前向きに取り組む戦略的情報化です。現状改善型情報化は、在庫管理や商品管理が該当し、戦略的報化は顧客管理や情報を武器にした新しい企画が該当します。

前者の在庫管理や商品管理などは今までの流通業の中で何度となく論じられそれを管理することは当たり前のことだと考えます。しかしシステムが導入されていないためか、それができていないお店も多く、そのお店は早くそこの管理を始める必要があると考えます。パソコンのコストが下がったことによって、情報化すること自体のコストとその情報化がもたらす効果(コスト軽減)を比較しても十分採算の取れる状況になってきたためです。

お店の情報化は、すでにコンピュータが導入された大手流通やコンビニエンスだけのものではありません。中小のお店であっても、パソコンを導入することによって、商品管理や顧客管理、売り上げ分析など十分に情報化は可能です。(ただし物流の問題においては情報化だけでは解決しない点もあるが)

しかし今回は紙面の関係もあり前者の現状改善型情報化を取り上げるのではなく、後者の戦略的情報化に的を絞ってお話を進めていきたいと思います。というのも前者の管理や分析は私が話すまでもなく今まで十分に論じられて来ていると考えるからです。

戦略的情報化とは?
戦略的情報化については、流通の中ではありませんが今まで何度か話題になったことがあります。

つい2~3年前でしょうか?テレビのコマーシャルで企業の情報化をコンピュータで築きあげるSIS( Strategic Information System 戦略的情報システム)なる言葉が持てはやされた時期があります。これらの宣伝はコンピュータ会社のもくろみ通りうまくいったのでしょうか?。わたしが思うにコンピュータシステムを買わせることだけが先行して、うまくいかなかったように思います。その理由は、社内のOA化と戦略的情報システムの区別が明確でなかったためだと考えます。社内のOA化にあたるのが現状改善型情報化であり、SISが戦略的情報化にあたります。

この2つを分けずに情報化を進めようとしてもうまくいくはずがありません。混在して進めると通常OA化が中心になってしまい、戦略化は後回しにされてしまいます。というのもOA化は目の前に迫った切実な内容が多いため、要望も強く、具体案がある場合があるので構築することも非常に楽ですが、戦略的情報化は今から開拓する業務のため何から始めていいのかなかなか具体的な概念が浮いてこないためです。

また戦略的情報システムを進めさせるためのソフトのパッケージ化が進まなかったこともSISの失敗の大きな要因に上げられます。出来合いのパッケージがあればシステムの構築も進めやすいのですが、具体的な概念が浮いてこないのにシステムを構築することは不可能に近い仕事です。

戦略的情報システムにたどり着く前に、コンピュータを導入し単なるその企業のオフィスのOA化になってしまったのも十分に理解できます。単なるOA化ですから社内の合理化だけに留まり、一番の目的としていた営業拡大に結びつかなかったわけです。

戦略的な情報システムと言いながら、何千万もの費用をかけて結果社内のOA化を行っていたのでは笑い話にしかなりません。

戦略的情報化を行なうには、まず第一に会社内のOA化を目的とするのではなく、売上を伸ばすための具体的な営業戦略項目(顧客管理、嗜好管理等)を押さえること。第二にできるだけ既存システムのよいところを学び、そのシステムのパッケージ化をはかり、システムの費用の軽減化を図る必要があります。

流通業においても戦略的情報化を行なうには同様のことがいえます。それは第一に現在の店舗の現状改善を目的とするのではなく、売上を上げることを目的にした情報化戦略であること、そして第二にそれを行なうために既存の流通の良い点を学び、できるだけシステムにお金をかけないで構築することを十分に認識しておかないと中途半端なSA(ストアオートメーション)化にしかなり得なくなってしまいます。

戦略的情報化の本命(ポイントカード)
一般のお客様を相手にしている流通業では情報化するものが固定化され流れが一定化してきます。流通業では、お店が商品を仕入れ、仕入れた商品をお客様が買う、という一定の流れが発生します。対象になるものは商品とお客と売上です。これだけ対象が絞られてきますと戦略がずっとつかみやすくなります。この構図はどの流通業と呼ばれる店舗においてもあまり変化がないと思われます。

商品とお客と売上しかない構造のためこの3つを考えていけば何らかのシステムを構築することができます。売上を伸ばすため積極的に顧客に対してアピールを行ない固定客の確保や再来店を促す戦略的情報システムの構築です。

その中心に今後なり得そうなのがポイントカードシステムの考え方です。

ポイントカードを使ったシステムは今まで私が話してきた戦略的情報化の考え方にぴったり当てはまります。

ポイントカードシステムが今まであまり進められなかったのはコンピュータシステムの構築に費用がかかりすぎたからです。しかしPC―POSであれば費用的にもシステム的にも、構築することは難しくありません。そのため今後ますますポイントカードを使ったお店が増えてくるものと思われます。

PC―POSが身近になったために可能になったポイントカードシステム。ポイントカードは今後の戦略的情報化には欠くことのできない中心の情報サービスだと私は考えます。

少しこのポイントカードの概念を説明するとともにPC―POSを使った攻めの方法をお話したいと思います。

ポイントカードのメリット
ポイントカードの内容や効能を説明しはじめると1冊の本ができてしまうほど長くなりますので重要なポイントだけを押さえてお話したいと思います。

ポイントカードを使った営業戦略のメリットは大きく分けて4つあります。

使用対象が原則現金
ポイントは次回使用
1ポイント=1円
顧客管理
たったこれだけの特徴ですが、スタンプカードやサービスカードに比べかなり大きな戦略が秘められています。

使用対象が原則現金
ある大手の量販店がポイントカードシステムを始めた当初、利用条件は現金のみでクレジットカードでの使用は認めていませんでした。クレジットカードで購入された場合数%の手数料がカード会社から引かれてしまいます。

これではクレジットカードで購入された場合、お店から見るとポイントとクレジット手数料の2つの金額を販売金額から差っ引かれることになってしまいます。そのため使用を現金のみに絞ることによってクレジット手数料を考えることなしにポイントのみを考えながら販売ができることになります。

これは逆に考えると、お店がある一定のクレジット手数料をクレジット会社に払うと仮定して、その同等金額を現金購入のお客様に還元したならば、お客様へのサービスになります。しかも現金ですのでカード会社の決算を待つ必要がなく、お店側から見ればカードで購入しても現金で購入しても入ってくる金額は一緒です。

よく「現金だといくらでクレジットだと5%増しですよ」という店があります。これはあきらかにクレジットカード会社との契約違反であり、クレジット会社とトラブルを起こします。しかしその場で値引きをおこすことのないポイントであれば意味合いは変わってきます。

なんていう事をしなくても、最初からクレジット価格で料金を表示しておいても、現金で買えば常に数%値引く事をお客様に定着させることによって商品価格を下げずに安く見せることができます。この方法だ特に価格の競争をしたくないものややりにくいものの価格を下げる必要がないために、地域的な価格の問題を引き起こさずにすむ事ができます。

注)

最近ではクレジットカードを使用してもポイントを付けるお店も出始めている。しかしこれはお店とクレジット会社の力関係で微妙に変わってくるものと思われる。クレジットカードを頻繁に使われるような業態でポイントを現金のみに絞ると現金での比率が異常に上がり、クレジットの比率が落ちてしまう。クレジット金額の大きい大手の量販店だからこそクレジット会社と手数料の交渉の余地ができるのであって中小のお店でもできることだとは思われない。

事実クレジットカードの原則は、現金のお客とクレジットカードのお客の差を付けないことなのに、現金、クレジット両方でポイントカードが使える店ではポイント還元の%が異なり(たとえばあるお店では現金5%、クレジット3%)ポイントの次回値引きが定着化した現状では、原則に反している。

これは何等かの形でクレジットカードもポイントに参加できるように検討された妥協の産物だと考えられる。

ポイントの使用は次回から
ポイントカードの第二のメリットは、購入したその場で次回使えることです。次回とした事によっていろいろなメリットが発生します。

第1に再来店が望める事です。ポイントカードを使用したお客さんはそのカードに値引きできるポイントが残っているわけですから、わざわざ別の店に行くよりもまずポイントのついているお店に行く傾向が強くなります。

第2に見た目の値引きを避けることができる事です。仮にライバル店が近くに存在した場合、値段を安く表示をすることによって価格競争を生む結果となります。しかしポイントで処理する場合、見た目にはポイント分料金を高め、または定価で表示し競争心をあおる事もありません。しかしお客様から見た場合、ポイント分実質の金額の値下げ、さらに前回のポイントが貯まってた場合は、前回のポイントの分だけ多く引ける計算になりますのでお客様としてはポイントの使える店の方が安く感じます(これはあくまでも感じるだけです)。これは常にライバル店と売値を合わせておけば実質的にそのポイントの比率分だけ安いイメージを定着させることができます。

第3のメリットは、クレジットカードを多く使う店に発生します。先ほど少し述べたように、現金とクレジットで売値を差別することはクレジット会社との契約違反です。しかしポイントカードを使用しても今回の商品に限っては現金もクレジットも一緒の値段でその場で差を付けていません。ポイントを次回でなくその場で値引いた場合、現金とクレジットカードの二重価格が存在することになりますが、次回であれば買う商品と値引く商品の関連性はありませんので問題もなくなります。

第4のメリット、これはあまり大きなものになり得ないと考えますが即座に使わせないことによってユーザーでのポイント蓄積が発生します。これは一部プリペイカード的な発想ではありますが、ユーザーがポイントを消化しない限りお店の金銭的な負担が軽減します。またポイントカードの最終使用日から何年と期限を切ることによって古いポイントを消去してしまうことも可能です。

しかしながら、ポイントを使わせない考え方よりもポイントをどんどん消化して売上を上げてもらう方がお店にとってはいいのが事実です。

ポイントは 1 点 1 円
どうせポイントカードを作るのならば1ポイント=1円にすべきです。よく今までのスタンプサービスで1000円で1スタンプなんていうお店がありますが、これはスタンプカードだから1000円で1個なのであって、コンピュータを使ったポイントカードシステムであれば1円1ポイントでも十分に処理ができます。

また1ポイント=1円ならば計算も非常にわかりやすくなります。これはお客様から見ると非常にわかりやすく150ポイント=150円と簡単に換算できるため値引きの計算も非常にわかりやすくなります。お客様が頭の中で前回のポイントを値引きの金額に換算してもらえれば、他店との競争でも前回の使用ポイントを含んで値引きを見せることも可能です。

平行して顧客管理
第4のメリットは、ポイントカードを作ることによって顧客を管理することができるということです。

お店を経営されている方で、お店に来ているお客様の住所や年齢等を知りたいと思ったことはないでしょうか?これができれば何等かの形で宣伝をうったり分析したり、チラシやDMをうったりすることができると考えているお店の経営者の方は多くいらっしゃいます。しかし普通に考えて何もしない状態で顧客登録をすることは不可能です。何らかの理由がない限りお客様が申し込み用紙に記入することはほとんどありませんでした。

しかしポイントカードならお客様は喜んで申し込みを行ないます。しかもお店に来られるたびにポイントカードを掲示しますので、お店としても会員の利用状況や嗜好をデータとして蓄積しやすくなります。

どうせ値引くならポイントで値引け!
このようにポイントを使った販売は多くの点でお店にメリットをもたらします。ポイントカードを使用することによって、ポイントとして起こした金額はすべてもとのお店に還元されることになります。

仮にこれを単なる値引きとして起こしてしまったならばどうなるでしょうか?その金額はお客様の財布の中にプールされ、飲食なりその他の店の購買になってしまうでしょう。しかしながらポイントに置き換えることですべてが自店に返ってくる値引きに変身します。

お客様から見ればポイントは単なる値引きとして映り、お店側から見ると単なる値引きではなくなります。

当然のことながら、ポイント金額は自店に戻って売上になりますし、それが次回に発生するのです。

ポイントのカードの使用は次回に発生することが、また大きなメリットなのです。ポイントの使用とともに次の大きな購買が発生します。中にはポイント金額だけの使用になってしまうかもしれませんが、単に値引いて他の店で購入されたことを考えれば大きな違いが発生します。

お客様はポイントの発生をサービスとして受け取りますし、それなりのイメージアップにもつながります。

このようにポイントカードはあらゆる面で戦略的な営業体制に結び付けていくことができます。

コラム
あなたは何枚カードを持ち歩けますか?
(重要なカードの選択)
ポイントカードが売上げを伸ばす可能性があるのはよくわかったと思いますが、すぐに飛び付く前に幾つかの重要な項目について再度考え直してください。

まずポイントカードといってすぐに思い付くのがプラスチックカードなのですが、あなたは今現在ポケット又はバックの中に何枚のカードを持ち歩いていますか?自宅においてあるカードは除いてです。

私はバックをあまり持ち歩かないせいもありますが、せいぜい持ち歩いても7、8枚のカードを持ち歩くのがやっとです。これ以上のカードを持ち歩くとポケットの中の財布やカード入れが分厚くて重たくなります。

最初はうすいと思っていたプラスチックカードですが5枚6枚と枚数が増えると結構厚みが増して重たいものです。では、その中でその数枚に厳選されるカードはどのようなカードでしょうか。

これも私の独断で申し訳ありませんが、私ならばまず免許証、クレジットカード、銀行のキャッシュカード(郵便局も)、定期券、テレホンカード、あと本当に頻繁に使用するお店のカードです。これだけで私の財布(厳密には定期入)の中はいっぱいで、これ以上のカードはほとんどが家においてあるのが現状です。

そうすると、あなたのお店が出したポイントカードは先にあげた「本当に頻繁に使用するお店のカード」に入れてもらえるでしょうか?

重要なカードの選択
カードがあるから買う?カードがないから買わない?

せっかく発行したポイントカードなのに、そのお客様が持ち歩かなかったらどうなるのでしょうか?

少し前にも説明したように「ポイントカードがあるからまたそのお店にいって買物をするんだ」というお客は非常に多くいます。

しかし、よく考えてみてください。もしそのポイントカードを持ち歩いていなければどうなるでしょうか?

これも私の考え方で申訳ないのですが、大手カメラディスカウントのカードはいつも持ち歩いていません。それは先にあげた物理的な要因で持ち歩けないのです。

たまに近くの大手カメラディスカウントで買物をすることがあるのですが、ポイントカードなしで買物をすると損をした気分になります。

数百円の小さなものであれば買ってしまうのですが、数千円以上になると買物をためらったり、やめてしまうこともあります。

またやめてしまうと、その時にはとても欲しかったものが、いつのまにか不要になったりします。余談にはなりますがポイントカードを持ち歩かないことは衝動買いの予防効果をもたらします。

ポイントカードは諸刃の剣、持ち歩かせることが一番難しい
このことからもわかるように、ポイントカードを持ち歩かせることによってお店は売り上げを伸ばすこともできますし、ポイントカードを持たせないことによってお店から遠ざけることもできる諸刃の剣だということがよくわかると思います。

持ち歩かせるにはどうしたらいいでしょうか?

まずプレミアムを高くしてそれなりの価値を高めてあげることも一つの方法だと思います。

しかし、プレミアムを高くすることはお店の利益効率を圧迫しますので、それができるお店とそれができないお店もあるでしょう。

そのため、お金もかからず基本的なことは、見栄をはって見栄えのいいプラスティックカードを選ぶよりも、できるだけ薄いポイントカードを検討することがいいでしょう。

このことは単純な話ではありますが基本です。この事を考えないでポイントカードを作成するならば、ポイントカードの効果は半減します。

ポイントカードを持ち歩かない人がいること。ポイントカードを持たないで購入すると損をした気分になること。ポイントカードを持たないと購入を一時的にでも止めてしまうこと。この事を人間の心理として覚えておいてください。

ポイントカード活用例(ヨドバシカメラ)
ポイントカードの現状としてヨドバシカメラのシステム担当者にお話をお聞きした。私が考える限りヨドバシカメラがコンピュータを使ってポイントカードのシステム化をした最初のお店ではないかと思われる。なお、ヨドバシカメラのシステムは第一回の流通システム大賞にて奨励賞を受賞している。

お話を聞く限り世の中の環境の変化と、業務の拡大、お客様に対するサービスの拡大を考えた結果必然的に生まれたのがポイントカードのシステムであったという。

ポイントカードを始めたのが今から5年前のこと。最初の発想はある定価の決められた商品を売り始めたとき、直接的に安く売ることができないため、どの店でもやっているスタンプカードに変わるスマートなものはないかと考えたのが一つのきっかけであったという。ポイントを一つの景品的な扱いで考えたそうだ。

また、その当時、お客様と売り場での値引き交渉するのが当たり前の時代であり、書かれている値札はあってなきも。商品に対する価格表示方法が、あるものは特価商品、あるものは値引き交渉をというような二重価格が散乱していた。価格のオープン化が進すむ以前の話である。

しかし、だんだん直接値段表示を見て安いなと感じて買われるお客様が増えてくると同時に、値引きするしないは買い方の技術が必要で、お客様に対しても不公平ではあるだろうかという疑問が店内でも発生し、できるだけ金額を統一しようという方向性が生まれた。

また値引きに労する時間のロスも考えられたという。たしかに値引きに要する時間の賃金を、値引きと比較するとさほど違いのないことが見えてきて、そのロス金額を値引き結び付けることの方がサービスとしても言いのではないかという考えが生まれたという。

しかし単なる値引きを起こしたのでは、お客様に差し上げた値引き分は他のお店で使われるケースも多く自店にお金が還元することがないし、値引きをするのであれば値下げを行なった方がいいのではないかと

そして値引きに見返るものは何かサービスとしてないだろうかと考えて生まれたのが現在のポイントカードの考え方だったと。ポイントカードは、単なる値引きを避けて、値引き以上のサービスがあり,お店にもお客にもメリットがあり、お客様が定着するサービスとして考えた。

それができる環境がヨドバシカメラにはあった。ヨドバシカメラ特有の状況もそこにはあり、新宿近辺にいくつもの店舗があり、商品管理につてはリアルタイムにオンラインで監視するネットワーク環境がすでに出来上がっていた。

現在650万人の会員を抱え、実質400万人の稼動会員を抱える。そしてリピート会員を含め、現金で購入されるお客の9割の方がヨドバシのポイントカードを掲示している。気持ちの上でお客様に拘束力を持つのではなく、物理的なカードによって拘束力を持てる効果は莫大なものがあり、当初考えたお客様の囲い込みは現実に効果を上げている。

発行を始めた当初、値引き分として発行したポイントの原資が60%ぐらいお預かりとして残った。単なる値引きであればその60%はお店の売上にはならず、外部に持ち出されていたことになる。値引いた金額がすべて自店の売上になることはすごいことだ。しかし今ではお客様もポイントカードの使い方に馴れ、貯まったポイントをどんどん使っているという。しかしその方がお店全体の売り上げアップにつながり回転が良くなっている。

また、当初の2年は現金のお買い上げの時だけポイントを付けていたのが、ポイントの比率を変えて(現金5%,クレジット3%)今は現金のお客様もクレジットのお客様も使えるようになった。しかし当初現金のみの場合は現金の比率がべらぼうに高くなった。そのために現金の回収効率がよくなった。

しかし今では客層も広がり、現金の会員だけを優遇するわけにもいかずクレジットのお客様のためにもポイントを使えるように改善を行なっている。

ポイントの使用期限は2年で、23ヶ月目になると自動的にハガキを出し継続を呼びかけている。そのうちの半数は継続を行ない、半数は消えていってるという。

また定期的に150万部の情報誌を発行しておりできるだけ双方向での対応を模索している。最近来た人、リピート回数、使用金額の常連さんには常に出している。

ヨドバシカメラでのポイントカード戦略はある程度第1段回を終了し、次の戦略に入ろうとしている。

今後の商品の品揃えをどのようにするか、メーカーの生産計画に対してお客様の購入記録をどのように結び付けるかとか、小売業がお客様を見ながら何を考えて何を求めているのかを考えていけば予測が十分に可能になるであろう。その中で物流等を考えていけば無駄も省け、又それがお客様に還元されるものだと。最初からそこまで考えて作ってきたのではないのだが、お客様の要望を聞いていくうちにそのようになってきたというのが結果論だ。

またポイントカードのシステムを定着させるために、店員の教育も重要になる。必ず「ポイントカードを御持ちですか」と声をかけないとトラブルが発生する。また返品などは、ポイントを使い切ってしまっている場合処理が混乱するという。そのためできるだけマニュアル化を行ないトラブル防止に努めているという。

最後に担当者が言った「POSは,壊れないこと、待たせないこと、従業員をちゃんと拘束すること」この3つが大切だといった言葉が印象に残っている。

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